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NRI トップ 新型コロナウイルス対策緊急提言 デジタルケイパビリティ向上で生活・経済社会に新たな価値をもたらす新三位一体成長モデル創造を~新型コロナウイルス三位一体ショックから再興への処方箋(5)~

デジタルケイパビリティ向上で生活・経済社会に新たな価値をもたらす新三位一体成長モデル創造を
~新型コロナウイルス三位一体ショックから再興への処方箋(5)~

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2020/07/03

  • 今回のショックは、2020年5月1日の処方箋(1)で提言したように、従来の危機と異なり、三つの段階や区分ごとに生じるリスクが同時に一体となって多発する三位一体のショックとなっていて、各国や各地方自治体、各企業や各学校、各家庭や各個人など一体同時にリスクをもたらす。他方、未曽有のショックに対する各々の対応やその好事例は異なり、過去の常識からでは評価・活用が困難なため、デジタル技術を活用してデータ収集、分析し、官民・内外連携してリスク・マネジメントに活用しつつ、国や地域の持続可能な再興への方策を検討する際の手本として活用すべきである。
  • 今回同時に、生まれた時からITに囲まれたデジタルネイティブと呼ばれる若い世代を中心に、年齢層の高い経営陣・管理職が想定していた以上に従業員や顧客のデジタルケイパビリティが高いことに気づき、それら従業員体験、顧客体験(CX)をスマホの寵児であるGAFAはじめデジタルプラットフォーマーがいかに掌握・活用しているか実感したとの声が多く聞かれる。自社の身近な従業員や顧客の体験からデジタル変革(DX)のカギとして耳を傾け、テレワークなどデジタルを活用した新しい働き方、eラーニングなど新しい学び方、新しい衣食住ならぬ医食住が、今回の危機対応・再興のカギとなることに気づかれた経営陣・管理職、従業員・顧客、そして生活者も多いのではないか。
  • 今回の危機のリスクの根本原因等を捉え、弱みを強みに変えて再興する処方箋(5)として、デジタルケイパビリティ向上で生活・経済社会に新たな価値をもたらす新三位一体成長モデル創造を、生活者や企業家などからボトムアップ型のミクロ経済社会政策や経営戦略により、①設備投資・自給率向上、②需要創造・消費刺激、③新産業・輸出振興の三位一体で実施する方策を提言する。

新型コロナウイルスの三位一体ショック・リスクと日本再興へのカギ・チャンスとしての生活者・企業と社会のデジタルケイパビリティの向上

今回のショックは、2020年5月1日の処方箋(1)で提言したように、従来の危機と異なり、三つの段階や区分ごとに生じるリスクが同時に一体となって多発する三位一体のショックとなっているのが最大の特徴である。例えば、時間的に短期・中期・長期で生じるリスクが同時に起こり、ヒト・モノ・カネの区分間で行われる取引や最終的に三面等価となる生産、分配(所得)、支出のフローが同時に一体となって止まり、空間的に日本・先進国・途上国で同時にリスクが発生し、世界共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の経済・社会・環境(生物圏)にも同時に一体となってショックを与えている。

これらは、国際的にパワーバランスの変動などの地政学的変容をもたらすだけでなく、各国や各地方自治体、各企業や各学校、各家庭や各個人など一体同時にリスクをもたらす。他方、未曽有のショックに対する各々の対応やその好事例は異なり、過去の常識からでは評価・活用が困難なため、デジタル技術を活用してデータ収集、分析し、官民・内外連携してリスク・マネジメントに活用しつつ、国や地域の持続可能な再興への方策を検討する際の手本として活用すべきである。

国民のデジタルケイパビリティ向上、SDGsなど目指す健幸型社会創造、新たな経済循環実現による新三位一体成長モデル

今回の未曽有の三位一体ショックに対応される中での実体験として、生まれた時からITに囲まれたデジタルネイティブと呼ばれる若い世代を中心に、年齢層の高い経営陣・管理職が想定していた以上に従業員や顧客のデジタルケイパビリティが高いことに気づかれ、ステイホームで家族と一緒にいると、子どものいるご家庭では、お子さんがゲームだけでなく生活や学習・思考などにいかにデジタルを活用しているか感心された方も多いのではないか。会社で、それら従業員体験、顧客体験(CX)をスマホの寵児であるGAFAはじめデジタルプラットフォーマーがいかに掌握・活用しているかにも実感し、自社の身近な従業員や顧客の体験からデジタル変革(DX)のカギとして耳を傾け、従業員あるいは顧客のテレワークなどデジタルを活用した新しい働き方を模索したり、eラーニングなどデジタルを活用した新しい学び方が職場や学校・家庭で試行錯誤が行われたり、家庭や地域、SNSなど通じたコミュニティでデジタルを活用した新しい衣食住ならぬ医食住を始めた、もしくは始めた体験を聞かれたり、各人様々な体験をされている。しかも、こうした新しい生活者としての体験は、自身や家庭、自社だけでなく、日本全国、先進国、途上国が三位一体・同時に発生しており、こうした好体験に基づく社会全体のデジタルケイパビリティ向上の流れは、決して止まることはなく、コロナ危機前から続いている世界のデジタル変革(DX)の流れの中で、こうした従業員・顧客の生活者としての体験を経営の中心とし、外出自粛やロックダウンで出張や旅行など控えられた消費余力やデジタル体験にはもっと支払ってもいいと考える消費者余剰をいかにつかむかが今回の危機対応・再興のカギとなることに気づかれた経営陣・管理職、従業員・顧客、そして生活者も多いのではないか。

これらについて日米英欧アジア・アフリカからリモートで、今回の危機への対応と再興策を検討してきた「新型コロナウイルス三位一体ショック再興戦略研究会」として、持続可能な経済社会システム構築のための新三位一体成長モデルを提案する。

新三位一体成長モデルの主体は、その体験がデジタル変革(DX)のカギとなる従業員、顧客、そして生活者である。そして経営陣・管理職にとってもこれまで述べた自分事の体験や生活者としての体験こそが自社・自国再興に向けた宝箱、そしてそれを開けるカギだ。

今回のショックは、従来の危機と異なり、三つの段階や区分ごとに生じるリスクが同時に一体となって多発する三位一体のショックとなっているのが最大の特徴である。時間的に短期・中期・長期で、空間的に日本・先進国・途上国で同時にリスクが発生し、GIGAペイシェントからメディカルニューディール(緊急提言~処方箋(3))、GIGAステューデントからGIGAスクール(緊急提言~処方箋(4))など「社会インフラ(医療・教育)強化への挑戦」が出発点となり、医療の顧客であるペイシェント(患者)、従業員であるドクターやナースなど医療従事者の体験情報、スクール(学校・大学)の顧客であるステューデント(生徒・学生)、従業員である教職員・先生など教育関係者の体験情報こそが主人公となる。これらのデータ駆動型サービス創造として、メディカルニューディール(緊急提言~処方箋(3))、GIGAスクール(緊急提言~処方箋(4))として、国民全体のデジタルケイパビリティ向上、SDGsなど目指す健幸型社会創造、新たな経済循環モデルの実現からなる新三位一体成長モデルとなって日本の「V字回復」の可能性を生む。

今回のショックは、ヒト・モノ・カネの区分間で行われる取引や最終的に三面等価となる生産、分配(所得)、支出のフローが同時に一体となって止まり、金融システムというマクロ経済の心臓はなんとか動いているが、危機前から血の巡りの悪くなりがちだった末梢毛細血管、つまり地域の経済を支える最前線の中小・零細企業、個人事業主、フリーランスなどから、連鎖的に、少しずつ壊死が広がっていくのではないかという危険性があった。地産地消による地域・国内自給率の拡大など地域再興、日本再興に不可欠な取組みを試行錯誤する「企業インフラ拡充と新事業への挑戦」で実現し始めている好事例が生まれた。今回、各人が従業員・顧客体験の重要性、GAFAなどが自分たちを超えそれらをいかに掌握・活用しているかを実感し、自社の身近な従業員や顧客の体験からデジタル変革(DX)のカギとして耳を傾け、従業員あるいは顧客のテレワークなどデジタルを活用した新しい働き方を模索したり、eラーニングなどデジタルを活用した新しい学び方が職場や学校・家庭で試行錯誤が、家庭や地域、SNSなど通じたコミュニティでデジタルを活用した新しい衣食住ならぬ医食住を始めた、もしくは始めた体験を聞いたり、各人様々に体験した。日本や地域を再興する新三位一体成長モデル創造のカギは、これらの好体験やそれに基づく試行錯誤の好事例を、国・自治体も企業も国民も、邪魔せず支援することである。

今回のショックは、世界共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の経済・社会・環境(生物圏)にも同時に一体となってショックを与えており、これは2030年までの10年の中長期目標だが、時間的に短期・中期・長期で同時にリスクが発生しているため、まさに、今取り組むべき課題となっている。コロナ前からSDGsに向けた取組みを進めていた企業はコロナでのダメージが小さく、対応や回復・再興も早いとの報告もある。SDGsは持続可能な経済社会システム構築を目標とする新三位一体成長モデル創造にも共通言語となる。

新型コロナウイルス三位一体危機影響シミュレーション
~投資・消費・輸出の三位一体で実現するニューノーマル

以上の持続可能な経済社会システム構築を目標とする新三位一体成長モデル創造に向け、「新型コロナウイルス三位一体ショック再興戦略研究会」として、新型コロナウイルス三位一体危機影響シミュレーションを行った。以下説明するコロナ危機のいずれのシミュレーションにおいても、①国内投資、②国内消費、③それらによる輸出増加が経済等回復の三本柱であり、それぞれの刈り取るべきアップサイド余地の幅について試算を行った。

特に経済効果の高く、また一定の国内自給率を増加させる余地のあるセクター・テーマでの戦略が重要になる。

  • 本研究会の論点のうち「医食住」テーマ(緊急提言~処方箋(2))においては、医療現場でのIT化や個人情報基盤整備によるGIGAペイシェントの確立、またそれを通じた生活者の医療および健康消費の増加が期待される。また、メディカルニューディールである先端医療研究拠点と連動するデジタル&リアルな健幸社会経済システムの再構築(緊急提言~処方箋(3))が重要となる。特に、国内投資を通じて新たに生まれた市場を揺籃器として、輸出拡大に繋がることが将来に向けたV字回復に繋がると考える。
  • また、本研究会の論点における「教育・学び」においては、オンライン・リモート教育体制を整備するための基盤投資や、リカレント教育消費の促進、個人別の教育・学びログのトラック・レコード化等が検討できると考えられ、GIGAステューデントからGIGAスクールへ、デジタル&リアルな学びの社会経済システムの再構築(緊急提言~処方箋(4))が重要となる。

アフターコロナの経済回復シナリオは、以下の3段階のエンジンが重要となる

  • ① 

    1段目エンジン:設備投資・自給率UP

    これは国内自給率拡大のための設備投資である。消費者の新たな生活様式を支える産業形成のため、サプライチェーンを支える国内生産体制強化や、新たな企業・社会に対するデジタルインフラ強化を図り、国内産業の新成長を促進することが重要であり、2段目、3段目のエンジン点火においても重要なテーマとなる。

  • ② 

    2段目エンジン:需要創造・消費拡大

    これは、ニューノーマル環境に即した代替需要創造である。密回避、遠隔コミュニケーション、Withコロナ下によける重症化予防策等の新たな潜在需要を官民連携により掘り起こし、消費対象の減少(外食・旅行等)に替わる新たな消費者価値を創造することが求められよう。

  • ③ 

    3段目エンジン:新産業輸出拡大

    これは、ニューノーマル市場産業化モデルの輸出である。市場形成を実現した新たな消費者価値は、海外、特に新興国に対する社会システム・産業システムの輸出機会を増大させることになる。これは日本企業の新たな競争力の源泉として成長を加速させるためのエンジンとなる。

(1)国内GDPへの影響レベルを試算

当研究会において、コロナ危機による需要減少による経済的な影響と、サプライチェーン破綻がもたらす影響を試算し、最終的な国内総生産への影響を試算した。
なお、経済波及効果を計算する元データとして産業連関表を用いており、現時点では平成27年度版が最新版であるため、古いデータを用いていることに留意されたい。また、家計消費については2019年の総務省統計局家計調査を用いている。

まず、コロナ危機ショックの経済的な影響について、各セクターにおける減益状況について新聞及びWeb報道等から集め、そのマイナスの影響幅について、シミュレーション試算している。
計算方法は、平成27年産業連関表を元に、1.家計消費の減少、2.企業における設備投資需要の増減、3.企業における費用圧縮による需要減少幅をそれぞれ集計している。

  • 1. 

    家計消費の減少幅

    家計消費の減少幅については総額10.5兆円と計算している。主な大きな影響のあるセクター別の内訳の概算は、飲食サービス:約4兆円(20%減)、娯楽サービス:約1.7兆円(20%減)、宿泊業:約0.9兆円(25%減)、道路旅客輸送:約1兆円(50%減)、航空輸送:約0.9兆円(50%減)の消費需要減少幅となっている。

  • 2. 

    企業における設備投資需要の減少幅

    企業における設備投資需要の減少幅は総額で約10兆円と計算している。特に影響な大きなセクターでの設備上の減少幅は、住宅建築:約3.6兆円(23%減)、企業内研究開発:約1.3兆円(10%減)、非住宅建築:約2.2兆円(23%減)となる。

  • 3. 

    企業費用圧縮

    企業における費用圧縮による需要減少幅は、総額で約2.1兆円と集計されており、特に影響の大きなセクターについては、飲食サービス:約1.5兆円(20.0%減)、宿泊業:約5千億円(25.0%減)、娯楽サービス:約4千6百億円(20.0%減)、たばこ:約340億円(20.0%減)、酒類:約320億円(20.0%減)、道路旅客輸送:約202億円(25.0%減)となる。

    繰り返しとなるが、これらの試算におけるマイナス・インパクトについては、コロナ危機中に随時報道されている情報を基にしており、コロナ危機が長引くことより更なる影響がある場合は、それぞれの数字をアップデートする必要がある。

    また、需要減少による経済的な影響とは別で、サプライチェーン破綻により、生産・供給においてボトルネックが発生することで、最終需要を満たせなくなる需要減少幅を試算している。

  • 4. 

    サプライチェーン破綻

    国内消費支出や輸出等における、生産ボトルネックの影響は総額の試算は総額マイナス64兆円となる。
    セクター別に需要減少の影響とサプライチェーン破綻による需要充足力の低下の影響を比較して、最終的な国内GDPへの影響として集計を行っている。サプライチェーン破綻により影響が特に大きいセクターと影響幅は以下の通りとなる。石油製品:約4兆円、電子デバイス:約7兆円、非鉄金属製錬・精製:約1.5兆円、畜産食料品:約2.5兆円、脂肪族中間物・環式中間物・合成染料・有機顔料:約1.1兆円、その他の電子部品:約2.1兆円となる。

(2)コロナ危機による経済影響の計算結果

コロナ危機による経済的影響は、直接的な需要変動:マイナス11.1兆円、需要変動の企業に対する1次的な経済波及効果 :マイナス19.1兆円、企業業績悪化に伴う給与所得の減少とそれに伴う給与額変動:マイナス9.43兆円、2次的な経済波及効果、マイナス3.92兆円となり、コロナ危機におけるアフターコロナの最終的な結果としては、国内総生産の試算結果525兆円(GDP4.2%の減少)となる。
この場合、給与所得減少による失業者数は簡易的な集計とはなるが、約260万人に上ることが想定される。

また、経済活動の停滞による消費減少幅は、給与所得の減少による消費減少幅を超えており、そのため「行き場を失っている消費余力」が約5.5兆円も生まれている試算結果となった。次章以降では、下がったGDPを元の水準に戻すための経済回復・成長シナリオについて考察するが、消費、投資、輸出は経済回復・成長において重要な要素となるため、ここで試算された「消費余力」は、回復のための原資として重要となるだろう。

(3)コロナ危機からの回復・成長シナリオ

当研究会では、平成27年産業連関表の、取引基本表・雇用表・最終需要項目別輸入誘発係数を用いて、コロナ危機からの回復・成長シナリオについて計算を行っている。特に、自給率増加による国内消費の増加は、経済へのプラスの影響が大きいため、セクター別に自給率を算出し、自給率の増加余地が見込めるセクターを特定している。
当研究会の想定として、国内自給率について増加余地のあるセクターは、産業分類ベースで個別に抽出している。特にそのうち、20%以上の自給率増加が見込める分野を以下のとおりとしている。

【一定の自給率増加(20%以上)が見込めるセクターと平成27年度の自給率】

  • 織物製・ニット製衣服   

       25.2%

  • その他の製造工業製品   

       30.0%

  • 通信機器   

       41.9%

  • 医薬品   

       67.6%

  • 電子デバイス   

       47.9%

  • 電子計算機・同附属装置   

       31.0%

  • 非鉄金属製錬・精製   

       55.1%

  • 水産食料品   

       64.4%

  • 産業用電気機器   

       77.9%

  • 民生用電気機器   

       72.8%

これらの分野における消費強化・投資強化による自給率増加により、情報通信機器・電子部品・電気機械等の国内回帰・産業強化が重要であるとの試算結果となっている。
これにより、各セクター合計で25.6兆円の国内需要の拡大により、コロナ危機で失ったGDP水準を元の「ビフォー・コロナ」水準に戻すことができることが検証できている。
特に戻し幅が期待できるセクターは、織物製・ニット製衣服:2.3兆円(50%増)、医薬品:1.9兆円(20%増)産業用電気機器:1.3兆円(20%増)、その他の製造工業製品:1.3兆円(30%増)、電子デバイス:1.2兆円(20%増)、通信機器:1兆円(20%増)と想定している。

(4)輸出増加を組み合わせた回復・成長シナリオ

上記のシミュレーションは、国内自給率を高めのみでGDPを回復させるシナリオとなっている。仮に国内自給率を20%以上高めることが難しいと判断される場合は、経済回復・成長のためには消費及び投資よる内需拡大だけでなく、輸出の増加が重要となる。

平成27年 産業連関表ベースで、約84兆円となり、そのうち輸出を主なセクターにおいて一律で10%増加する場合は、輸出額が約8.4兆円の増加、20%増加する場合だと16.9兆円となる。
輸出を10%増加する場合は、上記のⅡ-1で示した主要なセクターにおいて、内需拡大幅は10%未満で、元のビフォー・コロナGDP水準を達成することができ、輸出増加幅として20%を見込む場合は、いくつかの内需拡大が用意な限られたセクターにおける5%の内需拡大で元のビフォー・コロナGDP水準を達成することが確認できている。

提言:デジタルケイパビリティ向上で生活・経済社会に新たな価値をもたらす新三位一体成長モデル創造を

今回のショックは、2020年5月1日の処方箋(1)で提言したように、従来の危機と異なり、三つの段階や区分ごとに生じるリスクが同時に一体となって多発する三位一体のショックとなっているのが最大の特徴だが、今回の未曽有の三位一体ショックに対応される中での実体験として、生まれた時からITに囲まれたデジタルネイティブと呼ばれる若い世代を中心に、年齢層の高い経営陣・管理職が想定していた以上に従業員や顧客のデジタルケイパビリティが高いことに気づき、それら従業員体験、顧客体験(CX)をスマホの寵児であるGAFAはじめデジタルプラットフォーマーがいかに掌握・活用しているか実感したとの声が多く聞かれる。自社の身近な従業員や顧客の体験からデジタル変革(DX)のカギとして耳を傾け、テレワークなどデジタルを活用した新しい働き方、eラーニングなど新しい学び方、新しい衣食住ならぬ医食住が、今回の危機対応・再興のカギとなることに気づかれた経営陣・管理職、従業員・顧客、そして生活者も多いのではないか。

ここで、持続可能な経済社会システム構築のための新三位一体成長モデルを提案したい。
新三位一体成長モデルの主体は、その体験がデジタル変革(DX)のカギとなる従業員、顧客、そして生活者である。そして経営陣・管理職にとってもこれまで述べた自分事の体験や生活者としての体験こそが自社・自国再興に向けた宝箱、そしてそれを開けるカギだ。これが、国民全体のデジタルケイパビリティ向上、SDGsなど目指す健幸型社会創造、新たな経済循環モデルの実現を導き、日本の「V字回復」の可能性を生む。日本や地域を再興する新三位一体成長モデル創造のカギは、これらの好体験やそれに基づく試行錯誤の好事例を、国・自治体も企業も国民も、邪魔せず支援することである。今回の危機は世界共通目標であるSDGs(持続可能な開発目標)の経済・社会・環境(生物圏)にも同時に一体となってショックを与えているが、コロナ前からSDGsに向けた取組みを進めていた企業はコロナでのダメージが小さく、対応や回復・再興も早いとの報告もあり、SDGsは持続可能な経済社会システム構築を目標とする新三位一体成長モデル創造にも共通言語となる。

新型コロナウイルス三位一体ショック再興戦略研究会

執筆者が英国ロンドンで王立国際問題研究所(チャタムハウス)客員研究員やG7、G20担当をした際にご縁のあった日本・先進国・途上国で活躍する有志がNRIにリモートで集い、「新型コロナウイルス三位一体ショック再興戦略研究会」で再興への処方箋を議論する中で、
漆間総合法律事務所副所長 吉澤尚氏
㈱チャレンジ&グロー代表取締役、中小企業診断士 小紫恵美子氏
慶應義塾大学大学院講師、JCI Senator 米倉ユウキ氏
シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 澁澤健氏
ワールド・ゴールド・カウンシル顧問 森田隆大氏
DANベンチャーキャピタルCEO 出縄良人氏
キャプラ・インベストメント・マネジメント共同創業者 浅井將雄氏
元リーマン・ブラザーズ証券の日本法人の代表清算人 冨川久代氏
ディブトン・グループCFO 松田淳氏
日本植物燃料CEO 合田真氏
法政大学教授 小黒一正氏
にご議論ご協力いただいた。
またシミュレーションでは、C2D代表の畔上靖氏、㈱みらい創造機構取締役の斎藤康平氏に多大なご協力をいただいた。
ここに謝辞を述べるとともに、引き続き、議論を続け各界への提言につなげていきたい。

執筆者

御友 重希

未来創発センター 制度戦略研究室

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株式会社野村総合研究所 未来創発センター
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