ソーシャル・マーケティングとは
マーケティングの考え方を社会全体の利益向上を追求するために適用すること。 非営利組織への導入も徐々に進みつつある。
ソーシャル・マーケティングという言葉には、大きく2つの内容が含まれています。1つは、従来のマーケティングの発想を行政機関の運営や社会変革などに活用しようとするものです。
もう1つは、企業が自社の利益や顧客だけを考えずに、社会全体の利益や福祉向上を意識して活動するという考え方であり、「社会公共志向」のマーケティングとも呼ばれます。
非営利組織へマーケティング概念を導入
政府や地方自治体などの行政機関や学校、病院などの非営利組織に、マーケティングの考え方を導入しようとする動きが進んでいます。非営利組織の目的は社会全体の利益向上であり、その実現のためには生活者のニーズを把握して的確なサービスを提供する必要があります。
非営利組織と企業とは目標が異なるため、従来のマーケティング手法がそのまま適用できるわけではありませんが、行政サービスの質の向上や効率化などの面で効果が期待されています。また、薬物乱用防止、児童虐待防止などの社会的キャンペーンの効果を上げるための技法としての期待も高まっています。
企業の社会的責任を意識する
ソーシャル・マーケティングの発端は、1960年代に米国で生じたコンシューマリズム(消費者運動)といわれています。昨今の企業の社会的責任(CSR)に対する関心の高まりとともに注目を浴びています。
「社会公共志向」のマーケティングは、従来の「企業と消費者(顧客)」の二者間に、社会、生活者という視点が加わっているのが特徴です。消費者の利便性だけを追求する「顧客志向」のマーケティングでは、商品の大量消費によって結果的に環境汚染を進行させたり、地域社会とのトラブルを誘発する可能性があります。そこで、企業活動が社会に大きな影響を与えるという視点の下、社会全体に有益な(悪い影響を与えない)商品・サービスを提供すべきとの考え方が広がってきました。
CSRやコーポレート・ブランドへの注目はますます高まる傾向にある中で、いかに多くのソーシャル・マーケティングの成功事例をつくり出せるかが企業戦略上の重要な課題となるでしょう。