株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤 花芽)は、キャッシュレス決済1や家電量販店、ECプラットフォーマーなど、国内12業界2の主要企業による1年間のポイント・マイレージ発行量を推計可能な範囲で金額換算した「年間最少発行額3(以下「発行額」)」について、2024年度までの実績推計および2029年度までの予測を行いました。また、2020年度~2023年度は、行政のキャッシュレス促進施策などで発行されるポイントについても推計しました。

2024年度の民間発行額は1兆3,695億円で、前年度から約6%の増加

2024年度の民間部門における発行額(以下「民間発行額」)は、前年度比約6%増の1兆3,695億円と推計され、過去最高額を更新しました(図1)。
この成長を牽引しているのは、クレジットカードやコード決済などの「キャッシュレス決済」です。同分野の発行額は前年度の6,541億円から約12%増加した約7,318億円に達し、民間発行額全体の約53%を占めています(表1)。
こうした拡大の背景には、過去の「キャッシュレス・ポイント還元事業」や「マイナポイント事業」などの行政施策、ならびに新型コロナウイルス感染症対策を契機とした「接触機会の削減」ニーズにより、キャッシュレス決済が生活インフラとして消費者・事業者の双方に浸透したことが挙げられます。加えて、昨今の物価高騰の影響もその一因です。消費者の節約志向が強まり、実質的な値引きとなるポイント獲得を目的としたキャッシュレス決済の利用が加速しました。
なお、2024年度は、ポイントを活用した大規模な行政施策が実施されなかったため、推計対象は民間発行額のみとしています。
また、本調査では、ポイントカード提示などのいわゆる「ポイ活」を行っていれば獲得できたポイント(取りこぼしポイント)が、年間8,859億円規模に上ると推計しています。今後、消費者のポイント獲得が活発になると、その規模は縮小し、ひいてはポイント発行規模拡大の一因となる可能性があります。

図1:国内におけるポイント・マイレージの年間最少発行額の実績値(推計)と予測値4

出所:NRI

 

表1:国内12業界別 2024年度のポイント・マイレージ年間最少発行額と算出の根拠

※本資料に記載されている数値は四捨五入を行っているため、合計値などが一致しない場合があります。

出所:NRI

2029年度には発行額が1兆7,000億円を突破、今後は金融業界の存在感が増す見込み

民間発行額は今後も安定成長を続け、2029年度には1兆7,257億円に達すると予測しています。拡大をけん引するのは、引き続き「キャッシュレス決済」の普及です。公共交通機関でのタッチ決済の導入や、中小飲食店・医療機関など、これまで現金決済が主流であった領域への導入が進むことで、ポイント発行の土台となるキャッシュレス決済の取扱高は拡大していく見込みです。
加えて、ポイントをインセンティブとして自社経済圏を強化しようとする動きが、金融グループの間で加速しています。三井住友フィナンシャルグループによる総合金融サービス「Olive」や、三菱UFJフィナンシャル・グループによる新たな金融ブランド「エムット」は、銀行や証券といった金融サービスの利用状況に応じて、特定の対象店舗におけるクレジットカード決済時のポイント還元率を段階的に引き上げるプログラムを提供し、グループ横断的な利用を促しています。

金融業界は、「金利ある世界」への転換で収益環境の好転が見込まれる一方、預金などの資金獲得競争が激化しています。こうした中、三井住友フィナンシャルグループと三菱UFJフィナンシャル・グループは資産運用やローンなどの周辺サービスを利用するほど還元率が上がる仕組みを通じて他社への乗り換えを防いでいます。そして、キャッシュレス決済に紐づけたプログラム体系とすることで、幅広い顧客層との接点を確保するとともに、膨大な決済データの分析によりダイナミックかつ精緻なマーケティング施策が可能になることから、同様の取り組みが広がると考えられます。今後は、こうした金融各社によるキャッシュレス決済への優遇プログラムが、消費者のキャッシュレス利用をさらに後押しすることとなり、結果としてポイント発行額全体の底上げに繋がると考えられます。

NRIは今後も、ポイント・マイレージの市場動向を継続的に分析し、ビジネスを促進するポイントプログラムのあり方を提案していきます。

  1. 1キャッシュレス決済:クレジットカード・デビットカード・電子マネー・コード決済の4種類で構成。なお、キャッシュレス決済の利用では、決済ポイントに加え購買ポイントも付与されるケースがあるが、「キャッシュレス決済」では、決済ポイントのみが集計対象となっている。
  2. 2国内12業界の主要企業:国内でポイント・マイレージの発行を活発に行っている12業界(キャッシュレス決済、家電量販店、携帯電話、航空、ガソリンスタンド、総合スーパー、コンビニエンスストア、ECプラットフォーマー、百貨店、ドラッグストア、外食、ホームセンター)において、ポイントプログラムサービスを提供中かつ、売り上げが上位の企業。算出の対象社数は表1を参照。
  3. 3年間最少発行額:推計するポイント・マイレージの発行額は、各業界で集計対象とした企業の数が限られていること、また、来店キャンペーンなど購買金額にかかわらず発行されるものや、特別会員向けなどの追加発行ポイントを除いていること、加えて、行政主体のポイント発行に関しても、主要な施策のみの集計となっていることを踏まえ、「年間最少発行額」としている。
  4. 4実測値(推計)と予測値:行政のキャッシュレス促進施策等で発行されるポイントに関して、2025年度以降の数値は今後の政策に大きく影響されることから、推計は行っていない。
  5. 5 ポイント適用率:各社の総売り上げのうち、ポイントカードの提示などでポイントが付与される(ポイント制度が適用される)売り上げの比率。
  6. 6ポイント還元率:ポイントが利用者に還元される際に、その還元額が元の販売金額に占める比率。航空マイルの金額換算については、1マイル当たり1.5円としている。
  7. 7 決済取扱高:各キャッシュレス決済において決済利用された金額の合計値。ただし、クレジットカードのキャッシング、デビットカードの国内ATMにおける利用額、交通系電子マネーの交通利用額は除外している。

【ご参考:調査概要】

ポイント適用率の設定方法 NRIが実施した「消費者アンケート」の結果や、各種公開情報を参考に、業界ごとに5%刻みで設定。
ポイント還元率の設定方法 各種公開情報を参考に、主要企業の平均的なポイント付与率を業界基準値として採用した。航空マイルの金額換算については、1マイル当たり1.5円で設定。
ポイント・マイレージ年間最少発行額の推計方法 ポイント・マイレージ最少発行額=ポイント付与の基本指標となる数値×ポイント適用率×ポイント還元率。
有償旅客マイル 有料で搭乗する旅客ごとの飛行距離の総和。
マイナポイント関連発行額の推計方法 公表されているマイナポイント申込数から既存発行額を算出。
Go To Eat キャンペーンの集計方法 Go To Eatキャンペーンの内、オンライン飲食予約によるポイント付与のみを集計。