CONTENTS

Ⅰ これからの水資源需要に対応する上下水道のあり方
Ⅱ 施策①:水インフラ管理の地理的・領域的拡大
Ⅲ 施策②:水インフラに対する消費者の価値認識醸成
Ⅳ おわりに

要約

  1. 日本の上下水道インフラ(水インフラ)は、老朽化対策、人材確保といった供給面の課題に加え、第二論考で言及した極端な水需要偏在への対応といった需要面の課題も抱えている。国土交通省はこうした状況に対し、群マネによる広域化や、ウォーターPPPによる民間投資の呼び込みを推進している。これらの取り組みをさらに加速させるために、水インフラが担う機能のさらなる拡大や、「儲かる事業」への転換が喫緊の課題として残っている。本論考では、これらの課題に対する施策として2つの提言を行う。
  2. 第一の提言は、水インフラの取り扱いを地理的・領域的に拡大することである。地理的拡大では、従来の群マネによる施設の集約化に加え、運搬送水や分散型水処理システムの導入を取り入れた「集約化・分散化ハイブリッド型運営」が求められる。領域的拡大では、単なるマネジメントの一体化にとどまらず、農業、廃棄物分野などとの機能連携を強化し、水インフラの多機能化を図る。さらに、医療、観光、教育、デジタル経済といった領域との連携を通じて、「水価値共創エコシステム」の形成を目指す。
  3. 第二の提言は、消費者の水インフラに対する価値認識を醸成し、対価の支払いを円滑にする仕組みを導入することである。現状、水道料金に対する受容性は低く、水インフラの高品質なサービスに対する価値認識が不足している。この問題に対し、行政は施設単位および地域単位での水インフラの役割やコスト構造を可視化し、双方向の情報発信を強化すべきである。また、民間企業や地域主体は、水使用量削減や環境配慮行動に対するインセンティブ設計や、市民参加型ファンドの組成を通じて、消費者の参画を促し、持続可能な事業運営を支える新たな収益モデルを構築する必要がある。

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    中口 幸太
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    エネルギー産業コンサルティング部
    シニアコンサルタント
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    由藤 聖利香
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    エネルギー産業コンサルティング部
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