概要
(1)6月25日以降の1回目のワクチン接種者(職域接種による接種者を除く)が1日50万人で推移し、さらに2回目のワクチン接種者を含むと1日100万回のペースでワクチン接種が進む場合、(2)6月25日以降の1回目のワクチン接種者(職域接種による接種者を除く)が1日60万人で推移し、さらに2回目のワクチン接種者を含むと1日120万回のペースでワクチン接種が進む場合、(3)1日100万回の接種ペースに加えて、今回、職域接種に配分された新型コロナワクチン3300万回分に相当する1650万人が職域接種で接種を受ける場合、(4)1日120万回の接種ペースに加えて、同1650万人が職域接種で接種を受ける場合、の4つのケースで日本の今後のワクチン接種率(人口比)を推計した。その結果、それぞれのケースで1回目、2回目のワクチン接種率が人口比40%、72%に到達する日は概要図表1のように推計された。
人口比40%は、前回のレポートで紹介したイスラエル、イギリス、アメリカのワクチン接種先行国で感染状況に変化が見られた接種率である。人口比72%は、接種対象年齢である12歳以上の人口の割合90%に、イスラエルの事例を参考に想定した実際の接種率80%を掛け合わせたものであり、今回のレポートでは、この72%という数字を希望者へのワクチン接種が日本で一つの区切りを迎える水準と想定している。
また今回、職域接種が終わると想定した10月31日時点での上記4ケースでのワクチン接種率は概要図表2のように試算された。(1)のケースを基準とすると、(2)のように
1日の接種回数が20万回増えることで追加されるワクチンの接種率は10月31日時点でプラス8.6%ポイント~10.3%ポイント、
(3)のように、
1日100万回のワクチン接種ペースに加えて職域接種が行われた場合に追加される同日時点のワクチン接種率はプラス13.2%ポイント、
(4)のように、
1日20万回の接種回数増に加えて職域接種が行われた場合に追加される同日時点のワクチン接種率はプラス21.8%ポイント~23.4%ポイント
と試算される(四捨五入の関係で概要図表2に各々接種率の値の差とは一致しない)。
一方、前回のレポートで一例として取り上げたイギリスでは、足元でデルタ株(インドで最初に確認された変異株)による新規感染が拡大しているが、感染の中心はワクチン接種率が低い若年層であるうえに、6月14日時点でデルタ株による806の入院例のうち、ワクチンを接種していない人の割合が65%を占めるなど、これまでとは異なり、ワクチン接種が感染状況に大きな影響を与えている。こうしたイギリスの例を見る限りでは、新型コロナワクチンの接種が今後、さらに加速していくとみられる日本でデルタ株の流行・まん延を抑えるためには、人流の慎重かつ段階的な回復に配慮しつつ従来からの感染予防対策を引き続き励行していくことに加えて、ワクチンの2回目の接種率を今まで以上に重視していくことが必要になってくると考えられる。
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