株式会社野村総合研究所(以下「NRI」)は、「実務に活かすマーケティング分析」をテーマとした、「マーケティング分析コンテスト2025」(以下「本コンテスト」)の最終審査を行いました。当コンテストは2007年度から毎年開催しており、今年度で19回目になります。126件の応募作品の中から、厳正なる審査の結果、残念ながら最優秀賞は該当なしとし、優秀賞を2作品、佳作を2作品選出しました。

シングルソースデータを利用した分析コンテスト

NRIでは、消費者の行動と企業の施策とが相互にもたらす関係や影響を「見える化」するサービス「Insight Signal(インサイトシグナル)1」を、企業向けに提供しています。本コンテストは、Insight SignalでNRIが独自に収集したシングルソースデータ2をコンテストの参加登録者に提供し、マーケティング指標や分析手法に関する斬新なアイデアを募集するものです。さまざまな視点から生活者の購買要因が掘り下げられ、学術研究や企業の広告・マーケティング戦略に活用されることを目的としています。

2025年は、生成AIのコンテンツ生成能力が飛躍的に進歩しました。特に生活者の情報収集や消費行動において、個々の生活者がAIに与える、異なるプロンプトが出力する多彩な情報により、情報の「パーソナライズ化」がより進展しました。この変化は、企業が扱うデータ量を爆発的に増加させ、大規模なデータを効率よく扱うためには生成AIの活用が不可欠となっています。マーケティングにおいては、生成AIも活用しながら、消費者の行動や意識の変化を先読みし、新たな価値を創造する力が一層求められるようになっています。

本コンテストではそうした変化を踏まえ「実務に活かすマーケティング分析」をテーマに企業の広告やマーケティング活動による消費者の行動や態度の変容を分析していただき、マーケティングの実務に応用可能な研究成果を募集しました。

仮説構築や分析のアプローチに特徴のある4作品を選定

2025年11月の予備審査を経て、12月12日に審査員5名による本審査を実施し、「仮説構築や着眼点がユニーク」「分析結果が実務に活かせる」「分析手法のフローと論文の完成度が高い」「生成AIを効果的に活用している」などの観点から多面的に議論した上で、優秀賞2作品、佳作2作品の計4作品を選定しました。
守口剛審査委員長(早稲田大学教授)は、「昨年から引き続きChatGPTなどの生成AIを活用してデータ分析を進めている論文は増えたと考えられる。生成AIの活用方法も多岐にわたっており、利用者の力量が現れる印象を受けた。本年度のコンテストでは、「実務に活かすマーケティング分析」をテーマに掲げており、分析手法だけでなく、分析結果から得られる示唆がマーケティングの実務にどのような応用可能性があるかも、評価のポイントとなった」と総括しました。

入賞作品ならびに受賞者と各作品の評価ポイントは、次の通りです。

<優秀賞>
「嗜好品業界へTVCM戦略の提案~消費者のブランド選択プロセスと広告効果階層モデルの観点から~」
福岡女子大学 国際文理学部 柴田ゼミ 木庭琴美、浅野歩未

(審査員コメント)
「先行研究や提供データ以外のデータも参照しており、ステップが丁寧である。追加分析も適切に設計ができており評価できる」「消費者の意思決定プロセスの理論に従って分析を行っている点が評価できる。各プロセスにおいてブランドごとにTVCMの効果が違うという結果も納得感がある」「非知名→知名→考慮→選択という各プロセスへの広告効果を検証する着眼点が興味深い」

<優秀賞>
「TVCMの視聴印象と表現要素を同時最適化するベイジアンネットワークモデルの提案」
明治学院大学 心理学部 川端ゼミ 小原克揮、大谷昂生、澤村音穏、
菊地凛華、大塚光、三橋怜史、箕輪碧斗、久保田美琴、清水絢香、
田中紗葵、吉川日菜

(審査員コメント)
「納得できる分析方法であり、それを基にCM改善のシミュレーションも実施している。興味深く有益な研究だと評価できる」「論文としての完成度が高い。分析の下処理・条件の整備などが丁寧に行われている。示唆が実用的で、シミュレーションも次の打ち手につなげやすい」「分析過程のロジックが精緻で、高度な分析手法を駆使しながらも、随所に非常に細やかな配慮がされていた。広告効果に関する限られた提供データと、労力をかけて作成した特徴量データをよく活かせていた」

<佳作>
「環境保護を啓発する番組の視聴がEV/HEV購買意欲に与える影響の定量分析」
名古屋大学 経済学部 吉野達哉

(審査員コメント)
「問題意識と仮説設定のセンスが良く、分析もシンプルながら説得力のある設計となっている。EVとHVの効果の違いも納得性が高い」「分析自体はシンプルであるが、着眼点がユニークであり、結果も明確でわかりやすい論文となっている」「番組をみたからEV/HEVの購買意向が上がっているのではなく、環境問題に関心を持った人が番組をみて、かつ購買意欲もあがっている可能性があるので因果関係の検証は必要だが、着眼点は評価できる」

<佳作>
「生成AIによるTVCMの出稿戦略」
長崎大学 情報データ科学部 浦川叶夢

(審査員コメント)
「本コンテストのデータの特徴を理解し、AIを用いながら上手く分析できている。AIが広告のキャッチフレーズとの相性の良さに目を付けた点も素晴らしい」「生成AIのデータ分析への活用方法の方向性の一つを示していると考えられ、興味深い」「特定商品の出稿計画の最適化を行うまでのロジックは合理的で納得性が高い。生成AIによる文章化の精度に依存する点と、クラスタ導出や文章化のチェックなどの人による手間をどれだけ簡略化できるかが、今後の実現に向けての課題になるだろう」

コンテストの詳細については、以下の専用サイトをご覧ください。

▼「Insight Signal マーケティング分析コンテスト2025」
https://www.is.nri.co.jp/contest/2025/index.html

  1. 1Insight Signal(インサイトシグナル):
    本サービスへの加入企業が行う広告、PRなどのプロモーション施策について、NRI独自のデータを基に、NRIが分析・評価を行うサービスです。媒体選定、クリエイティブ作成の支援をはじめ、KPI設定やPDCA構築の支援も行います。詳細は次のInsight Signal ウェブサイトをご参照ください。https://www.is.nri.co.jp/
  2. 2シングルソースデータ:
    メディア別の広告効果を生活者の視点で評価することを目的に、同一の調査対象者に対して、多様なメディアへの接触状況とともに、商品・サービスの認知や購入意向、購入有無などを調査したデータです。シングルソースデータは、個人が特定される情報ではありません。