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東京五輪、緊急事態宣言が四半期GDP成長率に与える影響試算

2021/08/13

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8月16日に内閣府は2021年4-6月期GDP・一次速報値を公表する。実質GDPの事前予想の平均は、前期比年率+0.66%(ESPフォーキャスト、8月12日)である。1-3月期の同-3.9%から小幅プラスに転じるものの、概ね横ばいの見通しとなっている。個人消費の減少傾向は続くが、減少幅が縮小することに加え、設備投資が増加に転じることが前期よりも成長率が改善する主な理由と考えられる。

今年の四半期成長率のパターンは、東京五輪と感染拡大を受けた緊急事態宣言に大きく左右される。そこで、以下では両者の影響を検討してみた(図表)。

緊急事態宣言による経済損失は、1-3月期、4-6月期、7-9月期ともに実質GDPを押し下げに働く。しかしGDPの押し下げ効果は次第に縮小していくため、前期年率成長率に与える影響は、4-6月期、7-9月期についてはプラスとなる。また、7-9月期については、東京オリンピック・パラリンピック開催によるプラスの経済効果(1.68兆円)も成長率の押し上げに寄与する。

緊急事態宣言の影響だけを考慮すれば、4-6月期の実質GDP成長率は年率+9%を超える見通しだが、実際には、深刻な半導体不足の影響が成長率を大きく押し下げることが予想される。

7-9月期の実質GDP成長率については、東京五輪と現在決まっている4回目の緊急事態宣言の影響だけを考慮すれば、年率+5%程度となる。実際には、現在の4回目の緊急事態宣言はさらに延長、あるいは対象区域が拡大される可能性が大きいだろう。また、アジア地域向けを中心に輸出の増勢が落ちてきている。他方で、半導体不足の緩和は、成長率の押し上げに寄与しよう。

それらの影響を合計すると、7-9月期の実質GDP成長率は年率+2~3%程度になると現時点では考えられる。

さらに、10-12月期については、感染拡大から個人消費の低迷が続く一方、世界経済の成長鈍化を映して輸出の増加率が低下することが見込まれる。その影響は、国内の設備投資にもマイナスに働くだろう。その場合、10-12月期の実質GDP成長率は7-9月期の年率+2~3%程度をやや下回るのではないか。

足元での感染急拡大や海外経済の成長鈍化を受けて、年末にかけて成長率が急速に高まるという「V字型回復」のシナリオは、既に崩れていると言えるだろう。

 

(図表)東京五輪、緊急事態宣言が四半期GDP成長率に与える影響

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