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適用地域の拡大が続くまん延防止措置の経済損失

2021/04/16

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感染増加を後追いするまん延防止措置の拡大

政府は、新型コロナウイルスの緊急事態宣言に準じた措置である「まん延防止等重点措置(まん延防止措置)」を、20日から埼玉、神奈川、千葉、愛知の4県に新たに適用する。西村大臣は16日午前、専門家で構成する基本的対処方針分科会にこれを諮問し、了承された。政府は同日午後の衆参両院の議院運営委員会に報告し、政府対策本部で正式に決定する。

政府は3月21日に緊急事態宣言を全面解除した。しかし、その後の感染再拡大を受けて、4月5日からは宮城、大阪、兵庫の3府県にまん延防止措置を初めて適用した。さらに12日からは東京、京都、沖縄の3都府県へ適用した。3週連続で、政府はまん延防止措置の適用を決めているのである。

まん延防止措置は、ステージⅣでの対応策である緊急事態宣言に至る前に感染拡大を抑えることを目指して適用されるものだ。しかし、実際には感染拡大を後追いする形で適用されている感が強い。適用からすでに10日程度が経過している大阪、兵庫などでは感染拡大は加速しており、同措置の有効性に疑問を生じさせている。

緊急事態宣言、まん延防止措置ともに、飲食業への時短要請・命令が感染抑制策の柱となっている。しかし、変異ウイルスの拡大などによって、こうした措置が感染拡大の抑制に十分有効ではないと判断されれば、規制措置の拡大など、戦略を大きく見直す必要があるのではないか。

現状でも、人出が減ってないとの指摘が多い。飲食に限らず、人々の外出を促す企業活動に幅広く時短・休業要請が検討されるべきかもしれない。あるいは、人々の外出、移動自体を直接抑制する措置も検討されるべきだろう。

通常国会では、緊急事態宣言よりも一段階緩い措置として、まん延防止措置が新たに特措法に盛り込まれた。しかし実際には、現状の緊急事態宣言よりも厳格な措置が発動できるように、準備しておくべきではなかったか。

まん延防止措置による経済損失は今回2,210億円、合計7,750億円

さて、今回新たにまん延防止措置が適用されるのは、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県の4県である。さらに県知事の判断で、適用地域は埼玉県がさいたま、川口の2市、千葉県は船橋、市川、松戸、柏、浦安の5市、神奈川県は横浜、川崎、相模原の3市、愛知県は名古屋市となることが予想されている。この11市は、全国の所得のちょうど10%に相当すると推定される。適用期間は、5月11日までの3週間である。

今回の11市での3週間にわたるまん延防止措置適用によって生じる経済損失(個人消費の減少)は、2,210億円と試算される。1年間の名目GDPの0.04%に相当する(図表)。

今回分と、既に適用されているまん延防止措置との合計でみると、経済損失は、7,750億円と試算される。1年間の名目GDPの0.14%に相当する。また、失業者数を3.1万人増加させる効果が見込まれる。

ただし、足元での感染拡大の勢いを踏まえると、来週にもまん延防止措置の対象地域のさらなる拡大が決定される可能性は相応に高いのではないか。また、3回目の緊急事態宣言の発令も、そう遠くない将来にあり得るだろう。

現在示されているまん延防止措置による経済損失規模の推定値は、2回目の緊急事態宣言による経済損失規模の推定値である6.3兆円と比べればまだ1割強程度である。しかし、この先予想されるまん延防止措置の対象地域のさらなる拡大や緊急事態宣言の再発令を受けて、経済損失規模は2回目の緊急事態宣言時に近付いていくだろう。

ワクチン接種の拡大とともに経済活動が持ち直している米国向け輸出の増加など、外需に支えられることで、日本経済が昨年春のように大幅に悪化する可能性は低い。しかし、国内消費はなおも低迷を続け、今後3度目の落ち込みへと向かっている可能性は相応に高いのではないか。

(図表)まん延防止措置による経済損失の試算

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