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ビッグデータ

匿名加工情報

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ビッグデータとは

「ビッグデータ」という言葉は、Googleトレンドでみると2011年頃から日本で浸透し始めています。すでに6年が経過したことになりますが、現在でも話題に上ることの多い言葉です。今回はこの「ビッグデータ」について、企業等における利活用を促すべく2017年初に示された政府指針を整理します。

ビッグデータにおける匿名加工情報とは

記憶媒体やソフトウェアなどのIT技術の進歩に伴い、従来に比べると大量のデータを効率的に集められるようになってきました。結果として、収集されるデータのボリュームはギガではなく、ペタ、エクサ等のレベルにまで拡大してきており、その大きさから「ビッグデータ」と呼ばれています。
しかしながら実際の活用にあたっては、単にデータの大きさ(量的側面)だけでなく、「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」として、どのようなデータから構成するか、あるいはそのデータをどのように利用するかという質的側面が重要です。例えば、クレジットカードの利用履歴やATMの日常的な利用位置情報などのデータも、人々の個別の行動把握のために解析することによって、金融機関の提供サービスなどの事業活動に活かすことができます。
このようなビッグデータの中には氏名などの個人情報を含むものが存在しますが、この個人情報を特定の個人を識別できないように加工したデータを「匿名加工情報」といいます。「匿名加工情報」は、2017年5月30日に全面施行される改正個人情報保護法により、一定のルールの下で本人の同意を得ることなく目的外利用や第三者提供が可能となります。これによって、事業者間におけるデータ取引やデータ連携を含むビッグデータの利活用が進み、新事業や新サービスの創出、ひいては、国民生活の利便性の向上につながることが期待されています。

企業のビッグデータ活用にむけた政府の動き

これまでは、個人情報の範囲および匿名加工の方法の解釈が曖昧であること、不正利用の懸念等があることから、企業内でデータの利用を躊躇し、有効に活用されていないケースが指摘されていました。政府はそのような実態を踏まえて、2017年2月・3月に2つの報告書を発表し、企業等がビッグデータ(匿名加工情報)を活用しやすくするための指針を示しました。

ビッグデータ(匿名加工情報)取り扱いに関する報告書

報告書名 匿名加工情報「パーソナルデータの利活用促進と消費者の信頼性確保の両立に向けて」 データ・人工知能(AI)の利活用促進による産業競争力強化の基盤となる知財システムの構築に向けて(報告書案)
概要 従来、ビッグデータの収集・分析を可能とし日本の新産業・新サービスの創出や社会的課題の解決に貢献することが期待される一方で、活用にあたり個人情報保護法及びプライバシーの観点からどのようにすれば適切な取扱いをできるのかが不明瞭であることから、パーソナルデータの利活用に躊躇することが指摘されていた。そのため個人情報及びプライバシーの保護を図りつつ、利活用を実現する環境整備を行うことが求められた。2017年5月30日に全面施行される改正個人情報保護法では、個人を特定できなくした「匿名加工情報」は一定の要件を満たせば、本人から同意を得なくても企業間で自由に売買できるようになる。その加工基準に一定のルールを義務付ける報告書が個人情報保護委員会によってまとめられた。 データ利活用のための技術的及び法的な環境が一定程度整う一方で、知財制度上の課題を含む様々な課題があることから利活用が進んでいないと考えられる。データが最大限利活用され、幅広い産業において付加価値が創出され、産業競争力強化が図られるには、その基盤となる知財制度上の在り方について、著作権・産業財産権・その他の知的財産全てを視野に入れて検討することが必要である。そうした問題意識から、既存の知的財産権の保護対象とされない「価値あるデータ」の保護・利用促進を図る報告書(案)が「知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会、新たな情報財検討委員会」によってまとめられ、2017年3月13日に提言された。
指針によって想定される活用例 ・指針にそって個人を特定できないようにデータを十分に加工すれば、本人の同意がなくても企業間で自由にビッグデータを売買できるようになる
・今回の指針では、氏名、電話番号、住所等を削除することにより個人が特定できないように加工する共通ルールと、5つの事例(自動車の走行データ、クレジットカードの購買情報、レジのPOSデータ、交通系ICの乗降履歴、電気のスマートメーター)について具体的に個人情報の加工方法が示された
・企業は、データを商品開発や市場調査に活用することが可能
・指針の水準に達しない加工方法でデータを転売した企業は、個人情報保護委員会より企業名を公表したうえで指導をうけ、再発防止策の提出が必要
・自動車の走行記録や携帯電話の位置情報などのビッグデータ(※)を知的財産として保護、企業などが集めたデータを登録する制度をつくり、不正利用を差し止められるようにする方針を発表

※保護するのは収集や蓄積、保管に一定の投資や労力が必要で、事業活動上の利益を生む「価値あるデータ」で個人情報を含まないもの。ただし個人が特定できないように加工したデータは対象

・データや利用条件を登録制とし、第三者に周知できる仕組みを作成
・企業などは提携先にビッグデータ利用を許諾したり、不正利用された場合に差し止めを請求したりできるようになる
出所

個人情報保護委員会事務局2017年2月
匿名加工情報「パーソナルデータの利活用促進と消費者の信頼性確保の両立に向けて」

知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会、新たな情報財検討委員会 平成29年3月
「新たな情報財検討委員会報告書-データ・人工知能(AI)の利活用促進による産業競争力強化の基盤となる知財システムの構築に向けて-」

いずれの報告書も、安全性を確保しつつデータの積極的な利活用の推進に寄与することが期待されています。このような政府の指針の後押しをうけて、企業等がさまざまなビッグデータを公開・入手できるようになれば、他社との差別化や事業機会拡大を目指して確度の高いデータを導き出し、意思決定を迅速化することができるでしょう。昨今話題のディープラーニングを搭載した人工知能(AI)も、こういった解析への活用が期待されています。今後さらにビッグデータの内容が充実してくれば、企業等はその活用に向けてより一層「データを見る目」を養うことが求められます。

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