経験曲線とは
累積生産量が増加するに従って、単位コストが減少するという経験法則を示した曲線のこと。
製品の累積生産量が増加するに従って、単位当たりの総コストが一定割合で減少することが経験的に知られており、この関係を表した曲線のことを経験曲線といいます。
累積生産量の増加に伴う単位当たり生産コストの減少は、1920年代の米国航空機業界において学習曲線効果として発見されました。その後、1960年代にボストン・コンサルティング・グループがこれを総コストにまで拡張して経験曲線効果と呼び、PPMにおける市場占有率と関連づけて事業戦略の優位性を説明するツールとして新たに提唱しました。
この経験曲線効果は、生産規模の増加によって単位当たりの固定費が軽減される規模の経済と合わせて、コスト競争力の源泉とされています。
将来コストの予測も可能
経験曲線は経験則のため、その発生メカニズムは十分明らかにはなっていませんが、繰り返し学習による能率向上が要因の1つとされています。
そのため、労働集約的な産業でより有効とされ、こうした産業での先行した事業開始や低コスト戦略によるシェア拡大の優位性を説明するために用いられてきました。
例えば、米国のある電気機器会社は新製品の製造・販売に際し、累積生産量を早期に増やすための積極的な設備投資を行った上で、予想される累積生産量から経験曲線に基づいて将来コストを予測、初期投資による赤字を顧みない低価格設定によって高シェア獲得に成功しています。
効果は製品や業界、環境次第
しかし、こうした低コスト戦略が常に有効というわけではありません。
例えば、製品や生産工程の技術革新が著しい業界では、その刷新のたびに新たな経験曲線が創出され、過去の経験は無意味になります。また、大量生産は環境変化によって過剰在庫につながる恐れもあります。
したがって、経験曲線効果に基づく戦略策定では、こうしたリスクまで十分考慮しておくことが必要といえます。