株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、「転換期のマーケティング」をテーマとした、「マーケティング分析コンテスト2022」(以下「当コンテスト」)の最終審査を行いました。101件の応募作品の中から、厳正なる審査の結果、最優秀賞、優秀賞をそれぞれ1作品ずつ、また佳作を2作品選出しましたので、受賞者や評価ポイントを公表します。
シングルソースデータを利用した分析コンテスト
NRIでは、消費者の行動と企業の施策とが相互にもたらす関係や影響を「見える化」するサービス「Insight Signal(インサイトシグナル) 1 」を、企業向けに提供しています。当コンテストは、Insight SignalでNRIが独自に収集したシングルソースデータ 2 をコンテストの参加登録者に提供し、マーケティング指標や分析手法に関する斬新なアイデアを募集するものです。さまざまな視点から生活者の購買要因の掘り下げが行われ、学術研究や企業の広告・マーケティング戦略に活用されることを目的として2007年度から毎年開催しており、今年度で16回目になります。
現在、新型コロナウイルスの終息も見えず、ウクライナ情勢による物流遅延、物価高騰など市場動向は予測しづらく、生活者の消費に対する意識も変化が激しい状況です。そんな中、マーケティング領域においても「ウィズコロナ」「デジタルリテラシー」「データマーケティングの民主化」をキーワードに、時代のターニングポイントを迎えているといえます。このような転換期となる現在において、より優れたマーケティングを推進する上で打つべき手は何か、最新データの精緻な分析に加えて、消費者の行動・意識が今どうなっているのか、また今後どうなっていくのかについて、想像力を働かせた仮説構築も重要となります。
今回のコンテストでは、これらの課題について、NRIが分析用のデータを提供し、「転換期のマーケティング」をテーマに、企業の広告やマーケティング活動に役立つ研究成果を募集しました。
ハイレベルな作品の中から、仮説設定や分析のアプローチに特徴のある4作品を選定
今年度のエントリー(参加登録)数
3
は195件、応募作品数は101件に上ります。企業が単独で行う広告・マーケティング領域でのコンテストとしては、国内で最大級の応募件数です。2022年11月の予備審査を経て、12月20日に審査員6人による本審査を実施し、「仮説設定や着眼点がユニーク」「分析結果に対する考察が優れている」「分析手法のフローと論文の完成度が丁寧」などの観点から、多面的に議論した上で各賞を決定しました。全体のレベルが高まっているため、差をつけ難い作品が非常に多い中で、最終的に4作品を選定しました。
阿部周造審査員長(横浜国立大学名誉教授)は、「データ分析に慣れた学生が増えてきて、高度な分析を行っている論文も多く見受けられた。本年は、分析結果の整理のみでなく、研究目的を果たせたか、結果から読み取った考察がされていたかが評価ポイントとなった」と総括しました。
入賞作品ならびに受賞者と、各作品の評価ポイントは、下記のとおりです。
最優秀賞
「視聴覚的なテンポを考慮したテレビCMの広告効果分析」
早稲田大学 社会科学部 上村 春佳
(審査員コメント)
「カットの切り替わる回数、使用楽曲のテンポ、発話速度などテンポに関する CMの特徴と広告効果との関連をみるという視点が面白い」
「視覚的なテンポと聴覚的なテンポの効果を捉えるべく、消費者特性別に精緻な分析を行っている」
優秀賞
「アーリーアダプターを多く取り込むのに効果的な広告の形」
中京大学 総合政策学部 山田 凌大
(審査員コメント)
「アーリーアダプターを採用時期ではなく、心理的特性から導出し、選好されやすいTV広告の内容を分析している点は興味深い」
「データの補正だけに傾向スコア法
4
を用いていて、あとはスタンダードな分析であることがよかった。アーリーアダプターの特性を考えたシンプル且つわかりやすい研究である」
佳作
「消費者属性を考慮したインターネット広告配信媒体の最適化~Netflixを事例として~」
上智大学 理工学部 薦田 怜奈
(審査員コメント)
「Netflixの利用意向に影響する変数を、消費者属性ごとに把握しており、実務的示唆が高い内容だと評価できる」
「研究背景が整理されており、補足資料にアルゴリズムまで付けられているので、汎用性の高い解像度で書かれていた研究である」
佳作
「SDGsビジネス促進のためのTVCM出稿戦略およびSNS活用施策」
慶應義塾大学 経済学部 前道 絢奈
(審査員コメント)
「きちんと文献を読んでSDGsのことを知ったうえで分析を行っているため、分析の流れ、最後の結論まできれいに書けている。用いる分析手法も複雑なものをただ行うだけではなく、硬軟使い分けていて適切である」
「テレビ視聴ジャンルから視聴者をk-means法
5
によりクラスタ化したり、通信キャリア会社のイメージ変化を目的変数にしているのが新鮮でよかった」
コンテストの詳細については、下記の専用サイトをご覧ください。
「Insight Signal マーケティング分析コンテスト2022」
http://www.is.nri.co.jp/contest/
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1
Insight Signal(インサイトシグナル):
本サービスへの加入企業が行う広告、PRなどのプロモーション施策について、NRI独自のデータを基に、NRIが分析・評価を行うサービスです。媒体選定、クリエイティブ作成の支援をはじめ、KPI設定やPDCA構築の支援も行います。詳細は、以下のInsight Signal ウェブサイトをご参照ください。
https://www.is.nri.co.jp/ -
2
シングルソースデータ:
メディア別の広告効果を生活者の視点で評価することを目的に、同一の調査対象者に対して、多様なメディアへの接触状況とともに、商品・サービスの認知や購入意向、購入有無などを調査したデータです。シングルソースデータは、個人が特定される情報ではありません。 -
3
195 件のエントリー(参加登録):
個人またはグループによる、当コンテストの参加登録数を指します。NRIは参加登録者に対して、分析用のシングルソースデータを提供した上で、データの特徴と分析手法(統計ソフトの使い方)についての説明会を実施しました。 -
4
傾向スコア法:
無作為割付が難しく様々な交絡が生じやすい観察研究において、共変量を調整して因果効果を推定するために用いられるバランス調整の統計手法。分析対象と比較対象の背景情報のバランスを調整することで両者に対する変数の効果を単純に比較できる可能性が高まります。 -
5
k-means法:
互いに近いデータ同士は同じクラスタであるという考えに基づいたデータ群をk個に分類するクラスタリング(分類)の手法。
ご参考
【コンテスト概要】
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コンテスト名
「マーケティング分析コンテスト2022」(第16回) -
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内容
野村総合研究所が収集した消費者マーケティングデータを参加登録者に提供し、データ分析による斬新なビジネスの法則、マーケティング指標等を導き、その内容および成果を競います。 -
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趣旨
当コンテストを通じて、さまざまな視点からの消費者の購買要因に関するデータ分析を行い、学術研究および企業の市場分析力の向上に寄与することを目指します。 -
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募集期間
2022年5月20日~9月30日 -
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対象
年齢、国籍、職業(社会人、学生)は一切問いません。 -
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提供するデータ
3,000サンプルの同一調査対象者から、2022年1月22日~4月2日にわたって収集した、広告・宣伝メディアへの接触状況と商品購買行動に関するデータを、未加工のデータ(ローデータ)として提供します。 -
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贈賞内容
最優秀賞:賞金20万円
優秀賞 :賞金10万円
佳作 :賞金5万円 -
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審査プロセス
- 各審査員(6名)による予備審査(全作品)
- 審査員一同によるディスカッション形式の本審査
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審査員
阿部 周造 (横浜国立大学 名誉教授)[審査員長]
桑原 武夫 (慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
清水 聰 (慶應義塾大学 商学部 教授)
西尾 チヅル(筑波大学大学院 ビジネス科学研究科 教授)
守口 剛 (早稲田大学 商学学術院 教授)
塩崎 潤一 (野村総合研究所 データサイエンスラボ 室長)
お問い合わせ
お知らせに関するお問い合わせ
株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 玉岡、梅澤
TEL: 03-5877-7100
E-mail:
kouhou@nri.co.jp
コンテスト結果に関するお問い合わせ
株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部
マーケティングサイエンスコンサルティング部
「マーケティング分析コンテスト2022」事務局 松本、森田
TEL:03-5877-7388
E-mail:
mac2022@nri.co.jp