株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、商談から契約締結のプロセスをオンライン上で実施できるプラットフォームソリューション「econy(イーコニー)」1(以下「本ソリューション」、特許出願中)に、生成AIを組み込むことにより、「商談時の不適切な発言を検出する機能」と「業務プロセスの抜け漏れを防止する機能」を、10月から提供開始しました。
従来の商談における課題をオンライン特有の技術で解決
リモートワークの浸透やマイナンバーカードの普及により、さまざまな業界において商談や契約手続きをオンラインで行う場面が増えてきています。本ソリューションはそうしたニーズに応え、従来個別に用意する必要のあった「オンライン商談のプラットフォーム」や「電子サイン機能」、「本人確認機能」の3つを一元的に提供するクラウドサービスです。2023年10月に提供を開始しました。
今回、新たに本ソリューションに生成AIを活用したコンプライアンスチェック機能を追加しました。金融取引や不動産取引などの商談においては、販売員の商品説明が法令を遵守し、かつ所定のプロセスを漏れなく実施していることを担保する必要があります。従来の対面型の商談では、会話の録音などの手段を用いて対策を行っていましたが、リアルタイムでのチェックが難しい、担当者の負荷が高い、担当者によりチェックレベルにばらつきがある等の課題がありました。本ソリューションによって業務全体をオンライン上で行うことで、担当者の負荷を減らし、より高い安全性の確保ができるようになります。
AIを活用して強化した機能とその効果
1.商談時の不適切な発言を検出する機能
(1)リアルタイム型NGワードアラート
商談主催者(以下「ホスト」)の会話をリアルタイムに解析し、NGワードを検知した場合はホストの画面上にアラートを表示します。ホストはそれを受けて発言の訂正や補足をすることができます。
訪問販売や商品の勧誘においては、金融商品取引法等によって不公正な取引が禁止されていますが、営業担当者が適切でない説明をしてしまうリスクは避けられません。本機能を用いて、法令違反のリスクを軽減することができます。
(2)文脈を理解した同義発言の検出
生成AIによって、類似語や言い回しの違いといったゆらぎを補正しつつ、文脈を意識して不適切な表現のチェックをコンプライアンス管理者(以下「管理者」)とホスト自身が行います。これによりキーワードマッチング2よりもさらに精度の高いコンプライアンスチェックが実現できます。
2.業務プロセスの抜け漏れを防止する機能
実際の商談において、事前に登録された所定の業務プロセスが漏れなく実施されていることを、会話を文字起こししたテキストに対する生成AIによる分析を通じて、管理者とホスト自身が確認できます。
販売業務では注意事項の説明や顧客意思の確認など、必須となる業務プロセスが存在します。従来は、適切なプロセスを遵守したかをチェックリストで確認するなどの方法で担保していましたが、本ソリューションでは実際の会話を文字起こししたうえでエビデンスとして保管し、必要な業務プロセスが行われているかを分析します。また、マイナンバーカードを用いた本人確認3を行うことで、なりすまし等のリスクも軽減することができます。
また、本ソリューションは他のSaaSサービスだけではなく、企業が独自に開発したRAG(Retrieval-Augmented Generation)や、契約管理システム・決済システムと連携するなど、柔軟にカスタマイズすることも可能です。
図:生成AIを活用したecony新機能の処理フロー
econyは特許出願中です。詳細は【ご参考】をご参照ください。
人手不足や、子育て・介護と仕事の両立といった社会課題が多様化・複雑化する中で、オンライン商談ソリューションの重要性はさらに高まっています。NRIはeconyを通じてお客さまのビジネスプロセス変革を支援するとともに、社会課題の解決にも積極的に取り組んでいきます。
- 1
詳しくは次のURLをご覧ください。
https://www.pcls.jp/econy/ - 2
キーワードマッチング:あらかじめ登録したキーワードで会話内容の一致する部分を検索すること。
- 3
マイナンバーカードを用いた本人確認:econyが表示するQRコードをスマホで読み取り、起動したスマホアプリでマイナンバーカードをスキャンすることで本人確認を行う機能。
ご参考
NRIはeconyの以下の機能を特許出願中です。
- ①
オンライン商談と電子契約をオールインワンで提供
オンラインでの商談およびその録画・録音の記録に加え、ユーザーの本人確認、契約書データに対する電子署名、およびタイムスタンプ付与を1つのインターフェースで提供するプラットフォーム - ②
生成AIを活用したテキスト化、要約、コンプライアンス、プロセスチェック(本お知らせに記載した内容)
大規模言語モデル(LLM)により、オンライン商談の録画もしくは録音のデータを音声認識によりテキスト化して要約し、所定のチェック項目を充足しているか否かを判定する機能