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スクラム

Scrum

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スクラムとは

スクラムとは、世界で最も採用されているアジャイル開発プラクティスです。
「複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、人々、チーム、組織が価値を生み出すための軽量級フレームワークである。」と定義されています。スクラムはガイドブックがシンプルであるため理解が容易な一方で、逆に具体的な手法が詳細に定められておらず、常に変化に適応していくことを前提としたルールであるため、習得は困難だとも言われています。開発対象プロダクトや状況に応じて、チームごとに様々な形で活用されています。

なぜスクラムを使うか

数あるアジャイル開発のプラクティス・フレームのうち、スクラムを使うメリットとして考えられるのは次の3つです。

  •   

    シンプルである
    スクラムのルールブックであるスクラムガイドは20ページ程度のボリュームであり、非常にシンプルです。そのため、理解しやすく、自らの状況やプロダクトに応じてアレンジしやすいと言えます。

  •   

    デファクトスタンダードとなっている
    世界で最も採用されているアジャイル開発プラクティスです。そのため、世の中に情報や事例が多く存在し、書籍やインターネットでの情報収集もしやすい状況となっています。

  •   

    大規模アジャイルフレームのベースである
    代表的な大規模アジャイルである、Scrum@Scale、LeSS、SAFeはいずれもスクラムをベースにしているフレームワークになります。そのため、今後、大規模アジャイルの実施も視野に入れているのであれば、スクラムを使いこなせていた方が学習コストが低く済むことになります。

スクラムを支える考え方

スクラムを支える考え方は、経験主義と、リーン思考に基づいています。経験主義とは、知識は経験から生まれるものであり、観察に基づき意思決定するという考え方です。リーン思考とは、無駄を省いて本質に集中するという考え方です。
この2つの考え方を踏まえて、透明性、検査、適応という「スクラムの3本柱」と、確約、勇気、尊敬、公開、集中という「スクラムの5つの価値基準」が定義されています。

スクラムの3本柱

「透明性」「検査」「適応」という3本柱を実現できるようにスクラムは設計されています。

透明性の柱では、プロセスや作業を作業をする人と受け取る人の双方に見えるようにすることが言及されています。透明性の低い作成物はプロダクトの価値を低下させ、リスクを高める意思決定につながる可能性あります。透明性があることで検査が意味を帯びてきます。
検査の柱では、望ましくない変化や問題に気づくために作成物や進捗状況は頻繁かつ熱心に検査する必要性が言及されています。検査によって適応が可能となります。
適応の柱では、プロセスのどこかが許容範囲を逸脱する状況であったり、プロダクトが受け入れられない場合、それ以上良くない方向に進まないように、出来るだけ早く、プロセスやプロダクトの軌道修正を図ることが言及されています。

スクラムの5つの価値基準

スクラムの5つの価値基準は、「確約」「勇気」「尊敬」「公開」「集中」です。

確約とは、「スクラムチームは、ゴールを達成し、お互いにサポートすることを確約する」こと。
勇気とは、「スクラムチームのメンバーは、正しいことをする勇気や困難な問題に取り組む勇気を持つ」こと。
尊敬とは、「スクラムチームのメンバーは、お互いに能力のある独立した個人として尊敬し、一緒に働く人たちからも同じように尊敬される」こと。
公開とは、「スクラムチームとステークホルダーは、作業や課題を公開する。」こと。
集中とは、「スクラムチームは、ゴールに向けて可能な限り進捗できるように、スプリントの作業に集中する。」こと。

スクラムの成否は、これら5つの価値基準を実践できているかに依存します。

図)野村総合研究所作成

スクラムの開発体制

スクラムの開発体制は、プロダクトオーナー(PO)、開発者、スクラムマスターという3つの役割を擁する「スクラムチーム」を基本単位としています。

スクラムチーム

スクラムの基本単位はスクラムチームという小さなチームとなります。スクラムチームは機能横断型かつ自己管理型の組織です。
機能横断型とは、価値を生み出すために必要なスキルをチームとしてすべて備えていることを指します。自己管理型とは、誰が、何を、いつ、どのように実施するかはスクラムチームにて決定されることを指します。
スクラムチームの構成は原則として、「プロダクトオーナー」1人、「スクラムマスター」1人、「開発者」複数人となります。

プロダクトオーナー(PO)

プロダクトオーナー(PO)にはゴールを明確にするとともに、変化するゴールを補足しつづけることが求められます。POは、効果的なプロダクトバックログ(後述)の管理に責任を持ちます。
例えば、以下のような動きを通してプロダクトバックログを管理します。

  • プロダクトで達成したいことや、そのために実現したいことを記載し、意図や内容を関係者に明確に伝える。
  • 実現したいことを優先順位順に並べる。
  • 環境変化やユーザ・ステークホルダーのフィードバックを元に、常にこの優先順位を入れ替える。
  • これを関係者の誰が見ても分かるような表現にして共有する。
    また、スクラムチームから生み出されるプロダクトへの投資対効果を最大化することが求められます。

開発者

開発者には、POが明確にしたゴールに向けてプロダクトをデリバリーすることが求められます。開発者は以下を実施することの結果に責任を持ちます。

  • スプリントの計画を作成する。
  • 完成の定義(完了の定義とも。プロダクトがリリース可能な状態になるために実施しなければいけないことの一覧)を忠実に守ることにより品質を作り込む。
  • スプリントのゴールに向けて毎日計画を適応させる。
  • 専門家としてお互いに責任を持つ。
  • 日々、改善を行い、生産性を向上させる。

開発者チームは、メンバーごとの明示的な役割を定義せず、上下関係はなくフラットで、3~7人程度で組成されることが多いです。

スクラムマスター

スクラムマスターは、POが明確にしたゴールに至るまでの障害を取り除くことが求められます。スクラムマスターは、スクラムを理解して、関係者にも理解・実践できるようにすることに責任を持ちます。また、スクラムチームの継続的な改善を支援することに責任を持ちます。
スクラムマスターは、必要不可欠であるものの、抽象的な役割が多いです。スクラムチームのためになることであれば、なんでも支援する役割と言えます。

スクラムのイベントと作成物

スクラムでは、「スプリント」「スプリントプランニング」「デイリースクラム」「スプリントレビュー」「スプリントレトロスペクティブ(振り返り)」の5つのイベントが定義されています。
そして、それらの一つないしは複数を通じて、「プロダクトバックログ」、「スプリントバックログ」、「インクリメント」の3つの作成物を生成します。

5つのイベント

スクラムでは、「スプリント」「スプリントプランニング」「デイリースクラム」「スプリントレビュー」「スプリントレトロスペクティブ(振り返り)」5つのイベントが定義されています。

スプリント

スプリントは、定義の上ではイベントであるものの、他の4つのイベントと開発を含んだ全体のサイクルを指します。その長さは、基本的には、1カ月以内とされており、チームによってその期間は様々です。

スプリントプランニング

スプリントプランニングはスプリントの起点となります。
例えば、当該スプリントで開発するプロダクトバックログの項目を選択したり、その項目をタスクに分解してスプリントバックログを作成したりする手順を経て、開発者が実施すべきタスクを明確にします。

デイリースクラム

チームメンバーがお互いの状況や課題を把握すること等を目的に、毎日、同刻・同所、最長15分で、進捗や問題を確認します。デイリースクラムにより、コミュニケーションを活性化し、障害物の特定と、迅速な意思決定を促進します。

スプリントレビュー

ステークホルダーからフィードバックや協力を引き出すことを目的に、ステークホルダーに対して、当該スプリントの成果のデモを実施します。

スプリントレトロスペクティブ(振り返り)

いわゆる振り返りのことです。品質と効果を高める方法を計画するために、人、コミュニケーション、プロセス、ツール、完成の定義等の観点から、スプリントを振り返ります。 スプリント中にどのような問題が発生したかを特定し、その原因を探求し、解決のためのアクションを検討します。

3つの作成物

スクラムでは「プロダクトバックログ」、「スプリントバックログ」、「インクリメント」の3つの作成物が定義されています。

プロダクトバックログ

プロダクトに必要なものを優先順に並べた一覧です。
POが優先順位を決める動的な一覧であり、ユーザのフィードバック、環境変化、技術進歩等を受けて、常に更新します。

スプリントバックログ

プロダクトバックログを開発者が実施出来るタスクの粒度にまで落とし込んだものです。開発者による、開発者のための計画であり、スプリントのゴールを達成するために、開発者が当該スプリントで行う作業がリアルタイムに反映されます。デイリースクラムで進捗が検査できる程度(1日以下)の粒度が必要となります。

インクリメント

プロダクトバックログの項目をもとに作られる各作成物です。スプリントでは、複数のインクリメントを作ることができ、インクリメントをまとめたものをスプリントレビューで提示することになります。

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