企業等の組織では人手が不足する一方、従業員側の就労希望とのミスマッチで定着がうまくいかないといった問題が指摘されています。NRIはこの結果から、組織が目指す経営方針や人事戦略に沿いつつ、現場や個々の従業員の多様なニーズと条件を踏まえた「人材配置最適化」のヒントが、TMPで得られると考えます。

Talent Marketplaceの概要

TMPは、「企業が行うべき業務」と「人材の意志・能力」を結び付けるバーチャルな「社内人材市場」を形成し、業務×人材の最適なマッチングを実現するシステムです。ここでは、現場や従業員が主体的に入力した情報（今いる人材、今後欲しい人材、従業員の就労希望等）と、業務に関する情報（新たな人材を求める業務、各業務に必要な能力等）が可視化されています。透明度のある社内人材市場を形成したうえで、AIが人材と業務との出会いをレコメンド（推奨）します。TMPの主な特長は以下の通りです。

①人材と業務のマッチングを目的に、現場が必要な情報を掲載することに特化し、UX（ユーザエクスペリエンス：使用者の経験や体感）を高めつつ運用コストを低減

②従業員の自主入力項目である、「アピールしたい過去実績」「将来チャレンジしたいこと」を重視

③個々の従業員の性格・資質、スキル、実績・チャレンジ（自由記述）情報に基づくAIレコメンドでマッチングを促進

④AIが配置まで決めるのでなく、あくまでも従業員本人の希望に合った部署や業務を抽出する精度を高める材料を提示

⑤現場の希望と人事の制約条件から、マッチングアルゴリズムで最適配置案を出力

社内の人材関連情報を、単に一元化・可視化するだけのタレントマネジメントツールとは異なり、各種の先進的なテクノロジー（AI、マッチングアルゴリズム、自然言語処理等）を活用することで、企業と従業員、それぞれが望む「適材適所」を実現します（図表1）。

図表1：既存のタレントマネジメントツールとTMPの比較

出所：NRI

本実証では、人材と業務に関する情報流通を活性化し、TMPを用いたマッチングの最適化によって、導入以前を大きく超える結果を得ることができました。適材適所による生産性向上・エンゲージメント向上・離職予防を実現するだけでなく、社内の異動に関する検討業務を大幅に効率化する効果も期待できます（図表2）。

図表2：Talent Marketplaceが実現する人材戦略と事業戦略の連動

出所：NRI

今後、社内異動、新人配属、セカンドキャリア支援、シニア再雇用等、様々なマッチングでのTMP活用の可能性について検討していく予定です。また、海外企業・拠点での活用も想定し、英語での利用も対応予定です。

NRIは様々な業界の企業と議論・検証しながらTMPの実用性を高め、不確実な事業環境と人材流動性の高まりに適応できる組織への変革を支援することで、多様な人材が多様な機会で潜在能力を最大限発揮する社会の実現に貢献していきたいと考えます。
Talent Marketplace実証の取り組みについては末尾の「本件に関するお問い合わせ」先までご連絡ください。