株式会社野村総合研究所(以下NRI)は、2017年11月より、マクロ経済や財政問題を主な専門とする有識者をメンバーとした「家計金融資産とマクロ経済に関する研究会」 ※ (以下、「本研究会」)を立ち上げ、議論を進めてきました。この度、議論の成果を報告書にとりまとめ、公表いたします。
報告書は こちら
主な内容
- 第1章
- はじめに 研究会設置の背景
- 第2章
-
家計金融資産の現状と将来展望
- 日本の家計金融資産の現状と将来展望(1,800兆円の行方)
- 第3章
-
「貯蓄から投資へ」の国民経済的意義
- 家計部門、金融仲介部門、企業部門にとっての意義
- 第4章
-
なぜ日本では「貯蓄から投資へ」が進まなかったのか
- 「貯蓄から投資へ」を促すための政策・制度の変遷と現状
- 日本で定着しなかった理由(住宅資産の存在・金融制度や雇用慣行の影響)
- 求められる政策対応の方向性
- 第5章
- 総括
報告書の主な結論
- 家計金融資産において、「貯蓄から投資へ(資産形成へ)」を進めることは、家計部門の所得形成の充実をはかる観点から重要。特に、国際分散投資を促進することで、グローバルな経済成長の果実を日本の家計に還元させる効果が期待できる。また、過度な預金流入を抑制することで、銀行システム全体の適正化にも寄与しうる。
- 一方で、日本の社会的・制度的背景を長期的に振り返ると、家計が預貯金を中心として金融資産を保有することは一定の合理性を伴う選択だった。換言すると、現在の、預貯金を中心とした金融資産選択の意思決定は、戦後、長い時間をかけて根付いてきた「生活習慣」のようなものであり、簡単には是正できない性質の問題であるといえる。
-
こうした「生活習慣」を克服していくためには、これまでの延長線にはない視点に立った政策対応を考えていく必要がある。具体的には以下の方向性が考えられる。
- NISAなどの関連制度を「ふるさと納税」並みにわかりやすく簡素化し、普及を促進する
- 金融リテラシーの底上げを図り、投資による資産形成への理解を促す
- 「貯蓄から投資へ」が目指すあるべき姿を定量的な政策目標として示し、施策の評価につなげる
NRIではこれからも、本研究会で提示された内容を踏まえ、家計金融資産を起点に、より良い経済・社会の実現に資する調査研究および政策提言活動を続けていきます。
ご参考 研究会のメンバー(五十音順)
祝迫 得夫 氏 | 一橋大学 経済研究所 | 教授 |
宇南山 卓 氏 | 一橋大学 経済研究所 | 准教授 |
江口 允崇 氏 | 駒澤大学 経済学部 | 准教授 |
チャールズ・ユウジ・ホリオカ 氏 | アジア成長研究所 | 副所長 |
中里 透 氏 | 上智大学 経済学部 | 准教授 |
野村 亜紀子 氏 | 野村資本市場研究所 | 研究部長 |
(事務局) | ||
金子 久 | 野村総合研究所 | 上級研究員 |
竹端 克利 | 野村総合研究所 | 上級研究員 |
石川 純子 | 野村総合研究所 | 主任研究員 |
(注)所属・役職は2017年11月研究会発足当時のもの
-
本研究会の趣旨については、以下のニュースリリースをご覧下さい(2017年11月9日発表)。
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2017/cc/1109
お問い合わせ
本研究会に関するお問い合わせ
株式会社野村総合研究所 金融ITイノベーション事業本部 金子、竹端
TEL:03-5877-7465(金融ITイノベーション研究部)
E-mail:
hfa@nri.co.jp
(研究会事務局)