概要
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにした社会の混乱も日本ではようやく収束しつつあるように見える。既に緊急事態宣言は解除され、海外からの渡航者受入れ枠の拡大など、徐々に社会活動も正常化に向かいつつある。これには新型コロナワクチンの接種が急速に進んだ事が大きく貢献したと思われる。首相官邸ホームページを見ると、6月8日時点で2回の接種完了者は人口の8割に達している。一方、3回目の接種完了者はまだ6割に留まっている。2回目に比べて3回目の接種は順調に進んでいないのだろうか。
日本においては、2回目の接種から6か月以上経過(5月25日からは5か月に短縮)しなければ、3回目の接種を行えないとされている。つまり、ある時点で3回目接種を受ける事が可能な対象者は、その時点から少なくとも6か月前には2回の接種を完了している必要がある。そこで、ある時点における3回目のワクチン接種者数を6か月前の2回接種完了者数で割れば、3回目接種を受ける事が可能な対象者の中でどの程度実際に接種したかの割合を見ることが出来る。この数字が、いわば「正味の3回接種率」と言える。ここでは、新型コロナウイルスに関する各種データを世界規模で収集・公開しているオックスフォード大学のサイト”Our World in Data”のデータに基づいて、この「正味の3回接種率」を計算してみる(図表1)。
図表1:正味の3回接種率の推移(日本)
(縦軸:接種率、横軸:3回目接種の時期)
![](/content/900015620.png)
出所:Our World in Dataより野村総合研究所作成
このグラフから明らかなように、2022年5月末時点では「正味の3回接種率」は75%を超えている。つまり、「3回目の接種対象者のうち、4人に3人は既に接種している」事が分かる。
他の主要国でも同様の分析を行ってみよう。2回目と3回目の接種の間隔は国によって異なるので、各国別に定められた接種間隔を元に、それぞれ日本と同様な「正味の3回接種率」を計算すると以下のようになる(図表2)。
図表2:主要国別に見た接種間隔と正味の3回接種率
国毎に定められた接種間隔
(2回目と3回目の間) |
正味の3回接種率
(2022年5月31日時点) |
|
---|---|---|
ドイツ |
6か月→3か月に短縮
(2021/12/21より間隔短縮) |
85.6% |
英国 |
6か月→3か月に短縮
(2021/11/29より間隔短縮) |
81.7% |
日本 |
6か月→5か月に短縮
(2022/5/25より間隔短縮) |
76.3% |
フランス |
6か月→3か月に短縮
(2021/12/23より間隔短縮) |
73.1% |
カナダ | 6か月 | 72.4% |
米国 |
6か月→5か月に短縮
(2022/1/4より間隔短縮) |
56.6% |
出所:厚生労働省およびOurWorldinDataより野村総合研究所作成
この図表から明らかなように、3回目の追加接種に関して、日本は他の主要国と遜色ない接種状況となっている。この様に着実にワクチン接種が進み、感染状況が落ち着いてきたことが、社会・経済の正常化に向けた動きを支えていると言えるのではないだろうか。
以上
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