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岸田首相が内閣改造・自民党役員人事へ

2022/08/08

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派閥のバランスに配慮し大幅な改造は見送られる方向

岸田首相は6日に、内閣改造・自民党役員人事を行う方針を正式に表明した。10日に実施する考えだ。8月下旬から9月上旬との当初の見通しよりも前倒しで内閣改造・自民党役員人事を行うことになった背景には、感染再拡大、安倍元首相の国葬、政治と宗教団体との関係などの問題が重なり、岸田内閣への支持率が大きく低下したという逆風への対応があるだろう。

ただし、大規模な顔ぶれの入れ替えには発展しない見込みだ。報道によれば、麻生副総理、茂木幹事長という派閥の領袖の再任は固まっている。松野官房長官(安倍派)、林外相(岸田派)の留任もほぼ固まっており、また鈴木財務大臣(麻生派)の再任の可能性も有力視されている。萩生田経産大臣(安倍派)も再任あるいは党主要人事で処遇される、と見込まれている。このように、新人事は引き続き派閥のバランスに配慮し、大幅な改造は見送られる可能性が高まっている。

岸田政権は発足以来、衆院選、参院選の2つの国政選挙を乗り切ったことから、次第に岸田カラーの強い政策を打ち出していくことが見込まれる。ただし今回の人事では人員面で一気に独自色を打ち出すことは避け、派閥のバランスにも配慮した安全運転となりそうだ。

岸田カラーは強まるか

他方、今回の人事では、宗教団体との関連が疑われる顔ぶれを排する配慮がなされる方向だ。その過程で、岸田政権の政策と対立しがちな保守派の影響力が減じられる可能性が残されているのではないか。

仮に今回の人事で大きな変化はなくても、岸田首相がリーダーシップを発揮する形で、今後、政策面で岸田カラーが一定程度強まることは考えられる。外交、安全保障面では、左派色がやや強まる可能性があるだろう。その試金石としては、年末にかけて実施される安全保障政策の重要な指針である「戦略3文書」の改訂と来年度予算での防衛費の上積みである(コラム「さらなる国民的議論が求められる防衛費の大幅増額」、2022年7月19日)。保守派が求める防衛費の大幅増額に対して、岸田首相はその中身を精査し、大幅増額を抑える方向に動くかどうかが注目される。

財政規律色はやや強まる方向に軌道修正か

経済政策面では、岸田政権は当初の所得再配分から成長戦略重視に軸足を移しているように見える。この点では、保守派の政策を取り入れ、接近している側面もあると言えるだろう。

他方、保守派と強く対立しているのが、財政政策である。財政拡張志向が強い保守派の意見を抑えて、岸田首相が宏池会の伝統でもある財政規律色を打ち出すかどうかが今後注目されるところだ。その際試金石となるのは、やはり防衛費、そして秋に見込まれる物価高対策だろう。

日本経済は現在、物価高、感染再拡大、海外景気の減速という3つの逆風に晒されている。しかし、4-6月期以降プラスの成長率は維持されていると考えられ、決して危機的状況などではない。低所得者層に絞った給付金などの物価高対策を実施するにしても、予備費の範囲内で十分に対応可能だ。しかし、保守派は、補正予算編成を伴う巨額の経済対策を主張している。 財政規律重視の麻生副総理を再任することは、岸田首相が財政規律色を徐々に強めていくことの大きな助けとなるだろう。また、鈴木財務大臣(麻生派)が再任されれば、それも同様の影響を一定程度発揮するのではないか。

今回の人事を通じて、岸田カラーが一気に強まるという展開にはならないだろうが、岸田首相は徐々にリーダーシップを発揮する形で、政策運営での独自色を強めていく方向となることも考えられる。財政規律を従来以上に重視する姿勢が明らかになっていけば、それは金融市場の安定に一定程度貢献するのではないか。

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