NRI社会情報システム株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役社長:大多和 俊明)は、2024年10月から11月にかけて、全国42か所のシルバー人材センター1の会員のうち、65歳以上の男女合計1,009人に対して「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(以下「本調査」)を郵送で実施しました。

本調査では、シニア世代の生活の満足度に大きく関係する要素を突き止めるため、「健康状態」「資産形成(経済状態)」「人間関係」について、現役時代(50歳時点)に行っていた行動について質問しました。
その結果、シニアの多くが健康と経済面に不安を抱えている一方、現役時代の積極的な健康維持活動や多様な資産形成が、現在の満足度に繋がっていることが明らかになりました。また、良好な人間関係にはコミュニケーション頻度が重要であることも示唆されました。
主な調査結果は、以下の通りです。なお、詳細な結果などは後日改めて公表する予定です。

1.シニアの不安や悩みは「健康」と「経済面」が上位を占める

シニアが現在直面している不安や悩みの1位は「自分の健康」で、回答者の約3人に2人(65.0%)がこの点を指摘しています。続いて、「老後の生活費・経済的なゆとり」が48.0%で2位、「配偶者の健康や介護」が40.1%で3位となっています。その他、経済負担に直結する「家の老朽化」が4位など、健康面と経済面の不安や悩みが上位となっています(図1)。

図1:現在、直面している不安や悩み(複数回答、N=1,009)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

2.「食習慣」や「生活習慣」、「心の安らぎ」を心がけてきた人の健康度が高い

自分自身の健康度を聞いた結果、「まあ健康である」「非常に健康である」を合わせて87.4%が健康であると回答しています2 (図2)。
現在の健康状態別に、健康維持・増進のために現役時代どのような取り組みをしていたかについて見ると、「非常に健康である」と回答した方は、「健康診断等を定期的に受診する」(53%)、「屋外での軽い運動」(51%)、「趣味を持つ」(43%)、「気持ちをなるべく明るく持つようにする」(42%)といった項目が他の層よりも高い割合で実践されていました(図3)。特に精神的な健康維持(気持ちを明るく持つ、趣味を持つ)や、予防的な行動(定期的な健康診断)が、現在の良好な健康状態に繋がっている可能性が示唆されます。
一般的にはスポーツをすることは健康によい、と考えられていますが、本調査においては現役時代にスポーツをしていたかどうかは現在の健康状態に関係がないという結果でした。

図2:自身の健康度(男女・年代別)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

図3:健康維持・増進のために「現役時代にやっていたこと」(複数回答、健康状態別、N=776)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

3.預金・貯金だけでなく、その他の金融商品で資産形成していた者の方が今後の生活資金が「足りている」比率が高い

「老後資金2000万円問題」が話題になったように、シニアにとって老後の生活資金もまた切実な問題です。今後の生活資金について「十分足りている」と回答したのはわずか4.9%に留まり、「十分とは言えないが足りている」と回答した41.3%を合わせて、老後資金が「足りている」と回答した方は全体で46.1%であり、過半数は「不足している」と回答しています(図4)。80歳以上の方の回答では、「足りている」比率が若干上昇し、51.5%となるのは、年齢が上がるほど残りの人生に必要な資金が少なくて済むと認識していることを表していると推察できます。
今後の生活資金の過不足感別に、現役時代にどのような資産形成を行っていたかを見ると、今後の生活資金が「足りている」と回答した方は、「やや不足している」「全く不足している」と回答した方より「個人年金保険」「株式」「投資信託」「債券」「外貨預金」など、より計画的・積極的な資産形成方法に取り組んでいました。また、「足りている」と回答した方は「財形貯蓄」「勤めていた会社の持株会やストックオプション」のように勤務先企業が提供する資産形成方法を積極的に活用していました。これにより、企業提供の制度活用が老後の安心感に繋がる可能性が示唆されます(図5)。

図4:今後の生活資金に対する過不足感(年代別)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

図5:資産形成のために「現役時代にやっていたもの」(今後の生活費の過不足感別)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

4.友人・知人との関係の良好さは、コミュニケーション頻度と強く関係する

友人・知人との人間関係では、「地域・隣近所の人」「趣味で知り合った友人」において相対的に「非常に良好」「まあ良好」と回答した比率が高く、「職場関係の付き合い」「学生時代の友人」では相対的に低めになっています。全般的に75歳以上の方が74歳以下より人間関係が良好になる傾向があります。特に、「職場関係の付き合い」「学生時代の友人」は、男女とも現役を引退してから時間が経っているにも関わらず、年代が高い方が良好な関係となっています(図6)。
現役時代の友人・知人関係の各種集まりへの参加頻度と、その集まりに関係する友人・知人の現在の人間関係を見ると、人間関係が良好なほどその友人・知人に関係する集まりへの参加頻度が高いという結果になりました(図7)。また、友人・知人との現在のコミュニケーション頻度(対面だけでなく、メールや電話、メッセンジャー等も含む)との関係を見ると、人間関係が良好なほどその友人・知人とのコミュニケーション頻度が高い傾向にありますが、人間関係が良好だからコミュニケーション頻度が高い、と考えることもできます(図8)。集まりへの参加も含めた友人・知人とのコミュニケーション頻度が、現在の人間関係の良好さに大きく関係しています。

図6:現在の人間関係の良好さ(男女・年代別)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

図7:現役時代の集まりへの参加頻度(現在の人間関係の良好さ別)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

図8:現在のコミュニケーション頻度(現在の友人・知人との人間関係の良好さ別)

出所:NRI社会情報システム「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査(2024年)

 

NRI社会情報システムは、これからもデジタル技術と情報発信によって人口減社会における地域の活性化にコミットし、シニア就労にとどまらない地域の社会課題へ貢献していきます。

 

【ご参考】

調査概要

調査名 「シニア世代に学ぶ現役時代の過ごし方」に関するアンケート調査
実施時期 2024年10月5日~2024年11月5日
調査対象者 全国42か所のシルバー人材センター会員の65歳以上男女
対象者割付 男女・65~69歳、70~74歳、75~79歳、80歳以上で発送時に均等割付
地域区分、都市規模区分は令和5年住民基本台帳に準拠
調査方法 郵送法(紙調査票)
回収率 97.9%
有効回答数 1,009
主な調査項目
  • 現役時代(50歳時点)と現在の人付き合い
  • 家族や知人とのコミュニケーション頻度
  • 現役時代と現在の健康維持・増進の方法
  • 現在の健康状態
  • 現役時代と現在の資産形成方法
  • 現役時代の働き方、働き方に対する意識
  • デジタル行動、意識
  • 学習意向と学習したい内容、目的
  • 政策に対する考え方
  • 価値観(現役時代の働き方、人間関係)
  • 余暇活動
  • 各種家計状況
  1. 1シルバー人材センターとは、定年退職者などの高年齢者に、 そのライフスタイルに合わせた「臨時的かつ短期的又はその他の軽易な業務」を提供する組織。原則として市(区)町村単位に置かれており、国や地方公共団体の高齢社会対策を支える重要な組織として、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づいて事業を行う、 都道府県知事の指定を受けた公益法人です。2025年現在、全国に約1300か所、約70万人の会員がいます。原則として、60歳から会員になることができます。
    https://www.zsjc.or.jp/about/about_02.html
  2. 2調査対象であるシルバー人材センターの会員は、働ける程度の比較的健康状態が良好な集団であるため、一般の65歳以上男女を対象とした調査の回答傾向とは異なる可能性があることにご留意ください。また、本調査は紙調査票で実施しているため、設問単位での無回答が発生します。無回答は設問毎に集計から除外しているため、設問によってサンプル数が異なることにもご留意ください。