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自動発注

Auto replenishment

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自動発注とは

流通小売業界において、仕入先に対して必要な商品を発注する業務を、発注業務と呼びます。発注業務は極めて重要な業務であり、これまでは人間の手によって行われることが一般的でした。「自動発注」とは、データサイエンス技術を用いて、人間の代わりにこの発注業務を自動化することを指します。

発注業務を自動化しようという取り組みは、POSシステムが一般的となった20年以上前から行われてきており、既に一定の成果を上げている企業もあります。これまでの自動発注は、販売数が安定的に推移する業態では適用できるものの、販促や気温変化などで需要が大きく変わる業態においては適用が難しいとう課題がありました。近年、データサイエンス技術の発展と共に、需要の変化を正確に予測できるようになったことで、急速に実用化が進んできています。

需要予測の算出

需要の変化を予測する上で重要となるのは「インプットデータ」と「モデリング手法」です。

インプットデータ

需要予測をする上では、需要に影響する因子情報を収集することが有効です。内部データに加えて、近年では、様々な外部データも低コストで取得できるようになっています。

需要予測で用いられるインプットデータの例

種類 データの名前
内部データ 販売実績情報
商品属性情報
購買情報
販促情報
外部データ カレンダー情報
天気実績情報
天気予報情報
地域イベント情報

モデリング手法

需要予測を適切に算出するためには、様々な手法があります。従来からある統計的手法に加え、近年では機械学習技術を用いた手法も用いられるようになってきています。

需要予測で用いられるモデリング手法の例

種類 手法の名前
統計的手法 移動平均法
指数平滑法
自己回帰法(AR)
自己回帰移動平均法(ARMA)
ARIMA
状態空間モデル
機械学習手法 Prophet
Neural-Prophet
DeepAR
Transformer
XGBoost / LightGBM

最終的な需要予測モデルは、これらの「インプットデータ」と「モデリング手法」を組み合わせて構築します。しかし、やみくもにデータを増やして、様々な手法を試しても期待したとおりに精度が高まらないことがあります。データサイエンスの世界では「Garbage In, Garbage Out.」などと呼ばれますが、これは因果の無いデータ(ゴミデータ=Garbage)を入れても、精度が上がらない(ゴミしか出てこない)ことを指します。需要予測の対象によって、どの手法が最も精度が高くなるかは試行錯誤が必要です。データの追加やモデリング手法の選定、組み合わせなど、実際のデータを用いて試行錯誤を繰り返して検証する必要があります。

需要予測と安全在庫

自動発注を行う上では、「需要予測」と「安全在庫」の2つの要素を考える必要があります。需要予測数が正しければ適切な発注ができるかというと、必ずしもそうではありません。例えば、需要予測数と同数だけ発注した場合、少しでも需要予測数よりも多く販売されたりすると、欠品が発生し機会損失となります。そのため、「安全在庫」と呼ばれる数量を追加で発注する必要があります。これを式で表すと以下のようになります。

発注数 = 需要予測数 + 安全在庫数 - (現在庫数)

安全在庫の算出

安全在庫を適切に算出するためには、需要予測数を「点推定」ではなく「分布推定」で行う必要があります。点推定とは、例えば明日の需要は「3個」であると1つの答えを予想するものです。これに対し分布推定とは、明日の需要が「1個の確率が10%、2個の確率が20%、3個の確率が40%、4個の確率が30%」などと、複数の場合の確率を予測するものです。安全在庫は、分布推定を行った上で、欠品率が業務上許容される水準以下になる数として算出できます。
安全在庫を求める有名な手法として、過去実績における標準偏差と正規分布の仮定に基づく以下の計算式があります。

安全在庫数=安全係数(*)×販売数のバラつき(標準偏差)×リードタイム(**)の平方根

(*)安全係数は、許容欠品率から算出でき、具体的には以下のような値になります。

欠品許容率 安全係数
0.1% 3.10
1.0% 2.33
5.0% 1.65

(**)ここでは「発注リードタイム」と「発注間隔」の合計を「リードタイム」とします。 ただし、上記の計算式が適用できるのは、妥当な標準偏差を推定でき、かつ分布形状が正規分布の場合に限られます。業態によっては、この仮定が成立しない場合も多いため、この場合は、業態ごとに適切な分布推定ができるようモデルをカスタマイズすることで、より高い精度が期待できるようになります。

さらなる精度向上に向けて

これから進む取り組みとしては「非構造化データ」の活用が考えられます。「非構造化データ」とは、商品画像、動画、消費者アンケート、SNS情報などといった、そのままでは需要予測モデルに当てはめられないけれども、需要に影響を与える要素です。これらのデータはそのまま使用することはできないため、入力データとして抽出するための工夫が必要となります。適切な形でインプットデータとして活用できれば、これまで捉えきれなかった要因を捉えた予測ができるようになり、ますます予測精度が高まっていくと期待できます。

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