NEDO、(株)京三製作所、(株)野村総合研究所は、ロシアのモスクワ市交通管制センター(TsODD)と共同で実施していた高度交通信号システムの実証事業を完了しました。
本実証事業では、モスクワ市内の深刻な交通渋滞の解決に向けて、同市内の5カ所の連続する交差点に同システムを設置し、車の移動時間の短縮効果の検証を行い、その結果、混雑時間帯で最大40%の渋滞緩和効果を確認しました。
今回の成果により、車の燃料消費低減によるCO2排出量削減と、移動時間短縮による経済活動の活性化への貢献が期待できます。また本実証事業で得られた成果をもとに、今後、ロシアの他の地域への高度交通信号システムの展開を目指します。
図1 朝の混雑時間帯における渋滞緩和の様子
(左:実証前 右:実証後、写真奥行き方向がモスクワ市内に向かう方向)
概要
ロシアは、国全体の近代化を目指し、様々なインフラ投資計画を打ち出しています。なかでも、首都であるモスクワ市は、欧州最大の都市として成長を続けていますが、その中で、市内の慢性的な交通渋滞は極めて深刻な問題であり、ロシアの経済活動を阻害する大きな原因の一つと考えられています。このため、現在、モスクワ市は大規模な信号システムの更新をはじめ、交通ソリューションの刷新を図ろうとしています。
このような背景のもと、NEDOは、モスクワ市と高度交通信号システム実証事業の協力に関する基本協定書(MOU)を2015年12月21日に締結し、委託先である株式会社京三製作所、株式会社野村総合研究所とともに、モスクワ市交通管制センター(TsODD)と協力し、交通渋滞緩和のための高度交通信号システム(ARTEMIS※)の実証事業を進めてきました。具体的には、日本で交通渋滞緩和実績のある自律分散信号システムを市内の渋滞発生道路の連続した5カ所の交差点に設置し、その道路における車の移動時間削減効果の検証を行いました。
この度、本実証事業が完了し、その結果、混雑時間帯で最大40%の渋滞緩和効果を確認しました。今回の成果により、車の燃料消費の低減によるCO2排出量削減と、移動時間短縮による経済活動の活性化への貢献が期待できます。
また今後、本実証事業で得られた成果をもとに、ロシアの他の地域への高度交通信号システムの展開を目指します。
今回の成果
実証を行ったARTEMISは、信号機を制御する信号制御機(コントローラ)と、車両を検知する感知器およびこれらを結びつける通信ネットワークから構成されています。本システムは、国内外で一般的な管制センターの中央装置を介して信号機をコントロールする制御方式とは異なり、コントローラ間でリアルタイムに交通情報や信号機制御情報を交換して、交差点に流入する交通量を予測し、"信号待ち時間が最小"になるように信号サイクルを自律的に制御します。大規模な中央管理システムを必要としないため、渋滞緩和のための初期導入コストを抑えられるというメリットもあります。
図2 実証事業システム構成図
今回の実証では、モスクワ市内のオニェジスカヤ通りの連続した5カ所の交差点(全長約2km)を走行したときの車の移動時間を計測しました。計測は朝夕の混雑時間帯に行い、実証前の状態で1週間、実証後の状態で1週間計測しました。その結果、最も渋滞する朝の混雑時間帯において、モスクワ市内に向かう方向の車の移動時間を40%短縮することに成功しました。
実証前平均 | 実証後平均 | 短縮秒数 | 短縮率 |
---|---|---|---|
7分54秒(474秒) | 4分46秒(286秒) | 3分8秒(188秒) | 40% |
図3 朝の混雑時間帯におけるモスクワ市内に向かう車の移動時間の計測結果
実証完了式
実証事業の完了にあたり、10月31日に実証完了式を現地で執り行いました。
式典には、日本側からはNEDO、(株)京三製作所、(株)野村総合研究所、在ロシア日本国大使館、ロシア側からはモスクワ市政府やロシア連邦政府関係者など、多数の関係者が参加しました。
【用語解説】
- ARTEMIS
Autonomous and Real‐Time signal control based on Estimation traffic demand for Minimization of Signal waiting timeの略。
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省エネルギー部 担当:沼田
TEL:044-520-5284
国際部 担当:田中
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(株)野村総合研究所
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