三井倉庫ホールディングス株式会社(以下「MSH」)、三井倉庫ロジスティクス株式会社(以下「MSL」)、株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、トラックの走行情報、燃料消費量等の一次データ1を用いたルート毎のCO2排出量算定の実証実験(以下「本実験」)を、2023年10月から2024年3月にかけて実施しました2。
現在、製造業を中心に製品別カーボンフットプリント3算定への取り組みが進むなか、物流におけるCO2排出量(Scope3カテゴリ4,94)の可視化、削減への取り組みが課題となっています5。また、トラック輸送におけるCO2排出量の算定においては、現時点ではトンキロ法6など二次データ排出原単位を用いた手法が一般的であるため、エコドライブや配送最適化、アイドリング削減等の物流効率化の取り組みを反映させるのが困難でした。
本実験では、ロガー(記録計)を取り付けたトラックから実際の走行情報(走行距離、時間、ルート等)や燃料消費量等が取得できること、およびこれら一次データを用いてルート毎に輸送物の製品単位でCO2排出量を算定できること等について、その実現可能性を確認しました。
本実験の手法を用いれば、トラックの輸送実態に即したCO2排出量算定が可能となるため、エコドライブや配送最適化、アイドリング時間短縮等の物流効率化によって削減したCO2排出量の反映が可能となり、排出量削減マネジメントの高度化が期待できます。本実験においては、MSHとMSLが実験の対象となるトラック、物流拠点、貨物の提供等を行い、NRIがロガーの調達・設定、データ収集基盤の環境構築等を担い、データの分析や考察を三社で行いました。
物流分野では、2023年3月に輸送のGHG(Greenhouse Gas)排出量の算定・報告に関する初の国際規格ISO14083:20237が発行されました。三井倉庫グループ・NRIは今後も、ISO14083:2023に対応し、物流排出量データを効率的に収集する方法やデータ精度を向上させる取り組みを進め、物流から排出されるCO2の削減を目指し、脱炭素社会の実現に貢献していきます。
本実験の特長
本実験ではトラックから実際の走行情報と燃料消費量等の一次データをリアルタイムで取得し、走行情報からどの配送先に輸送したかを自動で判定しました。さらに、当該一次データをトラックの積荷情報と紐づけることで、配送ルート毎に製品単位のCO2排出量を算定可能であることを実証しました。これにより、トンキロ法等二次データ排出原単位を用いた手法では考慮できなかった、各種の物流効率化の取り組みが反映可能となります。
図:本実証実験の概要
- 複数配送先を経由する実態の配送ルートに即したCO2排出量を算定可能(ルート2-1、2-2、4)
- 配送ルート毎の積載率の差異による製品別CO2排出量を算定可能(ルート2-1、2-2、4)
- 配送後の戻りルートや配送前後の準備ルートのCO2排出量を算定可能(ルート3、5、1、6)
- 倉庫・配送先での待機時間の削減によるCO2排出削減量を算定可能(倉庫、配送先A、B)
表:物流効率化の排出量算定への反映可否
<各社のコメント>
三井倉庫グループ
三井倉庫グループはマテリアリティの一つに「社会課題解決につながる共創を通じたサービス・事業の創出」を掲げ、お客さまのサプライチェーンサステナビリティを支援するサービスであるSustainaLink(サステナリンク)を展開するなど、事業を通じた企業価値および社会価値の創造を目指しています。
三井倉庫ロジスティクス株式会社は、三井倉庫グループの中核事業会社の一つとして、メーカーの調達・製造・販売と、リテーラーの調達から店舗・通信販売までのサプライチェーン全体の改革を支援するLLP(Lead
Logistics
Partner)サービスモデルに加え、両者を繋ぐ製・配・販連携ロジスティクスプラットフォームを確立しています。また、業務用機器や大物家電、家具の配送、設置・工事、保守メンテナンスなどの各種テクニカルサービスを組み合わせて提供するテクニカルロジスティクスプラットフォームを構築しています。
輸送活動から排出されるGHGは世界全体の約25%を占め、今後もますます輸送活動量の増加が見込まれる中、物流におけるCO2排出量の可視化および削減の高度化に関する取り組みを進めることで、社会の気候変動対策に貢献してまいります。
株式会社野村総合研究所
世界では、持続可能な社会の実現に向けてさまざまな変革が求められています。NRIグループは、持続可能な未来社会づくりとNRIグループの成長戦略は一体という考えのもと、サステナビリティ経営を推進しています。
2024年4月からトラックドライバーの時間外労働が年960時間に制限され、物流業界では人手不足への対応が急務となっており、物流の持続可能性が社会課題になっています。NRIでは、物流業界における人手不足などの課題の解決と、企業の新規参入・事業拡大を支援する「次世代物流構築コンサルティングサービス」を、2024年5月から提供を開始しています8。
NRIグループは、ありたい社会の姿を洞察して社会のトランスフォーメーションに挑み、さまざまなパートナーとの共創を通じて社会課題の解決を目指していきます。
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1
直接測定または直接測定に基づく計算から得られる、プロセスや活動の定量化された値。
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2
2024年3月までデータ取得を行い、その後データ分析や考察を行ったため、12月の公開となりました。
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3
製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHGの排出量をCO2排出量に換算し、製品に表示された数値もしくはそれを表示する仕組み。
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4
GHGプロトコルのScope3基準では、Scope3を15のカテゴリに分類します。
Scope3カテゴリ4 輸送、配送(上流)…調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主)
Scope3カテゴリ9 輸送、配送(下流)…出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売 - 5
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6
トンキロ法は、貨物の重量と輸送距離から輸送トンキロメートルを算出し、輸送機関別の輸送トンキロメートル当たりCO2排出原単位を乗じることにより、CO2排出量を算出する手法です。
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2023年3月に発行された、旅客及び貨物の輸送チェーンにおける温室効果ガス(GHG)排出量の定量化及び報告に関する国際規格。詳細は次のURLをご参照ください。https://www.iso.org/standard/78864.html
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次世代物流構築コンサルティングサービスの詳細は次のURLをご参照ください。
https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/20240523_1
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システムコンサルティング事業本部 藤川