ビジネスの世界において、現在のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の、大波ともいえる盛り上がりの発端はどこだったのか。さまざまな見方があるが、Windows95が登場し、インターネットやPCが企業でも利用され始めた1990年代後半から、「ITバブル崩壊」と呼ばれた2001年から02年頃ではないだろうか。
その直後、「ITは既にコモディティ化しており、企業の競争優位や差別化の源泉にはならない」という主張を、ニコラス・G・カーが『Harvard Business Review』2003年5 月号に「IT Doesn’t Matter」というタイトルで寄稿した論文が大きな反響を呼び、00年代半ばから、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)を代表とするいわゆる「ネット企業」が企業価値を高め続ける間も、多くの伝統的大企業にとってのITは、社員が業務で使う「効率化の道具」の域を超えてこなかった。
しかし、この数年、BtoCビジネスの世界においては、「デス・バイ・アマゾン」といわれる中、小売業を中心に伝統的大企業も生き残りをかけたデジタル投資を始めている。
さらに、野村総合研究所(NRI)とJUAS(日本情報システムユーザー協会)による「デジタル化の取り組みに関する調査」の2018年度調査結果では、「デジタル化の進展は貴社の既存ビジネスの優位性、永続性にどの程度影響を与えると考えていますか」という設問に対し、素材製造業の46.7%が、「既に影響が出ている」もしくは「破壊的な影響をもたらす可能性がある」と回答している。
デジタル化の発端といえる1990年代後半から約20年を経てようやく、BtoBビジネスの領域にまでITの波がたどりつき、従来の企業間取引のあり方にも影響を及ぼし始めている。
本特集では、第一論考「企業を跨いだ顧客理解と信頼構築に向けて」において、企業間の接点がデジタル化するのに伴い、デジタルテクノロジーを活用してどのように顧客理解を深め、信頼を獲得するのかを考察する。
第二論考「デジタルトランスフォーメーションによるエコシステムビジネスの展開」では、企業を跨るバリューチェーンを通じた価値提供が、ITを活用した「エコシステム」という概念でどのように変化するのかを考察する。
これらの論考の前段として、本稿では、日本における企業間取引の特徴を振り返り、その特徴が現在のデジタル化時代にもたらす課題を考察する。
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