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人民銀行の預金準備率引き下げについて

2022/04/18

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中国人民銀行は4月25日、預金準備率を0.25%ポイント引き下げた(既に、預金準備率が5%の金融機関は除く)。小零細企業と三農(農業、農村、農民)の支援を強化するために、省内で営業する都市商業銀行と預金準備率が5%を超える農業商業銀行は、預金準備率をさらに0.25ポイント引き下げる。

人民銀行の発表によると、今回の預金準備率引き下げにより、5,300億元が通常の銀行貸出にまわせるようになり(流動性供給)、また、金融機関の毎年の資金コスト低下は約65億元となる。金融機関の平均預金準備率(加重平均)は8.4%から8.1%に低下する。

預金準備率の引き下げは、昨年以降では21年7月15日の0.5ポイント引き下げ(流動性供給1兆元、金融機関の毎年の資金コスト低下130億元)、同12月15日の0.5ポイント(流動性供給1.2兆元、資金コスト低下150億元)に次いで3度目であるが、今回は、引き下げ幅が縮小した。

人民銀行は、今回の預金準備率の引き下げについての説明で、(銀行システムの)流動性は既に十分な水準にある、との認識を示し、引き下げの目的は金融機関の資金構成の最適化による金融機関の長期の安定的な資金源の増加としている。このように、今回の預金準備率引き下げの重点は、長期の安定的な資金供給による銀行の貸出コスト低下にあると見られる。そして、その資金の貸出先としては、人民銀行の説明でも触れられているように、コロナ禍の影響を受けた業界や中小零細企業が念頭にある。

また、今回の説明において、当局は預金準備率の引き下げ後に、①物価動向の変化と物価全体の安定維持、②主要先進国経済の金融政策調整と内外バランスを注視するとしている。両者とも昨年12月の引き下げの際の説明にはなかった内容である。今後の中国の金融緩和の行方を見る上で、輸入インフレを中心としたインフレ圧力や米国の金融引き締め等が、重要な考慮要因となってくることがわかる。

実際、市場が期待していた政策金利であるMLF(中期貸出ファシリティー)金利は、4月に低下しなかった。MLF金利は、今年1月に2.95%から2.85%へ0.1ポイント低下した後、2、3、4月は据え置きとなっている。今後引き下げられる場合も、以前より慎重な決断を迫られる可能性はある。

こうした状況下では、当面、従来同様、金融当局が支援を強化したい領域(小売、飲食、観光業など新型コロナ禍で影響を受けた業界、中小企業、農業部門等)にターゲットを絞った金融緩和策が重要な役割を果たすことになる。今回、一部の都市商業銀行や農業商業銀行に対して、預金準備率を追加的に0.25ポイント引き下げ、計0.5ポイント引き下げた理由も、冒頭で見た通り小零細企業と三農の支援強化である。

また、いわゆる「構造的金融政策ツール」も利用される。一つは人民銀行から市中商業銀行へ資金を貸し出し、商業銀行がその資金をさらに(特定領域に)貸し出す「再貸出」であり、農業支援、小企業支援、貧困扶助の再貸出等がある。加えて、コロナ禍の影響を考慮して導入された特別な政策ツール(コラム「国務院常務会議で示された金融政策ツールの利用について」、2022年4月8日)もある。

今後も、政策金利変更などの経済全般に影響を与える金融政策ツールと「再貸出」等のターゲットを絞った金融政策ツールが並行して利用されることになると思われる。

執筆者情報

  • 神宮 健

    金融デジタルビジネスリサーチ部

    シニア研究員

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