CONTENTS
- 医療費適正化に向けた課題と新たな打ち手
- 医療健康関連データの活用価値と普及の方向性
- 医療オンデマンドサービスがもたらす医療提供形態の多様化と将来価値
- モバイルヘルスサービスの促進と日本の医療の将来像
要約
- 日本の医療費は、2025年には54兆円まで膨らむと懸念されている。政府は、医療費適正化方針の下、入院医療費や薬剤費の縮小に注力しているが、従来の取り組みだけでは目標達成は難しい。健康や医療に対する国民の行動変容を促すものとして、利用者に身近な携帯通信端末や医療機器を用いた医療健康サービス「モバイルヘルスサービス」の活用が注目されている。
- モバイルヘルスサービスの一つに、医療健康関連データ(PHR)を蓄積・管理し、健康維持・増進や疾病予防を行うサービスがある。日本でも直近の成長戦略である「未来投資戦略2017」の中で最適なPHRの活用に向けた基盤整備に言及しており、2020年度からの本格稼働に向けて計画が推進されている。先行する米国に類似したサービスが日本でも提供されつつあるが、その利用率は国民の約2%程度にとどまる。本稿では、諸外国の事例を分析しつつ、ステークホルダーの視点で日本での普及課題を整理する。
- 新たな医療提供形態として、ビデオチャットなどを用いて必要なときにその場で医師との相談や診療を受けられる医療オンデマンドサービスも関心を集めている。米国や英国では利活用による医療費削減効果も提示されている。日本での類似サービスと比べながら、野村総合研究所(NRI)独自の視点で、医療オンデマンドサービスの利用促進によってもたらされる医療費適正化効果を推計するとともに、普及に向けた課題を述べる。
- PHRと医療オンデマンドサービスの現状から、モバイルヘルスサービスの利活用および普及に向けた根本要因を分析し、ステークホルダーの立場に応じて、どのようなインセンティブが必要か、日本の医療的成果に貢献する一つの医療インフラとして定着させるための方策を提唱する。
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