株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、公立大学法人和歌山県立医科大学(以下「和歌山県立医科大学」)との共同研究において、フレイル(加齢による心身の活力低下)リスクを予測するAIモデル(以下「本モデル」:特許出願中)を開発しました。現在、本モデルの実用化に向けて実証検証を進めています。本モデルはフレイルのみならず、認知症や生活習慣病を含む「老年症候群」への応用が可能であり、将来的には、高齢者の健康寿命の延伸という社会的効果を通じて、企業に向けた介護予防ソリューションとして展開することを目指しています。

背景と狙い:AI技術の活用と新規ソリューションの創発

急速な高齢化が進む日本では、医療・介護費用の増大是正や健康寿命の延伸が喫緊の社会課題となっています。特に、要介護状態へ移行する前段階であるフレイルや、認知症、生活習慣病といった老年症候群の早期発見と予防は、高齢者のQOL(生活の質)向上において極めて重要です。こうした社会的背景のもと、NRIは和歌山県立医科大学と共同で、フレイルの兆候を捉え、リスク傾向を可視化するAIモデルの開発に取り組んできました。本取り組みは、AIを活用した「予防・発見・改善提案」技術を企業の健康経営に導入し、保険・ヘルスケアに関する支援ソリューションとして提供することで、顧客企業の課題解決に貢献することを目指しています。

独自の「Auto-ML」技術による高精度なリスク予測と改善シミュレーション

本モデルは、一般的な特定健診の問診票データの活用に加え、血液検査や身体情報を組み合わせてフレイルを判定したうえで、将来のリスクの予測や生活習慣の改善提案を行うものです。
本モデルの主な特長は以下のとおりです。

  1. 独自のAI分析パイプライン
    今回、「Auto-ML(Automated Machine Learning)」技術を応用し、アウトカム1に応じて最も精度の高い学習モデルを自動的に選択する独自のAI分析パイプライン2を開発しました。線形モデルから高度な非線形手法、アンサンブル学習モデル3などを網羅的に学習させることで、一般的な手法4よりも高精度でのリスク予測を実現しています。本モデルのインプットデータは特定問診や健康診断のデータを主としており、将来のマイナポータル連携5を見据えた設計としています。
  2. リスクの可視化と生活習慣改善シミュレーション
    本モデルは、個人の健康診断等のデータを用いて現時点でのリスクを可視化するだけでなく、どのような生活習慣の改善がフレイルの予防に効果的かというシミュレーションを行った上で、予防改善活動を提示することを可能にしています。
  • なお、本モデルの構築にあたり、個人情報の取り扱いについては、関連法規および倫理指針に基づき、プライバシー保護に十分配慮した上で開発しています。

役割分担

  • NRI:保険分野におけるデジタルソリューションのさまざまな実績を活かしたビジネス構想の策定、本モデルの構想検討、および開発。
  • 和歌山県立医科大学:研究用データの提供、医学的見地からの開発モデル設計、および技術・専門領域における指導。

NRIはこれからも、医療DXやPHR(Personal Health Record)の活用促進に積極的に取り組んでいきます。

 

  1. 1アウトカム:ここでは「予測したい具体的な結果」を指します。
  2. 2AI分析パイプライン:データの取り込みから、欠損値処理などの前処理、特徴量の抽出、モデルの学習・評価、そして最適なモデルの選定までの一連の工程を自動化した仕組みです。
  3. 3アンサンブル学習モデル:複数の異なる学習モデルを組み合わせ、それぞれの長所を活かすことで、単一のモデルよりも高い予測精度を目指す手法です。
  4. 4一般的な手法:従来の統計的手法(ロジスティック回帰分析など)や、単一のアルゴリズムのみを用いた機械学習手法を指します。
  5. 5将来のマイナポータル連携:政府が運営する「マイナポータル」APIとの接続を前提としたシステム設計です。連携が実現すればユーザーの同意のもと、公的な薬剤情報や特定健診情報を正確かつ自動的に取得可能になり、ユーザーの手入力負担が軽減されます。