動揺が続く東京株式市場:日本に政策対応の余地がないことが市場の不安を増幅
日本株は再び大幅安で寄り付く
東京市場の動揺が続いている。5日(月)の東京株式市場で日経平均株価は過去最大の下落幅となった後、6日(火)には一転、過去最大の上昇幅を記録した。7日(水)の日経平均株価は再び大幅安で寄り付いており、依然として乱高下が収まっていない。
6日の米国市場でダウ平均株価は一時500ドル超の上昇となったが、引けにかけて上昇幅を縮小し、終値は294ドル高まで後退した。その後の先物価格も下落基調となっている。さらに、ドル円レートは1ドル144円台半ばと前日よりもやや円高水準で東京市場に戻ってきたことから、日経平均株価は再び、大幅下落で寄り付いた。一時は前日比900円を超える下落となった。
足元の急速な円高・株安の連鎖は、他の中央銀行とは異なる日本銀行の異例の金融緩和によって形作られた「円安・株高バブル」の調整が起こっている、と理解できるのではないか。
米国で主要な経済指標の発表がしばらくない
ただし、それ以外にも、米国景気悪化懸念も市場の動揺を助長している。米国経済の安定を再確認することが、東京市場が安定を取り戻すきっかけになると考えるが、米国経済の現状を示す主要な経済指標の発表がしばらくは予定されていない。このため、米国経済の先行きへの不安は燻ぶり続け、これが東京市場の動揺を誘うだろう。
8月15日(木)に発表される米国の7月小売売上高、7月鉱工業生産統計まで、米国の景気動向を示す主要な経済指標は発表されない。
日銀、財務省、金融庁による3者会合はセレモニー
金融市場の動揺を受けて、昨日、日銀、財務省、金融庁による3者会合が開かれた。しかし、ここでの話し合いが、為替介入や日本銀行の金融政策修正といった、具体的な政策対応につながっていくことはないだろう。こうした会合は、開いたという事実を金融市場に伝えることに最大の意味があり、当局が金融市場をしっかりと見ているというメッセージを打ち出し、金融市場の安定回復を狙うセレモニー的な役割を担っている。
日本銀行の先週の追加利上げやその後の急速な円高・株安を巡って、政府と日本銀行の間に軋轢が生じている、との指摘も出ている。そこで、日本銀行と政府の連携を改めてアピールする狙いも、この3者会合にはあったのではないか。
日本は市場安定化のための政策対応の余地が小さい
今後米国の金融市場の動揺が深まる場合、米連邦準備制度理事会(FRB)には、9月に0.5%あるいはそれ以上の利下げを行う、年内の会合で連続した利下げを行う、9月の会合を待たずに緊急会合で利下げを行う、など様々な選択肢がある。利下げ余地も5%以上ある。
しかし日本銀行には、利下げの余地はない。また、為替が引き続き円安水準にある中では、政府が円売り介入を通じて円高の流れに歯止めをかけ、株価の安定を図ることもできない。このように、日本では政策対応の余地がないことが、金融市場の不安を増幅し、他国と比べても市場の動揺を大きくさせている面もある。
今後も東京市場の動揺が続けば、日本銀行は先行きの追加利上げに慎重な姿勢に転じた、とのメッセージを市場に送る可能性があるだろう。それでも東京市場の動揺が収まらなければ、7月31日に決定したばかりの長期国債買い入れ減額計画を見直し、一時的に国債買い入れを増額する可能性もあるだろう。しかしそうした政策は、政策金利の引き下げと比べて市場安定化効果が限られる。
日本は、政策対応を通じて金融市場の安定を回復することは難しい。米国経済の先行き懸念の後退に期待するしかないだろう。ただし、米国経済の悪化懸念、景気後退懸念がさらに強まる方向となれば、円高・株安の連鎖は再度強まることになろう。
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