株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤 花芽、以下「NRI」)は、2024年8月、全国15歳~79歳の男女計1万人を対象に、訪問留置法で生活像や生活価値観、消費実態を尋ねる「生活者1万人アンケート調査」を実施しました。1997年以降、3年に1回このアンケート調査を実施しており、今回が10回目となります。
主な調査結果は以下の通りです1。なお、詳細な結果等は後日改めて公表する予定です。

「収入」の見通しはよくなっているものの、「景気」の見通しは回復していない

「今年から来年にかけての家庭の収入の見通し」について、「よくなる」と考える人は2021年の7%から2024年の11%へ増加し、「悪くなる」と考える人も2021年の33%から2024年の30%へ減少しました。これには主に各企業の賃上げの影響がうかがえます。 しかし、「今年から来年にかけての景気の見通し」については、「悪くなる」と考える人が2021年の46%から2024年では34%に減少しているものの、コロナ禍以前の水準(2018年調査)には戻っていません(図1)。日経平均株価が過去最高値を記録した2024年でしたが、増税や円安、物価高の影響もあり、生活者は景気の先行きを依然厳しくみています。

図1:今年から来年にかけての景気の見通し

  • (注)各年の集計サンプル数は、1997年10,036、2000年9,993、2003年10,024、2006年10,004、2009年10,213、2012年8,773、2015年8,650、2018年8,378、2021年8,246、2024年8,228(年齢条件を揃え、無回答は除いている)

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(1997年~2024年、3年に1回)

余暇の楽しみとして「街レジャー」が回復するも、海外旅行は回復に至らず

休日や自由な時間などによくする余暇活動の割合を見ると、これまで拡大してきた「外食・グルメ・食べ歩き」や「映画・演劇・美術鑑賞」、「カラオケ」などの「街レジャー」は、コロナ禍の2021年に一時減少しましたが、2024年では大きく回復しています(図2)。しかし旅行に関しては、国内旅行は2024年では回復しているものの、海外旅行は2021年で減少した後、回復には至っていません。

図2:余暇活動をする人の割合の推移(複数回答)

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(1997年~2024年、3年に1回)

「推し活」を背景に、こだわり志向の「プレミアム消費」「徹底探索消費」スタイルが増加

NRIで設定した「4つの消費スタイル」の構成比変化を見ると、「安さ納得消費」(=製品にこだわりはなく、購入する際に安さを重視)の割合が22%に減少し、「プレミアム消費」(=自分が気に入った付加価値には対価を払う)および「徹底探索消費」(多くの情報を収集し、お気に入りを安く買う)が2024年には増加しました(図3)。

図3:「4つの消費スタイル」構成割合の推移

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(2000年~2024年、3年に1回)

近年では「推し活」と呼ばれる、お気に入りの著名人やキャラクターなどをさまざまな形で応援する消費が顕在化していますが、今回の調査結果からもその傾向が見て取れます。10代・20代の女性では実に6割前後が「推し」を持ち、お金や時間もかけるなど、若い世代や女性を中心に「推し活」へのエネルギーが高いことがわかりました。こうした推し活消費のうねりも、こだわり志向の消費を後押ししていると推察されます(図4)。

図4:「推し活」の傾向(性年代別)

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(2024年)

生成AI利用は全体で9%。若年層ではメリットへの期待があるが、シニア層では不安が強い

生成AIについて、全体の認知率は61%であるものの、実際の利用率は9%にとどまっています(図5)。10代・20代の利用率は20%台にのぼっていますが、年代が上がるほど利用率は低くなっています。
生成AIのポジティブ面については、30代では「業務効率・生産性を高める」という具体的なメリットを想定する一方、10代・20代では「暮らしを豊かにする」「よりよい社会をつくる」といった抽象的なメリットをイメージしやすい傾向も見られました(図6)。ネガティブ面では年代が若いほど「人間の仕事を奪う」ことを危惧しており、60代・70代では「不安」という印象を抱いています。

図5:生成AIの認知・利用率(年代別)

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(2024年)

図6:AIに対するイメージ(年代別、複数回答)

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(2024年)

オンラインショッピングを中心に、買い物においてもAIによるサポートが見られるようになってきていますが、「AIと会話しながら買い物をすることに抵抗はない」と考える人は全体では23%で、10代から30代では4割弱であるのに対し、AIへの不安感もあって年代が上がるほど抵抗感が強くなることがわかりました(図7)。

図7:「AIと会話しながら買い物することに抵抗はないか」の回答割合(年代別)

出所)NRI「生活者1万人アンケート調査」(2024年)

  • 1本資料に記載した構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない場合や、内訳の計と合計が一致しない場合があります。

【ご参考】調査概要

■調査名 「生活者1万人アンケート調査」(2024年)
■実施時期 2024年8月
  • 過去調査の実施年:
    1997年、2000年、2003年、2006年、2009年、2012年、2015年、2018年、2021年
■調査方法 訪問留置法
■サンプル抽出方法 層化二段無作為抽出法
■調査対象 全国の満15~79歳の男女個人
  • 2009年までは満15~69歳の男女個人
■有効回答数 10,189人
  • 過去調査における有効回答数:1997年10,052人、2000年10,021人、2003年10,060人、2006年10,071人、2009年10,252人、2012年10,348人、2015年10,316人、2018年10,065人、2021年10,164人
  • 時系列比較の際は、同じ年齢層(満15~69歳)で比較をするため、満70~79歳の回答を除いている。
■主な調査項目
◇生活価値観 …日常生活における考え方、組織・機関、職業に対する信頼意識
◇コミュニケーション …親子関係、夫婦関係、地域関係に対する意識
◇居住 …居住年数、持ち家の形態、今後の住まいに対する意向
◇就労スタイル …就労状況、就労意識
◇消費価値観 …消費に対する意識、今後積極的にお金を使いたい分野
◇消費実態 …世帯・個人で保有している商品、消費に関する情報源
◇余暇・レジャー …趣味、インターネットの利用状況
◇生活全般、生活設計 …景気・収入などの見通し、直面している不安や悩み