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世界経済の中期見通し④:経済政策とイノベーション

2024/05/31

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政府の産業政策が非効率資源配分を増幅

世界の中期成長率は、2008年のリーマンショック(グローバル金融危機)を境に下方に屈曲した(コラム「世界経済の中期見通し①:中国経済が世界経済の重石に」、2024年4月25日)、「世界経済の中期見通し②:労働が成長の制約に」、2024年5月10日、「世界経済の中期見通し③:リーマンショック後の設備投資抑制が影響」、2024年5月22日)。

それ以降、全要素生産性(TFP)の成長寄与度は一貫して低下を続けている。TFPは技術進歩や労働者の質の向上によって改善するが、それ以外にも、生産性が高い分野に資源配分が移ることによっても改善する。

市場メカニズムが働くことで、最適な資源配分が実現されることが期待されるところだが、実際にはそれは保証されない。そこで政府は経済政策、とりわけ産業政策を通じて最適な資源配分の実現を目指すのである。

ところが、政府の産業政策が非効率な資源配分を増幅してしまい、それが潜在成長率を低下させてしまうこともある。国際通貨基金(IMF)の分析によると、近年、企業間の資源配分がますます非効率的になり、その結果TFP上昇率が低下していることが、世界の成長率のトレンドを押し下げている。

政府が、生産性に関係なく一部の産業を優遇したり、逆に冷遇したりすることが、生産性の高い産業に資本と労働が配分されることを妨げ、潜在成長率を低下させている。IMFの分析は、こうした不適切な政策などを通じて資源配分が非効率となっていなければ、TFPの増加率は、現在よりも50%高かったはず、と結論付けている。

IMFは、以下の3つの条件を厳格に満たす場合、政府の産業政策は生産性向上と経済的厚生の向上をもたらすとしている。

第1は、支援対象となる分野が、二酸化炭素の排出量削減や他の分野への波及効果など、明確な社会的利益を生み出すこと。

第2は、外国企業を差別しないこと。

第3は、このような政策を管理、実施する能力が、政府に備わっていること。

イノベーションと成長を後押しする3つの分野のポリシーミックス

IMFによれば、実際にはほとんどの産業政策は、高いコストの補助金や減税措置に強く依存している。対象を適切に絞り込まなければ、逆に生産性や社会厚生に悪影響を与えてしまう。例えば政府の補助金や減税の対象は、経済的に適切な分野ではなく、政治的に影響力を持つ分野となりがちだ。

また、外国企業に対する差別的な規制措置は、相手国の報復を招き、自国の生産性に悪影響を与える。ほとんどの国は、他国で生まれたイノベーションに依存しているためだ。

IMFは、イノベーションと成長を後押しする費用対効果に優れた政策は、第1に基礎研究の公的支援、第2に革新的なスタートアップ企業への研究開発補助、第3は企業間の応用イノベーションを促す税制インセンティブとしている。

これらを組み合わせ、GDPの0.5%の規模の財政措置を講じることによって、GDPを最大で2%押し上げることができる、とIMFは試算する。

経済ショックと経済政策効果

2008年のリーマンショックや2020年の新型コロナウイルス問題は、イノベーションと成長を後押しする適切な経済政策の妨げとなったと考えられる。

こうした大きな経済ショックが生じる際には、政府の経済政策は家計や企業を給付金などで支援することに一気に傾きやすい。他方でそれは財政をひっ迫させ、中長期の観点からイノベーションと成長を後押しする適切な経済政策を後退させてしまう。

さらに、経済ショックが生じるもとでは、各国で自国の産業を守る保護主義的な政策がとられやすい。その結果、市場の分断、貿易の委縮を通じたイノベーションの波及の弱まりも生じやすい。

これらが一因となり、2008年のリーマンショック後にTFPの成長寄与度は低下傾向を辿った。同様のことが新型コロナウイルス問題をきっかけに生じたことは想像に難くない。

新型コロナウイルス問題後には、TFPの成長寄与度が一段と縮小し、潜在成長率はさらに低下している可能性を考えておく必要があるだろう。

(参考資料)
国際通貨基金(IMF)、「世界経済見通し(2024年4月)」、「財政見通し(2024年4月)」

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