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有配偶パート女性の6割以上が年収を一定額以下に抑える「就業調整」を実施

〜「就業調整」実施者の8割近くが「働き損」にならないなら今より多く働くことを希望〜

2022/09/30

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長 兼 社長:此本 臣吾、以下「NRI」)は、2022年9月12日から9月13日にかけて、全国の20~69歳でパートもしくはアルバイトとして働く、配偶者のいる女性(以下、「有配偶パート女性」1)3,090人を対象に、就業の実態や意向を把握するためのインターネットアンケート調査(以下「本調査」)を実施しました。

最低賃金の引き上げや人手不足を背景に、パート労働者の時給は年々上昇していますが、それにもかかわらず、年収はほぼ横ばいで推移しています(【参考】の1を参照)。その要因として、年収が税や社会保険料の支払い対象外となる範囲に留まるよう、自身の労働時間を調整する「就業調整」を行うパート労働者が少なくないことが挙げられています2。本調査は、その実態と影響を把握することを目的に実施しました。
調査から得られた主要な結果は、以下の通りです。なお、詳細な結果等は後日改めて公表する予定です。

有配偶パート女性の6割以上が自身の年収額を一定に抑える「就業調整」を実施

本調査に回答した有配偶パート女性のうち61.9%が、自身の年収額を一定の金額以下に抑えるために、就業時間や日数を「調整している」と回答しました(図1)。「年収の壁(その金額を超えると税や社会保険料の負担額が増え、手取り収入の減少が生じる境目)」を意識して、収入がその手前となるように「就業調整」を実施している様子がうかがえます。

図1 有配偶パート女性における「就業調整」の実施有無

出所:NRI「有配偶パート女性における就労の実態と意向に関する調査」(2022年9月)

8割近くが、「働き損」にならないのなら今より多く働くことを希望

税や社会保険料を支払うことによる手取り額の減少を避けるため、主に有配偶パート女性において行われている「就業調整」については、パート労働者の人的資源を十分に活用できていないことから3、人々の働く意欲を阻害しない制度等への見直しが必要と言われてきました4
現在「就業調整」をしていると回答した有配偶パート女性に、「『年収の壁』」がなくなり、一定の年収額を超えて働いても手取りが減らなくなった場合、現在よりも年収が多くなるように働きたいか」と聞いたところ、36.8%が「とてもそう思う」、42.1%が「まあそう思う」と答えました(図2)。合わせると8割近く(78.8%)が、収入が「年収の壁」を超えても「働き損」にならないのであれば、今より多く働きたいと考えています。
(本資料に記載の構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、内訳の計と合計が一致しない場合があります)

図2 「年収の壁」がなくなった場合の就労意向
(「就業調整」を行っている有配偶パート女性の回答)

(注)構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とはならない場合がある

出所:NRI「有配偶パート女性における就労の実態と意向に関する調査」(2022年9月)

過去最高の引き上げ幅と注目される最低賃金の引き上げも、それが結果的に国民の所得増に繋がらなくては意味がありません。何のために賃金水準を上げるのか、その賃金水準引き上げによって最終的に実質所得が上がるのかを、もう一度問う必要があると考えます。
また、所得の伸び悩みと労働力不足に直面する日本にとって、共働き世帯が増えるなど、「年収の壁」の基となる制度が作られた時代とは状況が大きく変化している事実を再認識し、少なくとも、働く意欲を阻害する現状の制度や仕組みを改善することは急務と考えられます。

  • 1  

    厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査」において、正社員以外の労働者で週の所定労働時間が正社員よりも短い労働者は、「パートタイマー」、「アルバイト」などの名称にかかわらず「パート」に区分されていることから、本調査結果では「パート」と総称している。

  • 2  

    内閣府「令和4年版 男女共同参画白書(P.20)」など

  • 3  

    内閣府「令和4年版 男女共同参画白書(P.234)」など

  • 4  

    厚生労働省「女性の活躍促進に向けた配偶者手当の在り方に関する検討会 報告書(平成28年4月)(P.10)」など

参考

1.パート労働者の時給、年収、一人あたり月間総実労働時間の推移

(1993年~2021年。1997年=100)

  • 注:

    ここでの「パート労働者」は、1日の所定労働時間が一般の労働者より短い者、もしくは1週の所定労働日数が一般の労働者よりも少ない者を指しており、契約社員や嘱託なども含まれていると見られる。また、ここでの「時給」は、「年収の壁」の議論との関連性を高めるため、パート労働者の現金給与総額を総実労働時間数で除したものを用いている。そのため、時間外手当や休日出勤手当、深夜手当などの所定外給与や期末手当、賞与をはじめとする特別に支払われた給与分も「時給」のなかに含まれている。

出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」よりNRI作成

2.調査概要

調査名 「有配偶パート女性における就労の実態と意向に関する調査」
調査時期 2022年9月12日~9月13日
調査方法 インターネットアンケート
対象者および回答数 全国の20~69歳で、パートもしくはアルバイトとして働く有配偶の女性 3,090人
  • ※  

    調査結果の数値は、総務省「平成29年就業構造基本調査結果」に基づき、有配偶のパート・アルバイト女性の年代別の構成比(10歳刻み)に合わせてウエイトバック処理を行っています。なお、図中には、実際に回収したサンプル数を記載しています。

3.関連レポート

コラム:「女性の経済的自立」の実現には何が必要か

(1)なぜ、最低賃金の引上げは所得増に繋がらないか

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/souhatsu/data_view_use/0810

(2)「年収の壁」の高さを可視化してみる

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/souhatsu/data_view_use/0829

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ先


株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡
TEL:03-5877-7100
E-mail:kouhou@nri.co.jp

本件調査の担当


株式会社野村総合研究所 未来創発センター 武田

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