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中ロ首脳会談で温度差を残しつつも両国の結束を再確認:習主席は事実上3期目の外交を開始、一帯一路の再構築か

2022/09/16

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習近平国家主席が2年8か月ぶりの外遊

中国とロシアが主導する枠組み、上海協力機構(SCO)の首脳会議が15日に中央アジアのウズベキスタンで開かれた。

上海協力機構は、中国とロシア、中央アジア4か国が上海での首脳会議を機に2001年に創設した枠組みだ。米欧主導の国際秩序に対抗する狙いがある。2017年には準加盟国だったインドとパキスタンが同時に加盟し、また2021年にはイランの正式加盟も承認された。

この首脳会議にあわせて中国の習近平国家主席は14日にカザフスタンを訪問、15日にはウズベキスタンで同会議に出席し、ロシアのプーチン大統領との会談に臨んだ。習主席の外遊は、新型コロナウイルス問題が拡大する直前の2020年1月のミャンマー訪問以来、2年8か月ぶりのことである。そして、プーチン大統領との対面での会談は、ロシアによるウクライナ侵攻直前の今年2月に北京で開かれた冬季オリンピックに合わせた会談以来となる。

温度差が残る両国

首脳会談の内容について多くは伝えられていないが、ウクライナ紛争での戦況悪化や先進国からの制裁措置による経済悪化のもとで、中国への支援を強く期待するロシアと国際的な批判を浴びるウクライナ紛争に巻き込まれたくない中国との間の温度差は明確になったとみられる。そのなかで、プーチン大統領は習主席に、ウクライナ紛争への慎重な中国側の姿勢に理解を示したうえで、できる限り両国の結束を強化したいという意向を伝えたとみられる。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、中国はロシアと一定の距離を置くようになった。対ロ制裁を強化している先進国を中心とした国際社会からの強い批判を回避するためである。しかし、そうした中で習主席がロシアのプーチン大統領との会談を決めたきっかけの一つとなったのは、8月初めにペロシ米下院議長が台湾を訪問したこと、との指摘がある。中ロの結束を改めて示すことで、台湾問題での米国の動きをけん制する狙いがあるだろう。

ウクライナでの戦況悪化、制裁による国内経済の悪化、国際社会での孤立などを受けて、ロシアは中国との外交・安全保障関係を一層強化するとともに、経済、軍事両面での直接的な支援を強く期待して、中国側に秋波を送っている。他方、中国は依然としてロシアとの距離を維持しているが、それでも米中関係が緊張の度合いを強めれば強めるほど、中ロはより結束を強めていく方向となる。

さらにロシアが苦境に陥る中で、中ロの協力強化も、今であれば中国がかなり優位に進められるとの思惑も中国側にはあるのかもしれない。

ロシアのウクライナ紛争と中国の台湾問題

中国はロシアとの軍事的な協力関係を強化することに前向きだ。軍事分野の先端技術の共同開発なども一層進める方向である。しかし、ロシア側が求めているとみられるウクライナ紛争での直接的な軍事支援に応じることはないだろう。

ロシアがウクライナとの戦争に中国を巻き込もうとする試みを、中国は今まで強く拒み続けてきた。ただし、プーチン大統領は首脳会談で、「ロシアはウクライナ危機に関する中国のバランスのとれた立場を高く評価する」、「ウクライナ危機に関する中国の懸念を理解しており、すべての問題を説明する用意がある」と述べている。ウクライナ紛争への直接的な関与を避けようとする中国の姿勢に理解を示した発言だ。ロシアが、中国に対してかなり下手に出ていることがうかがわれる。

他方でロシア政府も、台湾海峡で紛争が起きた場合に中国に軍事支援をする考えを表明したことはない。仮に台湾海峡での紛争にロシアが関与しても、軍事的に大きな影響力を持ち得ないのではないか。今回のウクライナ紛争で、中国はロシアの軍事力の水準について懐疑的な見方を強めた可能性もあるだろう。

共産党大会直前の異例の外遊の背景は?

ところで中国では、来月10月16日に共産党大会が開かれる。習主席は、この党大会で今まで2期10年が原則とされてきた党総書記のポストの3期目入りを目指している。この重要な共産党大会を1か月後に控えたこのタイミグで、国家主席が外遊するのはまさに異例である。

過去には、外遊中を狙って国内で反体制の動きが高まり、失脚につながった故趙紫陽・元総書記らの例もある。共産党大会直前のこのタイミングで習主席が北京を離れることは避けると考えるのが普通だろう。

ちなみに、共産党大会の約1か月前に外遊したのは、2002年に江沢民国家主席が米国などを訪問して以来となる。ただし当時は、党大会で胡錦濤氏への権力委譲がすでに決まっていた。

こうした中、習主席が外遊を決めたのは、その外交成果を党大会での3選につなげたい、との思いがあるとの指摘がある。それに加えて、既に国内での権力基盤を固め、3選を確実なものとしたとの強い自信の表れが背景にあるのではないか。

このように考えると、今回の外遊は、習主席が3期目の外交を事実上スタートしたものと解釈できる。

3期目の外交の柱の一つとして「一帯一路」の仕切り直しを狙うか

外遊再開の最初の訪問地に習主席がカザフスタンを選んだことは、3期目の外交方針と関係があるのではないか。それは、「一帯一路」の仕切り直しである。

カザフスタンは、2013年に習主席が初めて「一帯一路構想」を打ち出した象徴的な場でもある。そして来年にはそれから10年という節目を迎える。「借金漬け外交」との批判も受けて同構想にはやや行き詰まりも見られているが、象徴的な地であるカザフスタンの地で、3期目に入る習主席の外交政策の柱の一つとして、「一帯一路」の仕切り直しを図る狙いがあるのではないか。

習主席は、訪問前日の13日にカザフスタンの新聞への寄稿で以下のように述べている。「中国側はカザフ側とポストコロナ時代をみすえて、引き続き「一帯一路」共同建設の先行者となる。両国間で、投資と貿易の円滑化レベルを高め、人工知能(AI)、ビッグデータ、デジタル金融、電子商取引グリーンエネルギーなどの分野の新しい成長ポイントを育てる。両国間の協力をもう一段階押し上げて、グローバル開発イニシアチブを着実に進め、世界経済の回復の後押しに両国として貢献することを願っている」。

習主席は「グローバル発展イニシアチブ(GDI)」を呼びかけている。これは、「持続可能な開発目標」(SDGs)実現に向けた途上国協力を軸とする中国の新たな外交理念であり、習主席が昨年9月の国連総会で初めて表明した。中国の「一帯一路構想」が、環境問題や人権問題などに配慮していない、との批判を受けてきたことが背景にあるのだろう。「一帯一路構想」にもGDIの理念を組み入れて、多くの国の賛同を得ることができるようにイメージアップを図ろうとしているのではないか。

中国は、米国あるいは先進諸国から経済的には「中国包囲網」を敷かれている。その中、中国が経済成長を維持し、先進諸国に対抗していくためには、新たな市場の開拓は必須である。「一帯一路」には、そうした新たな中国経済圏の構築という狙いがあるだろう。

中ロの接近は歴史の必然か

その実現には中央アジア各国、そしてそれらに強い影響を持つロシアとの協力が必要だ。さらに先進国、特に米国への対抗意識が強く中国に友好的な新興国の中では、ロシア経済の規模は格段に大きい(2021年でドル建て名目は世界第11位)。そして、ロシアには中国が必要とする、石油、天然ガスなどの資源がある。

ウクライナ紛争が中国とロシアとの間に一時的に緊張関係をもたらしてはいるものの、お互いがお互いを必要とする形で、将来にわたって両国が経済的、政治的に接近していく流れは変わらないだろう。それは米中2大国が併存する現在の国際秩序の中で進む、世界の二極化という流れの中では必然と言えるかもしれない。今回の中ロ首脳会談は、そうした大きな歴史の流れの中に位置付けられる。

(参考資料)
"China's Xi and Russia’s Putin Seek to Counter West in First In-Person Meeting Since Ukraine War Began(プーチン氏、習氏と侵攻後初の直接会談へ 連携強化探る)",Wall Street Journal, September 15, 2022
"China's Xi Considers Visiting Central Asia, Potential Meeting With Putin Next Month(習氏、プーチン氏と来月会談も ペロシ氏訪台で計画か)", Wall Street Journal, August 20, 2022
「習氏外遊、政権安定誇示か 党大会直前、カザフ大統領と会談」、2022年9月15日、日本経済新聞
「習氏、舞台は中央アジア 3期目にらむ党大会目前 「一帯一路」に続き、非米欧集結アピール」、2022年9月15日、朝日新聞
「中国:習氏、2年8カ月ぶり外遊 カザフとウズベクへ 米欧対抗軸、強化狙い」、2022年9月15日、毎日新聞
「習氏、中央アジア訪問 露と対米共闘 党大会前に外遊、3期目自信」、2022年9月13日、産経新聞
「習近平主席、公式訪問を前にカザフ紙に寄稿」、2022年9月15日、新華社ニュース(中国通信社)
「中ロ首脳、15日会談へ ウクライナ・台湾情勢巡り協議 (政治・社会・一般経済)」、2022年9月15日、ChinaWave経済・産業ニュース
「習近平氏、党大会直前に異例の外遊 政権安定を誇示か」、2022年9月14日、日本経済新聞電子版
「中国・ロシア、軍事で連携強化へ 中国人民大の時殷弘氏」、2022年9月14日、日本経済新聞電子版
「中ロ首脳が会談 侵攻後初」、2022年9月16日、日本経済新聞

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