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NRI トップ 新型コロナウイルス対策緊急提言 BCP Readyに向けたオフィスITの活用

BCP Readyに向けたオフィスITの活用

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2020/04/06

  • 新型コロナ対策の中で、テレワークは、これまでのような「あったほうが良い」ツールから、BCPのために「なくてはならない」ツールとして位置付けられている。
  • 緊急対応が必要な感染拡大抑制期、すなわち今は、多少の生産性を犠牲にしてでも、在宅勤務にできるだけ多くの業務を移すことを優先すべき。そのためには、コミュニケーション機能、ファイル共有機能を備えたバーチャルオフィスを、クラウドツールを用いて早急に構築する必要がある。
  • 長期戦が予想される感染軽減・事業継続期には、バーチャルオフィスのインフラを活用しつつ、空気質モニタリングの実施と「パンデミック対策BCPオフィス」を加えた、ウイルス感染に強いオフィスの構築を目指すべき。

テレワークは、「あったほうがよい」ツールから、今や「なくてはならない」ツールへ

新型コロナ感染拡大防止策として、全社もしくは特定部門の在宅勤務に踏み切る企業が増えている。電通、資生堂、キリンホールディングスなど、早くから大多数の在宅勤務に取り組んだ企業に加え、3月25日の小池都知事の緊急会見以降、在宅勤務を打ち出した企業も多い。
ここ数年来の「働き方改革」の中で、テレワークに取り組んできた企業は少なくない。しかし、これまでのテレワークは、必要な人だけ、自宅でできる仕事だけを対象としたもの、言ってみれば「あったほうが良いテレワーク」であった。これに対し、今求められるのは、すべてのオフィスワーカーの、すべての仕事を対象とした、「なくてはならないテレワーク」、すなわち、BCP(Business Continuity Plan)の必須アイテムとしてのテレワークである。

感染拡大抑制期には、多少の生産性を犠牲にしてでも、バーチャルオフィスにできるだけ多くの人と業務を移すことを優先すべき

現在の環境下で、テレワークにどのように取り組むべきか。新型コロナ感染対策のステージに応じて取り組みを変えることが重要である。
まず、感染拡大抑制期、すなわち人の移動や集まりを最優先で避けるべき時期の対応。オフィスにおいては、通勤電車・バス、勤務スペースでの人の接触、対面での社内外の打合せを避けることが基本である。したがって、この時期は、多少の生産性を犠牲にしてでも、できるだけ早く、多くの人と業務を、テレワークに移さなくてはならない。
具体的には、①コミュニケーション機能(チャット、ビデオ会議等)と②ファイル共有機能が必須であるが、時間をかけずにこれらを整備するには、クラウド型のサービスを活用するのが現実的であろう。

NRIでも、web会議ツールを活用して対社外・社内コミュニケーションを継続

NRIでも、現在、クライアントやパートナーとのミーティングは、原則としてweb会議を使うこととしている。従来から、複数拠点のメンバーが参加する場合などに、社外および社内の複数拠点をつないでミーティングを実施することはあったが、現在では、社内外メンバーがそれぞれ自宅から参加することも普通に行われている。
このステージでは、誰でも簡単に使えるというユーザビリティ、そしてセキュリティを優先してツールを選択すべきだろう。社外メンバーも、こちら側で設定・メール送付したURLから簡単にweb会議に参加できるといった簡便さや、画面共有、記録などの機能、さらにファイル共有ツールと連携していることが望ましい。
なお、これまでテレワークをあくまで「例外」として扱ってきた企業では、このような環境を整えても問題なく業務ができるのか、懸念が残るだろう。一つの対応策としては、このステージでは、バーチャルオフィスもできる限りリアルな空間と同じ運用を心掛ける、という方法がある。
例えば、通常の業務時間(9時~17時30分)には、ツールの「会議室」に同じチームや部署の人間が原則として全員入室し、いつでもチャット等でコミュニケーションを取れるようにしておく、といったやり方である。朝礼や夕礼を実施していた企業ならば、それをweb会議に置き換え、そこで一日の活動予定や実績を相互に確認するのも良い。
いずれにせよ、このステージでは、完璧な運用を求めすぎないことが肝要である。ある程度の生産性の低下は前提とし、通勤時間が不要になる分も含めて元が取れればいい、くらいの割り切りも必要だろう。

感染軽減・事業継続期には、バーチャルオフィスを前提とした働き方を選択するか、感染に強いリアルオフィスの構築を選択するか、判断すべき

3月28日の会見で、安倍総理は、新型コロナ対策が長期戦になる可能性について述べた。前述のような感染拡大抑制期は、全国民一体となっての封じ込め方策が奏功すれば、どこかの時点で一区切りがつくと考えられる。しかし、その後に感染軽減・事業継続期、すなわち、移動や集まりに対する極端な制限は求められないものの、依然として警戒を怠ることができない時期が、一定程度続くことを覚悟しなければならない。オフィスにおいては、在宅指示、外部との面談禁止などは解除されるものの、そこでいわゆる3つの密―――密閉・密集・密接が発生しないような工夫が求められる。
感染拡大抑制期に求められるバーチャルオフィス化が、多少の生産性を犠牲にしてでも取り組むべき緊急対応だとすれば、その後に続く感染軽減・事業期の対応は、長期戦にも耐えうる、無理のないものでなければならない。生産性の低下がこの期間にわたって続くようであれば、企業の競争力への影響も無視できなくなる。
このとき、2つの方向が考えられる。一つは、緊急対応として構築したバーチャルオフィスを継続し、そこでリアルオフィス以上の生産性を志向することである。更なるIT基盤の整備はもちろんだが、ミッションや成果を基軸とした人材マネジメントなど、人事制度や組織風土の革新が重要となる(この点については、後日、改めて情報発信させていただく予定)。

感染に強いリアルオフィスを志向するなら、空気質モニタリングの実施と「パンデミック対策BCPオフィス」の構築を

もう一つは、フェイストゥフェイスのコミュニケーションの有用性を重視し、リアルオフィスに戻るという方向である。その場合、空気質モニタリングの実施と後述する「パンデミック対策BCPオフィス」を加えた、ウイルス感染に強いオフィスの構築を目指すべきと考える。ここでも、鍵になるのはオフィスITの活用である。
新型コロナウイルス感染症対策専門者会議の提言にもあるように、感染症予防のためには換気の悪い密閉空間を避けることが重要とされている。現在、空気中のウイルスそのものを検出できるセンサーはないが、二酸化炭素濃度を測るセンサーは既に複数上市されている。二酸化炭素濃度は空気の循環状況のバロメーターであり、間接的にウイルス感染リスクを知ることができる。オフィス各所に設置したセンサーのデータを、IoTゲートウェイ経由でクラウドに蓄積し、分析することによって空気質悪化の警告や、課題の発見が可能になる。
さらに、平時からオフィスを業務ごとに分散配置し、オフィス閉鎖発動時に重要業務を継続できるような環境を整備する(それを「パンデミック対策BCPオフィス」として規定したい)。それを、感染拡大抑制期に構築したバーチャルオフィスのインフラを活用して、現在の主要オフィス、在宅勤務、サテライトオフィスなどとネットワーク化することで、ウイルス感染に強いオフィス環境を実現することが可能となる。

執筆者

黒崎 浩

コーポレートイノベーションコンサルティング部
プリンシパル

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株式会社野村総合研究所 未来創発センター
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