株式会社ジェイアール東日本企画(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:石川 明彦、以下「jeki」)と、株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤 花芽、以下「NRI」)は、新しい時代のメディアプランニングに関する共同研究を行いました。その結果、限られた予算でKPIを「購入意向」とするケースでは「デジタル×OOH (Out Of Home、交通広告や屋外広告など)」の組み合わせが他メディアを上回る成果を出すなど、従来のテレビ中心から最適配分が大きく変わる実態が明らかとなりました。メディア環境が大きく変化する中、新たな広告戦略立案の指針となる結果です。

jekiと、生活者のメディア接触を含むマーケティングデータ収集および分析のパイオニアであるNRIは、2021年より協業してOOHメディアの価値検証を行ってきました(末尾参照)。今回は第3弾としてNRI「インサイトシグナル」サービス(末尾参照)で収集したシングルソースパネルデータの分析のもと、現在のメディアプランの主軸であるテレビ、WEB、OOHの3メディアにおける最適予算配分の検証を行いました。
予算やKPI別の分析で見えてきたのは、条件によって大きく変動する最適解と、「デジタル×OOH」というメディアプランの可能性です。

社会のデジタルシフトに伴い、生活者のメディア接触が刻々と変化する中、メディアプランの最適解も大きく変動しています。今回の結果は新しい時代に適応するメディア戦略として有用なものとjekiとNRIは考えます。

研究の背景~メディア接触の時系列推移~

  • 新型コロナウイルスの国内での流行から今日にかけてのメディア接触の推移をみると、コロナに関係なく上昇傾向にあるWEB、下落傾向の新聞、コロナで一時的に上昇した後に下落傾向にあるテレビや雑誌、コロナでの急落後すぐに回復しほぼ横ばいのOOH(電車利用)と、メディアによってその傾向は異なります(下グラフ参照)。
  • この変動はメディア間のパワーバランスの変化を意味しており、それに伴いメディアプランの最適解が変容していくことを示唆するものと考えられます。これを受けて、現在のメディアプランの主軸を成すテレビ、デジタル、OOH(交通広告)の3メディアの適正配分について検証を行いました(検証結果は次頁)。

広告予算別 3メディアの適正配分(関東圏)

  • NRIインサイトシグナルのカバーエリアである関東圏で、3メディア(テレビ、デジタル、OOH)の適正予算配分について検証を行ったところ、条件(KPI、予算規模、ターゲット)によってその配分は大きく変動することが分かりました(下グラフ参照)。
  • KPIが「ブランド認知」の場合、予算5,000万円まではデジタル、1億円以上はテレビを軸とした展開が適正。一方、KPIが「購入意向」の場合、予算1.5億円まではデジタルとOOHを組み合わせた「デジタル×OOH」、2億円超の予算においては3メディアを融合した「テレビ×デジタル×OOH」が適正との結果になりました。
  • テレビ離れの進む20代では総じてデジタルとOOHの比率が高まる傾向が見られ、KPIがブランド認知でも予算1.5億円の場合はデジタル×OOHが有用、との結果も導き出されました。

結果の考察

  • 長期的視野のもと大規模な予算を投じて認知を高めていく広告キャンペーンでは、テレビを軸にデジタルを組み合わせたプランが有用、との結果が導き出された一方で、限られた予算で具体的な成果を求める場合には無駄打ちを抑えられるデジタルにOOHを組み合わせた「デジタル×OOH」が有用、との結果になりました。これは予算やKPIによって最適な打ち手が大きく変わることを示唆しています。
  • また、今回の結果は、メディアプランの軸が徐々にデジタルへシフトする中で、デジタルに掛け合わせる対象としてのOOHの有用性が高いことを示唆しています。特に関東圏でテレビ離れの進む若年層をターゲットにする場合には「デジタル×OOH」が実効性の高いメディアプランと考えられます。
  • 尚、予算やKPIで適正配分が大きく変動することに関しては、以下の通り考察しております。
    【予算規模による変動】小規模予算の場合、メディアの特性上一定規模のリーチをとりつつ有効フリークエンシー(ブランド認知や購入意向などの効果を得るために最低限必要な広告接触回数)を上げやすいデジタルとOOH(特に1日2回接触する交通メディア)への配分が適正との結果に。ただし予算規模が大きくなるにつれて広範にリーチしながら有効フリークエンシーを上げられるテレビを軸とした配分が適正になる。
    【KPIによる変動】KPIがブランド認知の場合、広範なリーチに優れるテレビがプランの軸になる(ただし小規模予算、若年層ターゲットの場合はデジタルが優位)。一方でKPIが購入意向の場合、ターゲティングができるデジタルを軸に、購買ポテンシャルの高い有職者が接触層に多く含まれるOOHを加えたプランが適正になる。
  • 以上の結果は、2頁で示す通り、生活者によるメディア接触の変容が少なからず影響しています。生活者のメディア接触が日々刻々と変化する中、マーケティングのパフォーマンスを高めるには変化を捉えた柔軟なメディア設計がカギを握っていると言えるのではないでしょうか。

本分析について

本プロジェクトの分析データは全て「NRIインサイトシグナル」によるものです。

「Insight Signal(インサイトシグナル)」

広告主(企業)の広告活動の効果をオリジナルデータを用いて測定する株式会社野村総合研究所のサービス。データは3,000名のシングルソースパネルに対する2ヶ月間のアンケート調査を年間通じて継続実施して取得。メディア別の広告効果を生活者の視点で評価することを目的に、同一の調査対象者に対して、テレビ、新聞、雑誌など多様なメディアの利用状況、広告との接触状況、購入意向、実際の購入行動などを測定。


※過去共同研究のリリース

■「ジェイアール東日本企画と野村総合研究所が共同で交通広告の価値研究を実施」(2021年6月)
https://www.jeki.co.jp/info/files/upload/20210624/20210624%E3%80%90HP%E3%80%91jeki%C3%97NRI_%E4%BA%A4%E9%80%9A%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%81%AE%E4%BE%A1%E5%80%A4%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B9.pdf

■「ジェイアール東日本企画と野村総合研究所が共同で「デジタル時代におけるメディアミックス」を検証」(2022年5月)
https://www.jeki.co.jp/info/files/upload/20220518/2022518%E3%80%90HP%E3%80%91jeki%C3%97NRI%E4%BA%A4%E9%80%9A%E5%BA%83%E5%91%8A%E3%81%AE%E4%BE%A1%E5%80%A4%E7%A0%94%E7%A9%B6.pdf