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改革重視の経済工作会議

2013/12/17

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中央経済工作会議が12月10日~13日に開催され、13日に会議内容が報道された。同会議は、毎年1回開催される経済関連では最も重要な会議であり、その年の経済政策・状況の総括と翌年の経済政策についての方針が示される。特に、今年は、「三中全会」直後ということもあり、毎年のルーティンワークに加えて、「三中全会」で打ち出された「改革の全面的深化」を、具体的な経済運営にどのように反映していくのかも注目された(三中全会については、2013年11月13日付け当コラム参照)。

今年の会議は、2013年の経済について、複雑な状況下で経済を安定的に推移させたことを評価した上で、課題として、▽経済の動向に対して下方圧力があること、▽一部の産業の過剰設備能力問題が深刻であること、▽食糧安全の保障が難しいこと、▽マクロでの債務レベルが持続的に上昇していること、▽構造的な雇用問題が突出していること、▽生態・環境が悪化していること、▽食品・薬品の質に問題があること、▽社会治安状況が良くないこと等を列挙している。

その上で、2014年の経済運営については、安定の中で進歩を追求することと改革・革新を進めることを中心に据えた。特に、改革については、改革・革新を経済社会発展の各領域・各部門に貫く、としており、改革を重視することが明確になった。また、三中全会と同様に市場活力を重視することも確認された(金融面では、金利自由化と人民元為替レートの形成メカニズムの改革が推進される)。

注目のマクロ経済政策については、連続性と安定性が重視され、ポリシーミックスは、積極的財政政策と穏健な金融政策の組合せが継続する。「積極財政・穏健な金融政策」は2011年から4年連続となる。

経済成長に関しては、「持続的で健全な発展とGDP成長の関係」を考えなければならず、発展イコールGDP増加という単純化をしてはならないとしている。また、経済発展の質と効率は引上げるが、「後遺症」の残らないような経済成長スピードでなければならないとも言及している。さらに、上述の財政・金融政策等は改革の全面深化と結合しなければならない。

「後遺症」というのは、2008年の国際金融危機後のいわゆる4兆元の景気対策が行き過ぎ、地方政府債務問題を抱えたことへの反省であろう。また、2008~9年には、それまでの改革とは正反対の政策が打たれたこともある。例えば、沿海部の低賃金労働を利用した輸出産業については退出させる方向であったが、金融危機以降は雇用維持のため温存した。つまり、財政・金融政策等と改革の全面深化の結合とは、このような事態を避け、改革とマクロ調整政策が矛盾しないようにしたり、また、マクロ調整政策の中にも市場メカニズムを取り入れたり、といったことを意味していると見られる。

このように見ると、改革重視の中で、2014年の経済成長率は2013年と同様のペースになると見られる。社会が不安定化すると改革推進も難しくなることから、雇用状況が不安定にならないような成長率は維持しなければならない。経済構造が急激に変化している中で、どの程度の経済成長率で雇用状況が不安定化するかは事前に予想し難い面があり、実際の政策運営はこれまで通り臨機応変の対応となろう。一方、改革には、中長期のみならず短期的にも経済成長率にプラス効果(例えば民間資本の投資の推進等の効果)がある。

以上のような基本認識の中で、会議では2014年の6つの主要任務が示された(注1)
1)国家の食糧安全の保証
2)産業構造の調整
3)債務リスクの予防とコントロール
4)区域の協調的発展の促進
5)民生の保障と改善
6)対外開放レベルの引上げ

概ね最初に挙げられた課題に対応しているが、注目点としては、第一に、2014年の任務には新たに地方政府債務問題が入っている。地方政府(融資平台を含む)の既存債務については、2013年夏から全国で会計監査が行われており、近々結果が発表される見通しである(前回調査は2010年末で10.7兆元)。地方政府は、シャドーバンキングの主要な融資先であることから、金融リスクの面から注目されている。今回の会計監査の結果、地方政府債務の規模とその性質がはっきりすることが期待される。なお、この結果に基づき、既存債務は分類して管理される(例えば、本来、財政支出で行うべきものは財政で手当てする等)ことが予想される。また、地方債務を予算管理の枠組みに組み入れ、地方政府の借入のプロセスを厳格化することも打ち出されている。

第二に、民生面では、雇用、特に大学生の就職と過剰設備関連の雇用の再就職を重視しており、改革実行にともなう痛みも考慮されていることがわかる。

会議内容の最後には、「三中全会」で設立が決まった「改革の全面的深化の指導グループ」は党の政治局と政治局常務委員会の指導の下に動くとある。既得権益グループの抵抗に遭わないように、全面的に改革を推進する姿勢がここにもうかがえる。

(注1)ちなみに、2013年の任務は概略すると、1)マクロコントロールの強化・改善、経済の持続的で健全な発展、2)農業の基礎固め、農産品供給の保障、3)産業構造の調整加速、産業全体の質の引上げ、4)都市化の推進、都市化の質の引上げ、5)民生保障の強化、人民の生活水準の引上げ、6)経済体制改革の全面深化、開放の拡大、である(2012年12月16日発表)。

執筆者情報

  • 神宮健

    神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    金融デジタルビジネスリサーチ部

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