株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長:柳澤花芽、以下「NRI」)は、日本における「2026~2040年度の新設住宅着工戸数」「2025~2040年のリフォーム市場規模」を推計・予測しました。あわせて、既存ストックの省エネ改修等を含む「ZEHの普及シナリオ」を提言しました。主な結果は以下のとおりです1。
1.新設住宅着工戸数(2026~2040年度の予測)
新設住宅着工戸数は、2030年度には80万戸、2040年度には61万戸と見込まれます(図1)。
図1:新設住宅着工戸数の実績と予測(全体)

出所:実績値は国土交通省「住宅着工統計」より。予測値はNRI。
利用関係別2に見ると、2040年度には持家14万戸(2025年度20万戸)、分譲住宅18万戸(同20万戸)、貸家(給与住宅を含む)29万戸(同32万戸)と見込まれます(図2)。
図2:新設住宅着工戸数の実績と予測(利用関係別)

出所:実績値は国土交通省「住宅着工統計」より。予測値はNRI。
2.リフォーム市場規模(2025~2040年の推計・予測)
広義のリフォーム市場規模3は、今後もわずかながら成長を続け、2040年には9.2兆円に達する見込みです(2024年は約8.3兆円)。狭義のリフォーム市場規模は、それより約1.2兆円小さい規模と見込まれます(図3)。
図3:リフォーム市場規模の実績と予測

出所:実績値は住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住宅リフォームの市場規模」より。予測値はNRI。
3.ZEH・GX ZEHの2050年目標に向けた普及シナリオ
ZEH(net-Zero Energy House)とは「年間の一次エネルギー消費量4の収支をゼロとすることを目指した住宅」であり、光熱費が抑えられ、脱炭素社会に貢献する住宅として注目されています。2024年度においては新築住宅全体の約3割がZEHの条件を満たしており、とりわけ、大手ハウスメーカーが手掛ける新築住宅ではZEH比率が8割弱と高水準にあります。また、ZEHを超えるGX ZEH基準5が2027年4月より適用されるとともに、遅くとも2030年までには新築時の義務基準がZEH基準の水準の省エネ性能に引き上がる予定6です。
ただし、脱炭素社会に向けた住宅対策は完了ではありません。新築の数は年間数十万戸ですが、居住世帯のある住宅ストック7(以下「居住ストック」という)の数は2025年度5,626万戸(2050年度には5,168万戸8)であり、新築は居住ストックの約1%という規模でしかありません。国は「2050年に住宅ストック平均でのZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指す9」という目標を掲げていますが、今後新築される住宅のほか、過去に建設された既存住宅の省エネ改修(リフォーム)、および老朽化住宅の除却という3本柱で考えることが必要です。
上記目標を達成する時の居住ストック数分布(NRI推計)は図4のとおりであり、下記すべてを実施することが求められます。
- 2026年度以降の新築住宅1,566万戸は可能な限り高い省エネ性能を優先し、500万戸の50%省エネ住宅、800万戸の35%省エネ住宅という居住ストック数分布に移行させること
- 過去に建設され最新の省エネ基準を満たさない既存住宅を中心に、3,000万戸の省エネ改修(2026年度から2050年度までの25年間で年平均120万戸の省エネ改修)を実施すること
- 2,025万戸の既存住宅除却(これまでの傾向から自然体で除却される分に加え、25年間で年平均56万戸の追加除却)を実施すること
図4:居住ストック数分布の2025年度現況と2050年度推計

4.まとめ
新設住宅着工戸数は長期的に減少傾向が続き、2040年度には全体として61万戸(2025年度比約18%減)にまで落ち込む見通しです。
足元の住宅市場では、住宅価格の高騰や金利上昇に所得の伸びが追い付かないことにより、実需が縮小しています。結果として、消費者のニーズは賃貸や中古住宅へとシフトしています。
こうした市場環境の変化の中でも、脱炭素化への対応は喫緊の課題です。国が掲げる2050年目標「ストック平均でのZEH基準の水準の省エネ性能確保」の達成には、もはや従来のZEH基準(20%省エネ)にとどまらず、「GX ZEH」をはじめとした、さらに高性能な新築住宅の供給が不可欠となります。
しかし、新築市場自体が縮小する中、新築の性能向上だけではストック全体での目標達成には到底たどり着きません。本目標を達成するためには、「1.6戸の高性能な新築を建てると同時に、3戸の既存住宅を省エネ改修し、さらに2戸の老朽化住宅を除却する」という、これまでにない大規模なストックの新陳代謝が求められます。
今後の脱炭素化と良質な住環境インフラの構築は、住宅メーカーの自助努力や新築ビジネスの延長だけでは困難です。既存ストックに対する戦略的な改修支援や、老朽化住宅の計画的な除却推進など、新築・改修・除却の三位一体を通じた官民連携の取り組みが急務となっています。
- 1本資料では四捨五入等の処理を施した数値を記載しています。
- 2利用関係別:「住宅着工統計」上の区分で、持家は「建築主が自分で居住する目的で建築するもの」、分譲は「建て売りまたは分譲の目的で建築するもの」、貸家(給与住宅を含む)は「建築主が賃貸する目的で建築するもの」を指します。
- 3広義と狭義のリフォーム市場規模の定義:狭義のリフォーム市場規模は、「住宅着工統計上『新設住宅』に計上される増築・改築工事」および「設備等の修繕維持費」を指します。広義のリフォーム市場規模は、狭義のリフォーム市場規模に「エアコンや家具等のリフォームに関連する耐久消費財、インテリア商品等の購入費を含めた金額」を加えたものです(住宅リフォーム・紛争処理支援センターより)。
- 4一次エネルギー消費量とは、住宅・建築物で使われている設備機器の消費エネルギーを熱量に換算した値のこと。冷暖房、換気、給湯、照明、太陽光発電システム、コージェネレーション設備が含まれます。
- 5GX ZEH基準とは、断熱性能についてZEH基準よりも一段階高めること、省エネ性能について基準となる一次エネルギー消費量から35%以上削減(ZEH基準では20%以上削減)とすること等、が要求される住宅の新しい基準です。
経済産業省資源エネルギー庁「GX ZEH・GX ZEH-M定義<戸建住宅・集合住宅>」、2025年9月
https://www.meti.go.jp/press/2025/09/20250926002/20250926002-1.pdf - 6地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)
https://www.env.go.jp/content/000291669.pdf 及び
第7次エネルギー基本計画(令和7年2月18日閣議決定)
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-1.pdf - 7住宅ストックとは、過去に建設されて現在も存在している住宅の総量を指します。新設住宅着工は一定期間内に新規に供給された住宅の量(フロー)を指し、ストックとフローという表現の使い分けがなされます。
- 8NRIでは、居住ストック数と世帯数との相関関係が高いという考えのもと、世帯数の2050年予測(国立社会保障・人口問題研究所)から2050年の居住ストック数が5,168万戸となることが見込まれると推測しています。
- 9地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)
https://www.env.go.jp/content/000291669.pdf 及び
第7次エネルギー基本計画(令和7年2月18日閣議決定)
https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-1.pdf