株式会社野村総合研究所(以下「NRI」、本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤 花芽)は、経済産業省からの「令和7年度補正 産業構造変化を見据えたスキル可視化・リスキリング基盤整備事業(労働市場データを活用したスキル需給・スキル体系の可視化に関する調査事業)」(以下「本事業」)受託を通じて、AIをはじめとするデータ分析技術を駆使し、業種横断的なスキル定義の作成と、労働市場におけるスキル需給の可視化に向けた取り組みを2026年3月より開始しました。

取り組みの背景:国家的な人材需給のミスマッチ解消に向けて

日本では、産業構造の変化と少子高齢化による人口減少が進む中で、将来的に業種間・職種間における人材需給のミスマッチが発生するリスクが予見されています。経済産業省による2040年の就業構造推計(改訂版)1によると「2040年には事務職(約440万人)や文系人材(約80万人)が余剰、AI・ロボット等利活用人材(約340万人)を含む専門職や現場人材(生産工程従事者、建設・採掘従事者、サービス職業従事者等、約260万人)、理系人材(約120万人)が不足する可能性」が報告されています。将来、各産業で必要な人材を確保するためには、スキルと処遇の連動も視野に入れ、産業ニーズの大きいスキルの特定と、求められるスキルを持った人材の充足状況を踏まえた「スキルベースの労働需給の可視化」が求められています。NRIはこれまで数多くの民間企業に対して、NRIのサービス「Talent Market Place(タレントマーケットプレイス)」2を通じて、各社ごとにカスタマイズされた社内労働市場の形成を総合的に支援してきました。NRIは、同システムを用いた各企業での事業戦略に紐づく独自スキルの定義や、最適な人材配置・リスキリングを実現してきた豊富な実績とノウハウが評価され、2026年3月、本事業の受託に至りました。

取り組みの概要:AIなどの分析技術を活用したマクロな労働市場の可視化

本事業では、NRIが民間企業支援で培ってきた人的資本経営の知見と、最新のAI技術を掛け合わせ、主に以下の取り組みを実施します。

  • AIなどの分析技術を活用した業種横断的なスキル体系の整理と定義づけ : 企業の求人情報や官民の各種プラットフォームなどで収集した情報をもとに、AIなどの分析技術を活用した効果的・効率的な手法で業種横断的なスキル定義を作成します。業種横断的なスキルを具体的に定義することで、ひとりの労働者が複数の業界で活躍するために必要なスキルを明らかにし、キャリアパスの検討や職業移動・リスキリングを推進する基盤を整備します。また、AIなどの分析技術を活用してスキル定義を自動的に改善・更新する仕組みも構築します。
  • スキルベースの労働需給および処遇の関係性の分析 : 統計情報などをスキルと紐付けてスキルごとの需要・供給バランスや、スキルを持つことによる処遇への影響を分析するほか、求人票などの膨大なデータをAIなどの分析技術を用いて分析し、企業が採用活動において特に重視しているスキルを特定します。
  • リスキリング講座などの供給実態の定量化 : 民間事業者や教育機関が提供するリスキリング・リカレント教育講座などにより供給されるスキル向上機会について、質や量の数値化を行い、需要の高いスキルとの相関関係を分析します。これらを通じ、多様な主体が提供している教育機会が、どの分野でどの程度充足しているかをマクロ的に把握し、労働政策・教育政策に反映することを後押しします。

今後の展望:国と企業の双方向から「新しい働き方」を支援

本事業は、日本全体のリソースシフト・リスキリングをマクロに捉えるだけでなく、個人の職種転換やリスキリングの重点化において活用できる分析を行うものです。業種横断で整えられたスキル定義をベースに、スキル需要とリスキリング講座などにおける提供スキルの状況を把握することで、今後の戦略的な産業人材育成につなげていくことが期待されます。
NRIは、本事業を通じて日本全体の労働市場の発展に貢献するとともに、本事業の成果を、業種横断スキル定義を踏まえた各企業におけるスキル定義の構築、労働市場の需給バランスを踏まえた各企業における人材戦略の策定などの形で還元し、日本の労働市場全体における円滑なリソースシフトとリスキリングを支援していきます。

  • 1詳細は次のURLをご参照ください。https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/030_s02_00.pdf
  • 2Talent Market Place(タレントマーケットプレイス)は、「企業が行うべき業務」と「人材の意志・能力」を結び付けるバーチャルな「社内人材市場」を形成し、業務×人材の最適なマッチングを実現する、NRIが開発したシステムです。ここでは、現場や従業員が主体的に入力した情報(今いる人材、今後欲しい人材、従業員の就労希望等)と、業務に関する情報(新たな人材を求める業務、各業務に必要な能力等)が可視化されており、透明度のある社内人材市場を形成したうえで、AIが人材と業務との出会いをレコメンド(推奨)する点が特長です。次の資料もご参照ください。
    人材戦略と事業戦略を連動させる「Talent Market Place」―生成AIを活用した人的資本経営プラットフォーム構
    https://www.nri.com/jp/journal/2024/0215