株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤花芽、以下「NRI」)は、2025年9月、日本企業のCIO(最高情報責任者)またはそれに準じる役職者を対象に「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」、以下「本調査」を実施し、517社から回答を得ました1。NRIでは2003年から本調査を毎年行っており、今回で23回目となります。主な調査結果は次のとおりです。
2026年度のIT予算について、「増加」を予測した企業は約半数
2025年度に、自社のIT予算2が前年度と比べ増加したと回答した企業は49.0%でした(図1)。減少したと回答した企業は7.5%で、半数近くの企業でIT予算の増加傾向が続いています。また、2026年度のIT予算については、47.5%の企業が2025年度よりも増加すると予想しており、減少すると予想した企業の7.8%を上回りました。このことから、2026年度も日本企業によるIT投資の増加が期待されます。
一方で、2025年度に自社のIT予算が前年度に比べて増加したと回答した企業の割合(49.0%)は、2024年度の調査結果(59.0%)と比較して10.0ポイント低下しており、日本企業のIT予算の伸びはやや鈍化していることがうかがえます。
図1:IT予算額の2024年度対比(増減)および2026年度の予想(時系列調査結果)

2025年度調査は情報システム部門のITおよびデジタル化予算、
2024年度以前はIT投資予算として情報システム担当役員などに回答を依頼。
n=345(2025年度実績および2026年度予想:全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数)
出所)NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」
生成AIが急速に普及、「導入済み」と「導入検討中」を合わせると76%に
生成AIを「導入済み」と回答した企業の割合は57.7%で、2023年度の33.8%、2024年度の44.8%に続いて増加しました(図2)。「今後検討したい」と答えた企業の割合は15.2%で、2024年度の調査結果と比べ4.8ポイント下がりました。ChatGPTやGeminiなどが汎用の会話型サービスとして普及し、導入を検討していた企業の一定数がすでに導入を終えたためと考えられます。今後は、活用方法の深化や適用領域の拡大に向けた活動が求められると言えます。
また、ソースコードを書かないか、または最小限の記述でプログラム開発を行う「ノーコード/ローコード開発」の導入率は2024年度から4.9ポイント伸びて51.0%となりました。システム開発の効率化や、専門知識がないユーザーが自ら開発を行う市民開発3における利用が拡大していると推測されます。
図2:新技術の導入または検討に関する状況

グラフは調査項目(27項目)のうち主要な17項目を掲載
n=310(2025年度:全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数)
出所)NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」
生成AI活用に関わるリテラシー不足やリスクへの対処が課題
生成AIの活用に関わる課題をたずねたところ、最も多く挙げられたのは「リテラシーやスキルが不足している」で、70.3%でした(図3)。これに次いで多く挙げられたのは「リスクを把握し管理することが難しい」で、48.5%でした。
また、2024年度の調査では、「リテラシーやスキルが不足している」ことを挙げた企業は65.4%でしたが、今回の調査では70.3%と4.9ポイント増加しました。生成AIの導入が進んだ結果、実際に業務で活かしていくためには一定のリテラシーやスキルが必要であると認識した企業が増えたことも、この増加の要因の一つと考えられます。
図3:生成AIの活用に関わる課題

複数選択式回答
n=340(全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数)
出所)NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」
約半数の企業でレガシーシステムが残存
情報システムにレガシーシステム4が存在している企業の割合は、アプリケーションについては47.3%、基盤については48.2%でした(図4)。2021年度調査と比較すると、アプリケーションは18.4ポイント、基盤系は13.7ポイント減少したものの、約半数の企業では依然としてレガシーシステムが残存している状況です。
また、レガシーシステムを継続利用する際の懸念や課題についてたずねたところ、「システムのブラックボックス化や有識者の不足」を挙げた企業が51.6%、「ベンダーサポートの終了」が50.1%という結果になりました(図5)。
図4:レガシーシステムの残存状況

残存率:情報システムにレガシーシステムが存在している企業の割合
n=311(2025年度:全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数)
出所)NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」
図5:レガシーシステムの継続利用に際しての懸念や課題意識

複数選択式回答
n=337(全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数)
出所)NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」
デジタル化を担う専門人材・スキルの獲得に苦戦
ITスキルの分野ごとに、社内・グループ内でケイパビリティを保有すべきと考えるか、およびそれらを保有しているかをたずねました。その結果、保有すべきという割合がもっとも高かったのは「プロジェクトマネージャー」で80.1%、次いで、デジタル技術を理解してそれをビジネスに活かすことができる「ITストラテジスト」で71.9%でした(図6)。一方、「ITストラテジスト」を保有していると回答した企業は29.6%で、ニーズが満たされていないことが伺えます。このようなニーズと実態の乖離傾向は、ビジネス系やテクノロジー系のデジタル人材全般で確認できます。
図6:人材・スキルの保有意向と保有状況

n=331(全回答企業数から該当設問への無回答企業を除く有効回答企業数)
出所)NRI「ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年)」
日本企業のIT投資は増加傾向が続き、生成AIが急速に普及している一方、リテラシーの不足やリスクへの対処、レガシーシステムの残存、そして人材の不足は、日本企業の重要な課題となっていることが分かりました。
NRIグループは、これからも企業のIT・デジタル化について現状を明らかにするとともに、時流と共に生じる課題の解決をさまざまな視点から推進・支援していきます。
- 1調査概要は末尾の「ご参考」をご参照ください。
- 2本稿における「IT予算」とは支出ベース金額です。社内人件費を含みますが、減価償却費は含みません。
- 3非エンジニアが支援ツールを活用し業務アプリケーションを開発すること。
- 4本調査において、レガシーシステムとは、メインフレームやオフコン、COBOL、PL/I、RPG、アセンブラといったプログラミング言語など、比較的古い技術で構築されたものを指します。
【ご参考(調査概要)】
| 調査名 | ユーザー企業のIT活用実態調査(2025年) |
|---|---|
| 調査目的 | 日本企業のIT活用状況に関する定点観測 |
| 実施時期 | 2025年9月 |
| 調査方法 | 事前に郵送で調査協力依頼を送付した後、Webで調査票の回答を回収 |
| 調査対象 | 日本国内に本社を持つ、売上高上位企業約3,000社 |
| 調査回答者 | 各社でCIOまたはIT担当役員、経営企画担当役員、IT部門長、経営企画部門長または それに準じる役職者 |
| 回答企業数 | 517社 |
| 回答企業業種 | 機械製造、素材・他製造、建設、流通、金融、運輸・通信・インフラなど |
| 主な調査項目 | 「情報システム部門とIT投資」「デジタル化の推進体制」「人材とスキル」 「マネジメントとガバナンス」「IT活用の領域と技術」「デジタル化の推進状況」など |