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フェア・ディスクロージャー・ルール

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フェア・ディスクロージャー・ルールとは

2017年5月に成立した金融商品取引法改正により、日本にも「フェア・ディスクロージャー・ルール」が導入され、2018年4月に施行されました。

フェア・ディスクロージャー・ルールとは、上場企業などの有価証券の発行者が、株価に影響を及ぼすような未公表の重要な情報を公表前に特定の第三者に提供することを原則として禁じるルールです。

近年、上場企業が証券会社のアナリストに未公表の業績に関する情報を提供し、当該証券会社が当該情報を顧客に提供して株式の売買の勧誘を行っていた事例が複数発覚しています。これを受けて、欧米やアジアの主要市場で既に導入済みである同ルールの日本への適用を検討すべく、2016年10月に金融審議会市場ワーキング・グループ「フェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース」が設置されました。その後検討が進められ、2016年12月には報告書提示(※)、2017年3月に法案を国会に提出、5月に法律を成立するに至りました。

フェア・ディスクロージャー・ルールの規制対象となる情報の範囲について、「上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼすもの(インサイダー取引規制における重要事実に該当する情報以外の情報のうち、発行者または金融商品に関係する未公表の確定的な情報であって、公表されれば発行者の有価証券の価額に重要な影響を及ぼす蓋然性があるものを含む)」とされています。

※フェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース報告~投資家への公平・適時な情報開示の確保のために~
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20161222-1.html

ご参考:欧米のフェア・ディスクロージャー・ルール

  • 米国
    「有価証券の発行者が、当該発行者又は当該有価証券に関する重要かつ未公表の情報を特定の情報受領者に対して伝達する場合、意図的な伝達の場合は同時に、意図的でない伝達の場合は速やかに、当該情報を公表しなければならない」というルールが置かれている。
    「重要な情報」及び「発行者に直接関係する内部情報」:米国証券取引委員会(SEC)のガイダンスによれば、「重要」とは、「合理的な株主が投資判断に際して重要と考える相当の蓋然性があること」とされている。
  • 欧州(EU)
    発行者は、発行者に直接関係する内部情報をできる限り速やかに公衆に開示しなければならない」という原則規定を置くとともに、有価証券の発行者が、内部情報を第三者に開示する場合について、米国と同様のルールが置かれている。EUの市場阻害行為規則によれば、「発行者に直接関係する内部情報」とは、「発行者又は金融商品に直接又は間接に関係する未公表の確定的(precise nature)な情報であって、公表されれば金融商品の価額に重要(significant)な影響を及ぼす蓋然性があるもの」とされている。

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20161222-1/03.pdf より

有価証券発行者(上場会社)側の対応

フェア・ディスクロージャー・ルールが施行されると、上場企業は未公表の決算情報などの重要な情報を証券アナリストなどに提供した場合、速やかに他の投資家にも公平に情報提供することが求められるようになります。上場企業は対応にあたって、まずは法律の中に定められている「上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの」という情報は何かを定義し(※1)、情報の適切な管理および開示のルールを整備、明確化する必要があります。

これまで特定の投資家やアナリストに選択的に伝わっていたような情報も、迅速に一般に伝えていかなくてはなりません(※2)。情報開示にはインターネット(ホームページ等)の活用も認められており、情報開示のタイミングを公平にするといった活動が各社に求められます。

フェア・ディスクロージャー・ルールは、全ての投資家が安心して取引できる市場環境を整えること、「早耳情報」に基づく短期的な売買ではなく、公平に開示された情報に基づく中長期的な視点に立った投資を促すことを目的としています。

日本では国民の安定的な資産形成の促進に向け、「貯蓄から資産形成へ」というスローガンのもと、NISA・ジュニアNISA・iDeCo・積立NISAといった制度の拡充が進んでいます。こういった制度とフェア・ディスクロージャー・ルールによって有価証券投資への関心が高まり、さらに投資家の裾野が広がることが期待されています。

※1 タスクフォースでは「発行者と投資家の対話の中で何が重要な情報であるかについて、プラクティスを積み上げることができるようにすることが望ましい」と記載されている。
http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20161222-1/03.pdf
※2 情報受領者が上場会社等に対して守秘義務及び投資判断に利用しない義務を負う場合、当該情報の公表は不要。

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