概要
欧米では2008年のリーマンショックやコロナ禍での環境変化を理由に、非連続的で予測が困難な経済状況が続くと考えられており、人的資本を含む無形資産の保持こそが企業の持続的な価値向上、リスクヘッジに繋がるという思考が強くなりました。またそのような思考は、2018年にISO(国際標準化機構)が人的資本開示のガイドラインを作成した事や、SEC(米国証券取引委員会)が人的資本に関する情報開示をルール化した事を例に、具体的な形として現れてきています。併せて、このような人的資本を重要視する流れは日本においても見られ、2020年に経済産業省から出された「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」では、企業経営における人的資本の有用性が示されました。加えて2023年から有価証券報告書内での人的資本の開示が義務付けられるようになり、経営における人への注目が高まっていると考えられます。
他方で障害者
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雇用においても、2024年より法定雇用率の引上げ
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や、合理的配慮
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の義務化といった変革が求められ、企業内における障害者の雇用・活用が大きく求められるようになりました。
以上を背景に、障害者雇用に従事されている皆さまは、障害者雇用の価値の見出し方について、今まで以上に検討・尽力されていらっしゃるのではないでしょうか。
野村総合研究所(NRI)グループでは、このような状況に鑑み、障害者雇用の価値、企業内の人的資本の一部としての捉え方について、アンケートや障害者雇用に従事される方のご意見をもとに探りました。
9年間継続している定点調査の結果をもとに、障害者雇用の課題や新しい動きについて、具体的な事例を踏まえつつご紹介いたします。その上で、障害者雇用が企業に与える財務・非財務的価値を明らかにし、価値の創出のために企業に求められる対応についての考えを示しました。
2023年12月8日には、「障害者雇用の財務的・非財務的価値の広がりについて考える~障害者の人的資本としての捉え方の一考察~」と題したセミナーを開催し、上場企業の障害者雇用担当者、特例子会社のマネジメント層の方々や、支援機関・特別支援学校の方々を対象に、上記の調査結果を報告・解説しました。
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本文中の漢字表現は、障害者に関する法律を参考にして記載しております。
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民間企業における障害者の法定雇用率は、2023年現在2.3%ですが、2024年には2.5%、2026年には2.7%まで引き上げられる予定です。
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身体、精神、知的に障害のある人や、日常生活や社会生活を送るうえで、性別、人種、国籍、等が要因となり生まれる困難さを軽減させるために行われる、周囲からの支援や環境の調整のことを指します。
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