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米国中間選挙と金融市場:注目は2024年大統領選挙へ

2022/11/09

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民主党が劣勢で議会はねじれ状態に

11月8日に実施された米国中間選挙の開票作業が続いている状況だ。現時点(日本時間午後17時)でみると、下院では共和党が事前予想通りに優勢で、過半数の議席を奪還する可能性が高い情勢だ。一方、上院では民主、共和両党間で接戦の状況にある。

民主党は少なくとも下院では過半数の議席を失い、ねじれ状態に陥る可能性が高まっている。有権者の歴史的な物価高への不満と先行きの景気悪化への不安とが、与党・民主党に想定以上に強い逆風となったのである。

今回の中間選挙は、民主党バイデン大統領の一期目の政策運営に対する有権者の審判の場と位置付けられる一方、共和党のトランプ元大統領の人気を測る場、という側面もあり、2024年大統領選挙の前哨戦の性格を帯びている。

トランプ元大統領は、自らが支持した共和党議員、州知事が多く当選したことを自身の影響力の証であると訴え、15日にも大統領選挙への出馬の意向を正式に表明する可能性がある。

金融市場では選挙前にドル高修正と株高が進んだ

中間選挙を前に、米国金融市場ではドル高の修正と株高の傾向が見られた。選挙戦の終盤では、民主党が苦戦するとの予想が金融市場では強まっていった。バイデン政権が下院、あるいは上下両院で過半数の議席を失いねじれ状態となれば、政策遂行能力がさらに低下するため、経済にもマイナスの影響が及ぶ可能性がある。しかし、そうした中で逆に株高が進んだことについては、ねじれ状態のもと、企業・富裕者向け増税など、バイデン政権の左派的な経済政策が進みにくくなり、企業活動や株式市場にはプラスに働く、との読みが金融市場にあったと説明されている。

ただし、民主党が両院で事実上の過半数を制している現在の議会勢力の下でも、バイデン政権の政権運営は難航を続けてきたのである。身内である上院民主党の中道派勢力が、左派色の強い経済政策の実現を阻んできたためだ。そのため、実際には、ねじれ状態に陥っても、バイデン政権の経済政策運営は大きくは変わらないのではないか。

ドル高の修正と株高は、中間選挙で民主党が苦戦するとの観測よりも、米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ(政策金利引き上げ)の姿勢が先行き修正されていく、との期待を反映している面の方が大きいのではないか。この点から、中間選挙は、金融市場にとって非常に大きな注目点とは言えないように思われる。

先行き為替政策修正の可能性には注意

中間選挙後も、バイデン政権の経済政策の最優先課題は物価高対策である。ただし、この先、バイデン政権の為替政策が修正される可能性には注意しておきたい。それは、世界経済や金融市場に非常に大きな影響を与え得る。

今までのバイデン政権は、物価高を抑制する効果があるドル高を容認する姿勢が強かったが、この先、ドル高によって米国の輸出企業の国際競争力低下が明確になっていけば、ドル高を抑制する姿勢を見せ始める可能性があるのではないか。そこには、2024年の大統領選挙に向けて、企業にも配慮した経済政策へと軌道修正することで無党派層の支持を取り込む狙いもあるだろう。

ただし、ドル高の背景にあるFRBの大幅利上げの姿勢は直ぐには変わらないため、金融政策と為替政策を巡って、バイデン政権とFRBとの間に一定期間軋轢が生じる可能性が考えられる。それは、金融市場にとって新たな懸念となるだろう。

外交・安全保障政策には大きな変化はない

一方、中間選挙でねじれ状態に陥っても、バイデン政権の外交・安全保障政策には大きな変化は生じないだろう。この分野でバイデン政権を大きく特徴づけてきたのは、同盟国と連携した対中国政策である。中国強硬姿勢は共和党も同様であるため、議会で共和党の勢力が高まっても、対中強硬政策は維持されよう。その結果、日本も米国と連携して中国の軍事的脅威に対峙し、中国を意識して経済安全保障政策を推進する現在の姿勢に大きな変化は生じないだろう。また、米国の北朝鮮政策については、中間選挙後も膠着した状況は変わらないのではないか。

他方で、変化が生じる可能性があるのは、ウクライナ問題への対応である。共和党内では、先行きの見通しが立たない中で、ウクライナへの軍事支援を続けるバイデン政権に対する批判が生じている。バイデン政権は、軍事支援から早期の停戦合意へと、対ウクライナ戦略の軌道修正を共和党から求められる可能性があるのではないか。

中間選挙の結果を受けて、2024年のバイデン大統領の再選には暗雲が立ち込めている。バイデン大統領では2024年の大統領選挙で勝てない、あるいはトランプ元大統領に勝てないとの見方が民主党内で強まれば、バイデン大統領は再出馬を断念する可能性も出てくるだろう。

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