2014年1月に、ドイツで国家戦略として取り組まれている「インダストリー4.0」のインパクトについて日本の経営者の方々にお話しする機会があった。この時は、最新のデジタル技術を活用した事業(デジタル事業)の取り組みに大きな関心を示した企業はごくわずかだった。ところが2016年ごろから、ビッグデータ、人工知能(AI)、IoT/M2M、Industrial Internet、Connected Industries、FinTechといったキーワードが経営者の口からもさかんに聞かれるようになった。これはデジタル事業への関心が急速に高まってきたことをうかがわせる。しかしその一方で、デジタル事業の具体的な取り組みはあまり進んでいないという現実がある。これにはデジタル事業に特有の事情がある。
まず、デジタル事業への投資の意思決定が難しいという点である。デジタル事業のヒントは顧客や現場の中にあることが多いため、社内からは具体的なアイデアや提案がなかなか出てこない。たとえそれらが上がってきても、従来の事業とは異なるために経営判断が難しくなりがちである。もう1つは、既存の事業部門をうまく巻き込むことが難しいという問題である。デジタル事業の推進を担う戦略組織をつくったとしても、既存の事業部門の協力を得られずに孤立してしまうケースが少なくないというのが実態である。
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