2020年12月11日(金)金融庁よりマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)に関するガイドラインの改正案が発表されました。2019年4月改訂版(現行版)と比較して59箇所が改訂(番号のみの変更を除く)されていますが、以下の2つのメッセージに集約できると考えます。
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経営陣に対する責任の明確化
「経営陣の主導的な関与」もしくは「経営陣が主導性を発揮」という表現を用いて、現行版よりも経営陣に対して一歩踏み込んだ形で責任を求めています。
これはAML/CFT規制にて先行する他法域において役職者個人に対する責任追及の潮流を汲んだものと考えられます。
また方針・手続・計画の策定時に留まらず、見直しや高度化においても経営陣の参画を促す内容となっており、改めて経営陣にAML/CFTを全社課題と捉えて対策を行う必要性を迫るメッセージと考えます。項番 変更点 I-1 経営陣が主導的に関与して地域・部門横断的なガバナンスを確立した上で、同ガバナンスの下、関係部署が継続的に取組みを進める必要がある I-2(2) 経営陣が、管理のためのガバナンス確立等について主導性を発揮するなど、マネロン・テロ資金供与対策に関与することが不可欠である II-2(1) 経営陣が、主導性を発揮して関係する全ての部門の連携・協働を確保する必要がある II-2(1)⑤ 経営陣が、主導性を発揮して関係する全ての部門の連携・協働を確保した上で、リスクの包括的かつ具体的な検証を行う III-2 金融機関等の経営陣においては、自らのマネロン・テロ資金供与対策に主導的に関与し、対応の高度化を推進していく必要がある III-2⑥ マネロン・テロ資金供与対策の方針・手続・計画等の策定及び見直しについて、経営陣が承認するとともに、その実施状況についても、経営陣が、定期的及び随時に報告を受け、必要に応じて議論を行うなど、経営陣の主導的な関与があること
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対応が求められる事項の大幅な強化
現行版では「対応が期待される事項」にカテゴライズされている項目の大半が「対応が求められる事項」に移行されています。
例えば顧客リスク評価においては、オンボーディング時のリスク評価から定期的な顧客情報徴求時の更新に加え、疑わしい取引の届出を契機としたオンゴーイング時のリスク再評価まで拡大されています。
この実現にはKYCと取引モニタリング・フィルタリングさらにケース管理機能との相互フィードバックが必要であり、AML/CFTに係る態勢強化に加えて実質的にAML/CFTシステムの高度化を求めるメッセージと考えます。
また管理対象として自社の顧客に加え提携先まで拡大しています。これは従来のコスレス契約における関係各社のAML/CFT態勢検証を明確に要求するだけに留まらず、昨今の資金移動業者とのサービス連携における不正利用を念頭に置いた強化項目と考えられます。
(詳細は リンク先資料 をご覧ください)
本改正案は2021年1月22日(金)までのパブリックコメント募集を経て、2021年2月には本改正に至る見込みです。引き続きAML/CFTガイドラインについてアップデートしてまいります。