NRIグループ低炭素移行計画について
移行計画の位置づけ
NRIグループの長期ビジョン「NRI Group Vision 2030(V2030)」では、サステナビリティ基本方針(マテリアリティ)として、「持続可能な未来社会づくり」と「NRIの成長戦略実現」に向けて重点的に取り組むテーマを特定しています。
マテリアリティ「ビジネスパートナーとの協働による地球環境への貢献」においては、地球環境の保全・回復を世界共通の課題であるとの認識のもと、気候変動への対応を組織的にマネジメントするため、「低炭素移行計画」を策定しています。
NRIグループの気候変動に関するこれまでの取り組み
NRIグループはこれまで、国内初の円建てグリーンボンドの発行や、業界に先駆けたデータセンターの再生可能エネルギー電力への切替えを行うなど、気候変動に先進的な取り組みを行ってまいりました。
今後はオフィスの再生可能エネルギー電力切替えやビジネスパートナーへの支援を中心に、一層の取り組みを進めてまいります。
全体像 (NRIグループ環境目標と計画)
NRIグループ低炭素移行計画は、2023年度に改定した環境目標達成に向けて、取締役会の承認・モニタリングのもとで運用しています。各施策の実現を担保するために、2023年度以降から2030年度までに再生可能エネルギー調達等に20~30億円の費用を見込んでいます。
本計画は、サステナビリティ関連会議体において進捗を管理し、定期的に見直しを行い、拡充・更新してまいります。
ガバナンス
NRIグループは、気候変動対応を含むサステナビリティを重要な経営課題に位置付けています。取締役会の監督のもと、サステナビリティ経営推進担当取締役を委員長とするサステナビリティ会議を設置しています。その下部委員会としてそれぞれ執行役員を委員長とする価値共創推進委員会、サステナビリティ推進委員会があり、気候関連事項を含むグループ全体のサステナビリティを推進し、活動の進捗を定期的に取締役会へ報告しています。
なお、取締役(社外取締役を除く)および執行役員その他の従業員(役員待遇)に対して支給する株式関連報酬の決定においては、温室効果ガス排出量削減を含むNRIグループのサステナビリティ指標の達成に向けた取り組み状況を考慮する仕組みを導入しています。
戦略
NRIグループが保有・運営するデータセンターでは、使用する電力の再生可能エネルギー化と、消費電力の削減の両面からアプローチをして、ネットゼロに向けた取り組みを進めています。
具体的には、2023年3月末時点で、データセンターで使用する電力は全て再生可能エネルギーに切替えています。また、更なる消費エネルギー削減の推進、取り組みの高度化に向けて「データセンターCO2削減推進会議」を定期的に開催し、消費電力の最適化や、太陽光パネルの設置などについて検討を重ねています。NRIグループは今後もこの取り組みを高度化・推進していきます。
NRIグループは、設備面においても、従来からデータセンターの環境性能を高める取り組みを行ってきました。
例えば、2012年11月に開業した東京第一データセンターでは、サーバ機器を置くフロアと空調などの設備関連機器を置くフロアを分 離して効率的かつ柔軟性の高い空調を実現する「ダブルデッキシステム」や、冷水を蓄積して効率的な空調を実現する「冷水縦型蓄 熱槽」等、様々な省エネルギー設備が導入されています。
こうした新しいデータセンターへのシステム移行により、2016年度-2022年度で▲26.2%の温室効果ガス排出量削減を実現しています。
今後も省エネにつながる設計・設備への切り替えを継続していきます。
NRIグループの使用電力の8割を占めるデータセンターに加えて、2030年までの100%再生可能エネルギー化に向けて、自社オフィスでの使用電力の再生可能エネルギーへの切替も進めています。
今後、2030年までにグループ使用電力の100%再生可能エネルギー化を目指していくうえでは、再生可能エネルギーの供給制約が生じず、必要な分だけ調達できることが前提となります。現在の再生可能エネルギー調達は電力会社が提供するメニューの活用が中心ですが、再生可能エネルギーが容易に調達できなくなるリスクに対応するために、より長期的・安定的な電源確保に向けて、バーチャルPPA※を含むさまざまな電源確保策の導入検討を進めていきます。
- ※ 再エネ購入手法の1種。環境価値のみを長期契約で調達するスキームで、発電事業者が需要場所から離れた場所に建設した再エネ発電設備から、環境価値のみを需要家に供給する
NRI Net-Zero Journey
NRIグループでは、バリューチェーン全体での「2050年度ネットゼロ」の実現に向けては、自社だけでなく様々なステークホルダーとの協働が重要だと考えています。NRIグループでは、このネットゼロを達成する道のりをビジネスパートナーとともに歩む取り組み「NRI Net-Zero Journey」を進めています。下図に示す通り、NRIグループは「持続可能な未来社会づくりへの貢献」というゴールに向けて、ビジネスパートナーとのパートナーシップを大切にしながら、ともに成長していきたいと考えています。
Scope3の見える化
現在のScope3排出量の算定方法は、活動量に排出原単位を乗じて算定しており、削減努力と関係なく活動量が増加するとそれに比例して温室効果ガス排出量も増加する計算式になっています。
NRIグループでは、削減努力が適切に反映されるような算定方法への見直しが重要と考えています。そのため2021年度からCDPサプライチェーンプログラム※に参加し、取引先の温室効果ガス排出量関連データの収集を進めています。 また、CDPサプライチェーンプログラムを通じて、取引先へ気候関連開示を促すことは、バリューチェーン全体、社会全体でのネットゼロの実現に向けて意味のある取り組みだと考えています。このプログラムを通じて収集したデータをもとに、2022年度よりScope3カテゴリー1を中心に算定方法の変更について検討を進めています。CDPの有識者の意見を参考に検討し、従来の環境省の原単位から、各取引先独自の原単位に切り替えることで、活動量が増加した場合であっても数値に削減努力を反映することは可能という試算結果となりました。
バリューチェーン全体での削減努力がScope3の削減に適切に反映されるように、今後、算定方法見直し後の温室効果ガス排出量の開示や、見直し後のScope3排出量算定結果での第三者保証の取得を目指していきます。
- ※ 国際環境NGO「CDP」が運営する環境情報開示プログラムの1つ。CDPがサプライチェーンプログラムのメンバー企業に代わり、メンバー企業のサプライヤーに対して環境関連情報の回答要請を行い、収集したデータを分析し還元する仕組み。
ビジネスパートナーへのエンゲージメント
NRIグループでは、「NRIグループ調達方針」にて、ビジネスパートナーの皆様とともに持続的な社会の構築への貢献していくことを示しています。当該方針においては、「経営状況、製品・サービスの品質・納期・価格」のみならず、「環境・社会・ガバナンスへの取り組み状況等を総合的に評価」して選定することを規定しています。また「サステナブル調達の実践」として、法令や社会規範を遵守するのみでなく、環境・社会等へ配慮した調達活動を行うことを示しています。
また、2021年度には、環境配慮を含む法令遵守、人権などの規範を定めた「NRIグループビジネスパートナー行動規範」を策定しました。NRIグループのサステナビリティ経営実現に向けた想いや、Responsible Business Allianceが策定・公表する「RBA行動規範」を踏まえて作成し、ビジネスパートナーの皆様に、NRIグループとともに取り組んでいただきたい事項をまとめたものです。
この行動規範に対して、ビジネスパートナーの皆様からは、同意書をご提出いただいています。当該同意書は会社間の契約書相当であり、違反時や当社からの改善要請にも関わらず改善がされない場合の、取引縮小や停止についても規定しています。
これらに加えて、ビジネスパートナーの皆様にはセルフアセスメント(SAQ)をご実施いただき、当該行動規範およびSAQに基づいた定期的な意見交換を実施しております。これらの結果等を基に状況把握をし、温室効果ガス排出量削減に特化した説明会やワークショップなど、状況に応じて個社における改善に向けた支援を行っています。(詳細は次ページ)
今後、温室効果ガス排出量削減の取り組みを一定レベル以上で行う(例:SBT水準での目標設定済)ビジネスパートナーから優先的に調達する「優先調達」の推進等を実施し、ビジネスパートナーとの更なる協働を目指していきます。
NRIグループは、バリューチェーン全体の脱炭素化に向けて、ビジネスパートナー各社と協働して温室効果ガス排出量削減に取り組んでいます。
ビジネスパートナーとの対話や、セミナー開催を通じて、環境目標の設定を含む脱炭素に向けた取り組みを支援しています。
エンゲージメント|政策
NRIグループは、パリ協定の目標達成に向けて、ステークホルダーへ働きかけを行っています。NRIグループは、自社の気候変動戦略だけではなく、政府レベルの気候変動戦略についてシンクタンクとして政策提言を、官公庁に対するコンサルティングサービスにおいては、政府の法制度の検討等を行っています。また、環境関連の政策エンゲージメントも行っています。
政府が推進している日本の中長期的な温室効果ガス排出量削減目標の達成の為には、NRIグループだけではなく社会全体での脱炭素化が必要であると考え、22年3月に経済産業省の「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ基本構想」に賛同し、23年3月に「GXリーグ」に賛同の意向を表明しました。
NRIグループは2022年度よりGXリーグの事務局を務めて、全体のコーディネーターを担当しています。事務局として、GX実現に向けた日本企業の多様なニーズを吸い上げ、政策に反映しています。
エンゲージメント|イニシアチブ
参加しているイニシアチブNRIグループは、国内外の業界団体を通じた幅広いパートナーシップを通じて、パリ協定の遵守や政府が推進している日本の中長期的な温室効果ガス排出量削減への寄与など、サステナビリティ関連のイニシアティブへの参画を通じた気候変動への取り組みを推進・拡大させています。 なお、各イニシアティブ(業界団体)への参画においては、当社の気候変動に対する基本方針・取り組みと合致しているか、パリ協定との整合性が確保できるか等を定期的にサステナビリティ推進委員会で確認しています。
NRIグループの電力消費及び温室効果ガス排出量の大部分が日本国内となっており、日本における再生可能エネルギー市場の拡大がNRIグループの環境目標の達成に向けても重要との認識のもと、政策エンゲージメントを行っています。その活動の一環として、2021年1月に気候変動イニシアティブ(JCI)を通じて、エネルギー基本計画で定められた2030年の再生可能エネルギー目標を、現状の22~24%から40~50%に引き上げることを求めました。また、2022年6月には同年6月に策定を予定していた「クリーンエネルギー戦略」が風力発電、太陽光発電など再生可能エネルギー開発の促進を中心に据え、2030年に40%~50%の導入を可能とすることを政府に求めました。
NRIグループは、持続可能な開発を目指す企業約200社のCEO連合体で、企業が持続可能な社会への移行に貢献するために協働するWBCSDに参画しています。2022年から2023年にかけて“Partnership for carbon transparency”, “Avoided Emission“, ”CFO Network”の3つのプロジェクトに参加しています。“Partnership for carbon transparency”では、PCFの計算、認証、データ流通の枠組みについて整理した“Pathfinder Framework ver2.0“の策定の議論に参加しました(2023年1月発行)。NRIグループはコンサルティングとITソリューションプロバイダー両方の知見をもつ企業として活動に貢献しています。“Avoided Emission“では、週次のワークショップに参加し、削減貢献量のガイダンスに対して、日本国内での削減貢献量の議論の経験を踏まえて意見表明することでガイダンスの充実化に貢献しました。WBSCDは政府や政策当局と足並みを揃えることが重要と考え、欧州委員会がCSRDで1.5℃に沿った移行計画の策定を義務化した流れに沿う形で、本ガイドラインを策定しました。世界の1.5℃への移行に向けて、NRIグループも本スタンスに賛同し、プロジェクトに参画しています。
NRIグループは2023年10月に国際環境NGO CDPが行った「SBTキャンペーン2023-2024」に、CDPサプライチェーンプログラムメンバーとして参加しました。このキャンペーンでは、307の金融機関とNRIグループを含む60の企業が、世界で影響力を持つ約2,100社に対して、1.5℃シナリオに整合した科学的根拠に基づく温室効果ガス排出削減目標(SBT)の設定を企業に働きかけました。
シナリオ分析
TCFDシナリオ分析リスクマネジメント
リスクマネジメント体制
気候関連リスクを含むNRIグループ全般のリスク管理においては、リスク管理担当役員を任命するとともに、リスク管理統括部署として統合リスク管理室を設置しています。統合リスク管理室は、リスク管理の枠組みの構築・整備、リスクの特定・評価・モニタリング及び管理態勢全般の整備等を実施しています。リスク管理担当役員を委員長とする統合リスク管理会議を年2回開催し、リスク管理PDCAサイクルの評価やリスク対応策の審議等を行い、その結果を取締役会に報告しています。
具体的には、NRIグループの業務遂行上発生しうるリスクを13項目に分類し、さらにリスク分類ごとにリスク項目を設定します。リスク項目は、定期的にリスクの主管部署が評価し、リスク項目・重要度・影響度の見直しを行います。13のリスク分類のうち、年度ごとに、特に重要度が高いと認識するものを「リスク管理に関する重点テーマ」として統合リスク管理会議で選定しています。なお、13のリスク分類の1つに「経営戦略リスク」があり、「サステナビリティ経営に関するリスク(気候変動対応等)」はその中に紐づけられています。
気候変動リスクへの対応に向けては、統合リスク管理会議とは別に、代表取締役社長の指示に基づき、主にサステナビリティマネジメントを推進するサステナビリティ推進委員会を設置しています。サステナビリティ推進委員会では、2018年度より、気候関連リスク及び機会の特定、評価、対応について、外部環境やイニシアティブの状況を勘案し、各気候関連リスクに対する施策の検討及び決定を行っています。気候変動リスクに関する重要な検討事項については、サステナビリティ会議へも報告され、検討及び決定されます。