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NRI トップ 新型コロナウイルス対策緊急提言 コロナ禍を受けてCIOがとるべき施策~足元の課題解決は既に開始、その先に向けてIT・デジタル活用を加速すべきである~

コロナ禍を受けてCIOがとるべき施策
~足元の課題解決は既に開始、その先に向けてIT・デジタル活用を加速すべきである~

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2020/06/04

  • 野村総合研究所は、2020年5月9日~19日に国内企業のCIOを対象として、新型コロナウイルスの影響に関するWebアンケート調査を実施し、69社から回答を得た。回答企業の2019年度売上高は1,000億円以上であり、その内49%は1兆円以上の大手企業である。
  • 2020年度IT・デジタル投資配分において、当初計画から増やす意向が最も多かったのは「働き方改革」である。次いで、「顧客接点業務」と「ITインフラ」である。当面の事業環境が厳しい企業においても、一律に投資を削減するのではなく、働き方改革や顧客接点業務の見直しに投資を集中させるなどのメリハリが求められる。
  • IT・デジタル戦略上、直近の優先度を上げる施策として、「ペーパーレス化」、「リモートワーク化」、「採用のデジタル化」など、「働き方改革」に向けた取り組みが上位を占めている。次いで優先度を上げると考えられているのが、「非対面営業の強化(オンライン営業ツールの導入など)」や「販売チャネルのデジタル化(EC・モバイルアプリの導入)」などの顧客接点業務関連である。
  • 前述の直近優先度を上げる施策を除き、今後、優先度を上げていく施策、すなわち「優先度を上げる予定(2020年度)」または「優先度を上げる予定(2021年度以降)」の割合が高かった施策は、「モノ売りのサービス化(資産・設備の稼働管理、サブスクリプションなど)」や「キャッシュレス化」、「サプライチェーンにおける企業間情報共有」、「システムの疎結合化(マイクロサービスなど)」などである。これらの施策は、働き方改革や顧客接点業務の見直しに続く、”次の打ち手”といえる。この状況をチャンスと捉え、他の企業に先んじて、”次の打ち手”に向けた取り組みを加速すべきである。

コロナ禍を受け、IT・デジタル戦略上の施策優先順位にメリハリをつけた投資をすべきである

2020年度の売上高が、当初計画と比較してどの程度、影響を受ける見通しかと尋ねたところ、「大幅に減る見通し(10%以上)」または「ある程度減る見通し(5%以上10%未満)」と回答した企業が58.0%であった。コロナ禍において、過半数の企業がマイナスの影響を被っている(図1)。IT・デジタル投資に目を向けると、2020年度当初計画から、「大幅に減らす(10%以上)」または「多少減らす(5%以上10%未満)」と回答した企業は20.3%に留まっている(図2)。つまり、売上高にはマイナスの影響があったものの、IT・デジタル投資を減らす企業が少ないことがわかる。
ITやデジタルを活用したビジネスモデルの見直しや新規事業検討の必要性の変化について、「必要性が大きく高まった」または「必要性が高まった」と回答した企業が88.4%となっており、IT・デジタル化の重要性が再認識されたことがうかがえる(図3)。
2020年度IT・デジタル投資配分において、当初計画から「大幅に増やす・多少増やす」と「多少減らす・大幅に減らす」の差が最も大きい領域は、+40.6ptの「働き方改革」である。次いで、+18.8ptの「顧客接点業務」と「ITインフラ」である(図4)。IT・デジタル戦略上の施策優先度は各社の考えによるものの、CIOは、コロナ禍を受けた自社の事業環境の見通しを踏まえ、改めて優先順位を見極めるべきである。当面の事業環境が厳しい企業においても、一律にIT・デジタル投資を削減するのではなく、働き方改革や顧客接点業務の見直しに投資を集中させるなどのメリハリが求められる。

各社はまず、働き方改革や顧客接点業務の目下の課題から取り組もうとしている

IT・デジタル戦略上の優先度の変化について尋ねたところ、「既に優先度を上げて対応している」または「優先度を上げる予定(2020年度)」、「優先度を上げる予定(2021年度以降)」と回答した企業の割合が高かったのは、「ペーパーレス化」、「リモートワーク化」、「採用のデジタル化」、「押印処理のデジタル化」、「セキュリティ対策の導入・見直し」、「ネットワークの見直し」などである(図5①)。緊急事態宣言のもと、リモートワークを実現する上で不可欠な働き方改革関連の施策が、上位を占めている。一方で、働き方改革を行う上では、「過去からの慣例」が最大の障壁という結果だった(図6)。コロナ禍を受け、IT・デジタルの活用を前提と考える”新しい常識”が根付くこのタイミングは、自社内のIT・デジタルに対する意識改革を推進する上で絶好のチャンスである。コロナ禍における働き方に対するアンケートを実施し、多様な働き方を支えるIT・デジタル施策を素早く企画、リリースし続けることが重要と考える。
働き方改革に次いで優先度を上げると考えられているのが、「顧客接点業務」である。「非対面営業の強化(オンライン営業ツールの導入など)」や「販売チャネルのデジタル化(EC・モバイルアプリの導入)」などの優先度を上げると回答した企業が多かった(図5②)。コロナ禍において人と人との接触が制限されたことにより、顧客接点業務に大きな影響が出たことが要因と考えられる。全ての業界で顧客接点がリモート化するとは言えない。しかし、コロナ禍を受け顧客の価値観は変化し、緊急事態宣言解除後もIT・デジタルを活用した顧客とのやりとりの割合は高まるはずである。顧客接点業務のデジタル化は優先的に取り組むべきと考える。

“次の打ち手”に向けた取り組みも加速すべきである

前述した「働き方改革」と「顧客接点業務」関連の施策は、コロナ禍において早急に対応しなければ業務に影響を及ぼす、緊急性の高い施策である。それ以外で今年度以降、優先度を上げる施策を見てみたい。前述した施策を除くと、IT・デジタル戦略上の優先度について、「優先度を上げる予定(2020年度)」または「優先度を上げる予定(2021年度以降)」の割合が高かった施策は、「モノ売りのサービス化(資産・設備の稼働管理、サブスクリプションなど)」や「キャッシュレス化」、「サプライチェーンにおける企業間情報共有」、「システムの疎結合化(マイクロサービスなど)」などだった。また、自由回答の中でも、協力会社も含めたサプライチェーン全体の事業計画・災害復旧計画の再検証を行う、サプライチェーンのデジタル化などサービス付加価値を高められる領域への投資を加速させていく、といった声もあった。
直近の優先度を上げる施策が、緊急事態宣言のもとで必要性に迫られた働き方改革や顧客接点業務に関するものが多かった一方で、今年度以降、優先度を高める”次の打ち手”も浮き彫りになった(図7)。この状況をチャンスと捉え、他の企業に先んじて、”次の打ち手”に向けた取り組みを加速すべきである。

  • ※ 

    Chief Information Officer(CIO):最高情報責任者、情報システム統括役員

関連ページ

「新型コロナウイルス影響に関するCIO調査」を実施
https://www.nri.com/jp/news/info/cc/lst/2020/0604_1

ご参考

  • 【調査名】

    「新型コロナウイルス影響に関するCIO調査」

  • 【調査時期】

    2020年5月9日~19日

  • 【調査方法】

    Webによるアンケート

  • 【対象】

    国内企業のCIO

  • 【有効回答数】

    69社
    2019年度売上高
    1,000億円~3,000億円未満(7社)
    3,000億円~6,000億円未満(17社)
    6,000億円~1兆円未満(11社)
    1兆円以上(34社)

執筆者

塩田 郁実

ITマネジメントコンサルティング部

高木 大輔

ITマネジメントコンサルティング部

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