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NRI トップ 新型コロナウイルス対策緊急提言 新型コロナウイルス感染拡大による消費者の行動変容がICTメディア・サービス産業に及ぼすインパクトと対応策(サマリー) ~変革を契機にしたDX実現にむけて~ キャッシュレスでの支払いが増加:感染拡大防止、経済回復に向けてそれぞれがすべきこと~新型コロナウイルス感染拡大によるICT・メディア産業変革と対応策(13)キャッシュレス・消費~

キャッシュレスでの支払いが増加:感染拡大防止、経済回復に向けてそれぞれがすべきこと
~新型コロナウイルス感染拡大によるICT・メディア産業変革と対応策(13)キャッシュレス・消費~

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2020/06/16

  • コロナウイルス拡大により、店舗での支払いのシーンにおいても現金の受け渡しによる衛生面の問題から、店員と客の接触を必要としないキャッシュレスのニーズが増加する。それに加えて、ネットショッピングの増加などによってもキャッシュレスでの支払いが増加しており、今後さらに拡大していくものと考えられる。
  • 感染拡大防止の観点から、今後もキャッシュレスをより一層普及させるべきであるが、普及に向けては加盟店への入金サイクルの短縮や決済手数料軽減などの課題があり、加盟店対応の見直しが必要である。そのために、消費者・加盟店・決済事業者だけでなく、行政・政府を巻き込み官民が一体となって取り組むべきである。
  • コロナウイルス収束後のキャッシュレスの普及、経済の回復にあたっては、還元キャンペーンなどの施策を通じて、キャッシュレスの利用や消費のきっかけを作ることが重要である。キャンペーン等をきっかけにキャッシュレスを使い始めた人が、そのメリットを体感し使い続けること、様々な施策を通じて新規の利用者を増やしていくことが不可欠である。
  • コロナウイルス拡大を通じて、中長期的には、ECの利用増加だけでなく事前決済サービスなど消費行動そのものが変わってくることも十分に考えられ、よりキャッシュレスが日々の生活に必要不可欠なものとなるだろう。そうした消費行動の変化に見合った決済・サービスのあり方を考えていく必要がある。

コンビニ等の店舗では、感染防止を目的にビニールカーテンの設置やトレーを介した現金のやりとりを推奨。キャッシュレスでの決済であれば、感染リスクを減らすことができる。

コロナウイルス拡大により、コンビニやスーパーマーケットなど多くの店舗において、会計時の飛沫感染防止を目的としたビニールカーテンが設置されるようになった。現金での支払い時においても、店員と直接現金の受け渡しをするのではなく、トレーでの受け渡しを推奨している店舗が多く見受けられる。コンビニやスーパーマーケットでの買い物は、一般消費者にとって生活に欠かせないものである一方で、不特定多数の人が来店し、接触の可能性があることから、そうした場においての感染拡大防止は喫緊の課題のひとつである。なかでも現金のやりとりは、トレーを介したやり取りであったとしても、間接的に客と店員が接触する点や、誰が触ったものであるか分からないという点で、客にとっても店員にとってもコロナウイルス感染のリスクとなりうる。5月4日に厚生労働省が発表した「新型コロナウイルスを想定した新しい生活様式」においても、実践例として電子決済の利用が挙げられている。実際に、電子マネー等の非接触ICやスマートフォンのQRコードを用いた決済であれば、現金を触る必要がない上に、客と店員が接触する必要もないことから、感染のリスクを減らすことができる。

衛生面に対する不安やネットショッピングの利用増加を背景にキャッシュレスでの支払いが増加

実際に、情報リテラシの高い若年層を中心に、各年代でキャッシュレスでの支払いが増加している。大きな要因として、店舗での現金のやりとりを通じた接触への抵抗感のほか、外出自粛によるネットショッピングの増加があげられる。さらに、これらコロナウイルスの影響に加えて、政府が2019年10月から実施しているキャッシュレス・ポイント還元事業も、キャッシュレスの利用を後押ししている。この還元事業に併せて、各キャッシュレス決済事業者も独自のキャンペーンを開催しており、コロナウイルス拡大により全体の消費支出が落ち込む一方で、現金からキャッシュレスへのシフトが進んでいる。
コロナウイルス拡大を機に最もキャッシュレスでの支払いが増えたのは20代で、半数以上がキャッシュレスでの支払いが増えたと回答した。その他の年代でも、全ての年代において4割以上がキャッシュレスでの支払いが増えたと回答している(図表1)。一方で、現金での支払いが増えたと回答したのは全体のわずか8%に留まっており、キャッシュレスを一切利用しない現金主義者の存在を差し引くと、現金のやりとりに対する強い抵抗感が伺える(図表2)。電子マネー等の非接触ICやスマートフォンのQRコードを用いた決済などの接触を必要としない支払い方法であれば、不特定多数が触れる現金を扱う必要がなく、支払い通じて消費者と店員が直接・間接的に接触することもないため、衛生的に支払いが可能である。このことは、キャッシュレスでの支払いにおける、これまで着目されていなかったメリットと言える。
また、外出自粛によりネットショッピングの利用も増加している。10代・20代の若年層を中心に全体の3割強がネットショッピングの利用が増えたと回答した(図表3)。Uber Eatsなど食事宅配サービスの利用も増加しており、これらネットショッピングや食事宅配サービスの利用増加もキャッシュレス利用増加に寄与している。
キャッシュレスでの支払いは、衛生面でのメリット以外にも、現金を持ち歩く必要がなく、素早く決済ができるといった利便性のほか、ポイント還元や割引などの経済的メリットなどもある。コロナウイルス拡大を機にキャッシュレスを利用した人や、今まであまりキャッシュレスを利用していなかった人が、これらのメリットを享受することで、コロナウイルス終息後も継続してキャッシュレスの利用機会を増やしていくと考えられる。消費者のキャッシュレス利用が増加すればするほど、キャッシュレスへの対応店舗も増加し、今後さらにキャッシュレスの利用は拡大していくだろう。

提言:感染拡大防止、経済回復に向けたキャッシュレス利用促進にむけて

~消費者に向けて~

まずは直近、いかに感染の可能性を減らすかが課題になる。そのためには直接・間接を問わず、不特定多数との接触を避けるべきである。具体的には、決済時において、店員との現金の手渡しをなるべく避け、非接触ICやスマートフォンのQRコードを用いた決済を利用することである。こうしたキャッシュレスの活用により、接触の頻度を減らすことは、自身の感染の可能性を減らすことは勿論、店員の感染の可能性を減らすことにも繋がり、感染拡大の抑制に貢献できるだろう。それだけでなく、コロナウイルスをきっかけにキャッシュレスを利用した人のキャッシュレスに対する理解が進むことで、よりキャッシュレスの普及が見込めるのではないだろうか。

~店舗・加盟店に向けて~

店舗・加盟店において感染の可能性を減らすための課題は様々あるが、現金の現金決済のみの店舗においてはキャッシュレス決済を導入すること、既に何かしらのキャッシュレス決済を導入済みの店舗においても、電子マネー等の非接触ICやスマートフォンのQRコードを用いた決済などの、接触を必要としない決済手段を導入することがまずは求められる。
それと同時に”密”になりがちな店舗内での消費者同士、消費者店員間の接触を避けるべく、例えばスーパーマーケットであればネットスーパーへの対応や、飲食店であればUber Eatsや出前館などのデリバリーサービスへの対応を進めることが求められる。こうしたサービスであれば、オンラインでの決済を行うことで、現金のやり取りによる接触も回避できる。

~決済事業者に向けて~

キャッシュレスの利用促進に向けては、上記のような店舗・加盟店の対応が重要である一方で、キャッシュレス導入に際しては課題もある。一つ目が入金サイクルの改善である。一般的に店舗への売上の入金は1ヶ月に1~2度であることが多く、現金と違ってすぐには売上が店舗に入ってこない。現在、コロナウイルス拡大により売上の落ち込み、資金繰りに苦しむ店舗が増加しているが、上記の課題を解消できれば、よりキャッシュレスの普及が見込めるだろう。二つ目が高い決済手数料である。一般に中規模・小規模事業者ほど決済手数料が高く設定されており、利益を圧迫することからキャッシュレス導入の大きな妨げとなっている。この点に関しては、個々の決済事業者による加盟店対応の見直しだけでなく、業界をあげての取り組みが必要である。これらの課題を解決すべく、金融機関や政府・行政を巻き込んで、制度・サービスの見直しをすべきではないだろうか。

~行政・政府に向けて~

行政・政府としては、直近の感染拡大防止に向けて消費者に対してキャッシュレスでの支払いなどを呼びかけたり、加盟店に対してキャッシュレスの導入やデリバリーサービスへの対応を促したりすることによって、接触の機会を減らしていくことが重要である。さらに決済事業者や金融機関に対しても、前述のようにサービスの改善を促していくべきである。これに関しては、例えば経済産業省では、事業者間の競争による手数料引き下げなどを目的として、キャッシュレスの決済手数料を公表する方針を発表しており、こうした取り組みを通じたキャッシュレスの推進が重要となる。
コロナ禍収束後の経済回復に向けては、個人の消費意欲をどれだけ回復できるかが鍵を握ると考えられる。その意味ではキャッシュレス・ポイント還元事業やマイナポイント事業などの行政が主体のキャンペーンは重要な施策となる。まずは、キャッシュレスを使ってもらい、経済性や利便性などのメリットを体感し使い続けてもらうことが、キャッシュレス普及に向けて重要である。さらに、決済事業者独自の還元キャンペーン等により消費者にキャッシュレス利用のきっかけを作ることで、新たな利用者獲得が見込める。最近ではQRコード決済を中心に多くのキャッシュレス事業者が高還元率キャンペーンを実施しているが、コロナ禍が収束し外出の自粛が解かれたタイミングで、官民が一体となって高還元率キャンペーンなどを実施し、消費意欲を喚起し、経済の回復を目指すべきではないだろうか。
コロナ禍が収束しても、生活様式は拡大前とは異なる新しい様式となることが考えられる。消費行動においては、ECのより一層の普及や事前決済サービスなど、そのあり方が大きく変わると想定される。こうした新たな生活様式において、キャッシュレスは必要不可欠なものであり、これまでよりも日々の生活に欠かせないものとなるだろう。

ご参考

「新型コロナウイルス感染拡大による生活の変化に関するアンケート」の実施概要

  • 【調査方法】

    インターネットアンケート調査

  • 【対象】

    全国の満15~69歳の男女個人(人口動態割付)

  • 【有効回答数】

    2064人

  • 【実施時期】

    4月22日~24日

執筆者

隈部 大地

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部

田中 大輔

ICTメディア・サービス産業コンサルティング部

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