株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤花芽、以下「NRI」)はAIを活用した「現行可視化・影響分析サービス」(以下「本サービス」)を2025年3月11日より提供開始します。本サービスは、「2025年の崖1」問題に伴い、レガシーシステム2のモダナイゼーション3において企業が直面する課題の解決を支援します。具体的には、NRI独自のノウハウとAIを用いて、現行システムの全体構造を把握し、システム変更がもたらす影響の調査と分析をします。これにより、効率的かつ効果的なモダナイゼーションの計画を支援し、企業の持続可能なシステム変革を目指します。

図1:モダナイゼーションの全体像と現行可視化・影響分析サービスの対応範囲

モダナイゼーションの成否を決定づける「現行可視化」の重要性

モダナイゼーションを成功させるためには、「現行可視化」が不可欠です。これは、現存するシステムの全体像を明確にし、その機能やデータフローを具体的に把握するプロセスです。しかし、多くの企業では、現行システムに技術的負債4が蓄積し、複雑かつ不透明な部分が残っているうえ、システムの設計書においても、不完全なドキュメント、手書きやExcel、Wordなど多様なファイル形式の混在が影響しており、可視化の難易度が上がっています。その結果、新システム設計の際に重要な機能が欠落したり、システム間の依存関係を把握できなかったりすることにより不具合が生じています。これにより、対応コストの増加やスケジュール遅延などのリスクが高まっています。

AIとNRIの知見で高品質な「リドキュメント」を実現

「現行可視化」ではシステムの「リドキュメント」が鍵となります。「リドキュメント」とは、既存の設計書やコード、マニュアルなどから必要な情報を抽出し、新たなシステムでも活用可能な資料に再構築するプロセスです。NRIはAIを活用した「リドキュメント」を提案し、システムの現状把握を支援します。これにより、システム全体のデータフローを迅速かつ正確に把握し、モダナイゼーション計画の土台を提供します。
AIを活用することで、複雑なエンタープライズシステムのデータフローを効率的に把握し、計画の品質を向上させます。また、多様なファイル形式の既存ドキュメントをAIで整理し、構造化します。手動での作成よりも高品質なリドキュメントの作成が可能です。
さらに、作成した資料を基に、最新の効率的なプラットフォームへの移行を支援します。これにより、企業は効果的な移行戦略を策定し、運用の最適化を図ることができます。NRIでは、リドキュメントを活用した成果物を既に多くの企業に展開しており、システムの現状把握とモダナイゼーション計画を迅速に進める支援を行っています。

システム変更の影響範囲を即座に把握する「影響分析ツール」

影響分析は、システムの変更が与える影響を解析し、変更箇所やシステム間の結合度合いを評価するプロセスです。NRIが提供する「影響分析ツール」は、システム資産同士の関連性を可視化し、変更の影響範囲やシステム間の結合度を即座に示すことができます。これにより、企業は影響範囲を迅速に特定し、正確な工数の見積もりや、システムの変更に伴う不具合や障害発生のリスクの最小化が可能となります。
NRIでは、社内のシステム開発において、現行システムの調査工数削減や障害解析、モダナイゼーションにおいて影響分析ツールの活用を開始しています。

図2:現行可視化・影響分析サービスのアウトプットイメージ

NRIは「現行可視化・影響分析サービス」をはじめ、AIを活用した「AI再構築」や「AIテスト・移行」など、モダナイゼーション支援を拡充中です。AIを用いた開発支援や画面の自動テストを実現するサービスを2025年度上半期に提供予定です。これらのサービスを通じ、企業の成長と競争力強化を目指します。

  • 1『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』(経済産業省「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」2018年)
  • 2レガシーシステム:古い技術や設計に基づいて構築されたシステムで、最新のビジネス要件をうまくサポートできないことが多く、維持管理が困難なことがあるシステム。
  • 3モダナイゼーション:老朽化したシステムや古いプロセスなどのIT資産を、ビジネス的な視点から、近代化もしくは最適化する考え方。
  • 4技術的負債:迅速な開発や短期的な利益を追求する過程で蓄積される、後々の変更や拡張を困難にする設計上や実装上の問題点。