株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、「データドリブンマーケティング」をテーマとした、「マーケティング分析コンテスト2024」(以下「本コンテスト」)の最終審査を行いました。当コンテストは2007年度から毎年開催しており、今年度で18回目になります。101件の応募作品の中から、厳正なる審査の結果、最優秀賞を1作品、優秀賞を2作品選出しました。以下に、受賞作品や評価ポイントを発表します。
シングルソースデータを利用した分析コンテスト
NRIでは、消費者の行動と企業の施策とが相互にもたらす関係や影響を「見える化」するサービス「Insight Signal(インサイトシグナル)1」を、企業向けに提供しています。本コンテストは、Insight SignalでNRIが独自に収集したシングルソースデータ2をコンテストの参加登録者に提供し、マーケティング指標や分析手法に関する斬新なアイデアを募集するものです。さまざまな視点から生活者の購買要因の掘り下げが行われ、学術研究や企業の広告・マーケティング戦略に活用されることを目的としています。
2024年は、日常生活や経済活動が「コロナ禍前」に戻りはじめた年でした。パンデミックによって加速した企業活動のデジタル化に伴い、生活者の側でもオンライン上での消費行動が増加しました。また、AIや機械学習を活用した分析ツールを用いて、複雑なデータセットから有益な洞察を得られるようになりました。その結果企業にとっては、収集できるデータの質と量が向上し、生活者の行動や傾向をより正確に予測できるようになりました。マーケティングにおいては、最新データの精緻な分析に加えて、消費者の行動様式や意識が今どうなっているのか、また今後どうなっていくのかについて、想像力を働かせた仮説構築も求められるようになっています。
本コンテストでは、これらの背景をふまえてNRIが分析用のデータを提供し、質・量ともに高度化したデータの分析を施策へ結びつけることが求められる「データドリブンのマーケティング」をテーマに、企業の広告やマーケティング活動に役立つ研究成果を募集しました。
仮説構築や分析のアプローチに特徴のある3作品を選定
2024年11月の予備審査を経て、12月13日に審査員6名による本審査を実施し、「仮説構築や着眼点がユニーク」「分析結果に対する考察が優れている」「分析手法のフローと論文の完成度が高い」などの観点から多面的に議論した上で、最優秀賞1作品、優秀賞2作品の計3作品を選定しました。
阿部周造審査委員長(横浜国立大学名誉教授)は、「ChatGPTなどの生成AIを活用してデータ分析を進めている論文が増えた印象。結果として、データの加工や分析の手順のみを示している作品も散見された。その中で、面白い課題に着眼し、丁寧かつ分かりやすい分析結果、またその結果がマーケティング実務に汎用の可能性があるかが、評価ポイントとなった」と総括しました。入賞作品ならびに受賞者と各作品の評価ポイントは、次の通りです。
<最優秀賞>
「CM帯がTVCMの広告効果に及ぼす影響」
同志社大学大学院 文化情報学研究科 統計科学研究室 井上 聖士
(審査員コメント)
「CM帯という概念は今までのコンテストの中では初めてで、オリジナリティーのある良い視点。分析対象の絞り込みなどのデータ整備でChatGPTとGeminiを活用したり、アンケート無回答部分のデータを補う作業もされていたりデータの加工が丁寧であった」
「実務への応用を意識した考察や追加検証も説得力を高めている」
<優秀賞>
「携帯キャリアにおけるプラットフォーム単位のテレビCM戦略の提案」
福岡女子大学 国際文理学部 木下 鳳香 野嵜 未夢
(審査員コメント)
「キャリア契約から派生したプラットフォームでの契約という視点で分析した点が、データを増やして分析の精度を上げる意味でも、実務に活用する上でも意義深いと感じる」
「ポイント経済圏への『囲い込み度』という指標を作成している点に独自性があり、先行研究から丁寧に課題を導出している点、仮説を丹念に検証している点がよい」
<優秀賞>「信頼財から見るTV番組内容がCMに与えるプライミング効果の検証」
株式会社 ADK マーケティング・ソリューションズ
マーケティングインテリジェンス本部 データストラテジスト局
狩野 陽輝 中野 すずか 平山 耕太郎
(審査員コメント)
CMによる効果の規模を表す「『CM効果量』の作成が精緻でデータ加工や分析過程の説明も丁寧で分かりやすい。分析対象を銀行とクレジットカードに絞っていることで結果がクリアになっている上に結果の解釈も納得性が高い」
「『ニュース番組経由でクレジットカードのCMに接した人のCM効果』という視点が興味深く、分析結果も示唆に富む」
コンテストの詳細については、以下の専用サイトをご覧ください。
▼「Insight Signal マーケティング分析コンテスト2024」
https://www.is.nri.co.jp/contest/2024/index.html
- 1Insight Signal(インサイトシグナル):
本サービスへの加入企業が行う広告、PRなどのプロモーション施策について、NRI独自のデータを基に、NRIが分析・評価を行うサービスです。媒体選定、クリエイティブ作成の支援をはじめ、KPI設定やPDCA構築の支援も行います。詳細は次のInsight Signal ウェブサイトをご参照ください。
https://www.is.nri.co.jp/ - 2シングルソースデータ:
メディア別の広告効果を生活者の視点で評価することを目的に、同一の調査対象者に対して、多様なメディアへの接触状況とともに、商品・サービスの認知や購入意向、購入有無などを調査したデータです。シングルソースデータは、個人が特定される情報ではありません。