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米国トランプ政権が日本企業に及ぼす影響に関するアンケート調査を実施

~ 保護主義的な動きの影響を懸念しつつも、生産拠点の移転など大幅な戦略の見直しには至らず ~

2017/11/01

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:此本 臣吾、以下NRI)は、米国に進出している日本企業136社に対して、米国トランプ政権が掲げる政策に関するアンケート調査を実施しました。トランプ政権が掲げる政策の実現可能性に対する評価や、自社事業への影響、さらには同政権の動きについての情報収集体制の整備状況などを調査・分析しています。 主な調査結果は、以下の通りです。

  1. 約半数の企業が、TPP・NAFTAなど、貿易に関する包括的枠組みの見直しの可能性が高いと回答(図1参照)
  2. 「NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉」は44.9%の企業が自社にマイナスのインパクトがあると回答(図2参照)
  3. 海外売上高比率が40%以上の企業でも、トランプ政権の発足可能性やその影響に対する検討を選挙前から進めていたのは約半数(図3参照)
  4. トランプ政権発足を受けて、現地生産・現地調達を高める動きはあるもののグローバルな生産拠点の再配置まで踏み込む動きは起こっていない(図4,5参照)
  5. 米国内において、景気・経済成長を重視しつつも、紛争・テロを主要リスクとして強く認識する企業が半数超(図6,7参照)

 

詳細は【ご参考】をご参照ください。

ご参考

1. 約半数の企業が、TPP・NAFTAなど、貿易に関する包括的枠組みの見直しの可能性が高いと回答

トランプ政権が掲げている各種政策およびそれに基づいて引き起こされる変化のうち、「米国抜きでのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の発効」「NAFTA(北米自由貿易協定)再交渉」「日米2国間の通商交渉」については、約半数の企業が「実現する可能性が高い」と回答しています(「実現する可能性が高い」とする企業の割合、それぞれ52.9%、 52.9%、 50.7%)。

一方、「通商拡大法232条の行使」「国境調整税の導入」といった個別政策について、「実現する可能性が高い」と回答した企業の割合は、いずれも3割を下回る水準(それぞれ28.7%、19.9%)にとどまり、実現性に懐疑的な見方をしている企業が多数に及んでいます(図1)。

図1:トランプ政権が掲げる各種政策およびそれに基づく変化についての実現可能性

図1:トランプ政権が掲げる各種政策およびそれに基づく変化についての実現可能性

2. 「NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉」は44.9%の企業が自社にマイナスのインパクトがあると回答

それぞれの政策や変化が自社事業に与える影響に関しては、 まず「NAFTA再交渉」 「国境調整税の導入」については、他の項目よりも多くの企業が「マイナスの影響がある」と考えています(それぞれ44.9%、41.9%)。一方、 「米国抜きでのTPPの発効」 「日米2国間の通商交渉」など、見直しや交渉の内容が不透明な政策については、「評価をつけにくい(「どちらとも言えない」と回答した企業が、それぞれ70.6%、61.0%)」との回答割合が高くなりました(図2)。

「NAFTA再交渉」については、マイナスのインパクトを見込むものの、他の貿易政策変更の影響については、そもそもの施策の実現性も含め、評価し切れていないというのが多くの企業の実態と言えます。

図2:各種政策が実現された場合の自社事業への影響

図2:各種政策が実現された場合の自社事業への影響

3. 海外売上高比率が40%以上の企業でも、トランプ政権の発足可能性やその影響に対する検討を選挙前から進めていたのは約半数

トランプ政権が発足する可能性およびその影響について、政権発足以前に検討を開始した企業の割合は、海外売上高比率が20%未満の場合10.3%にとどまる一方、海外売上高比率が20%以上40%未満の場合は23.5%、海外売上高比率が40%以上の場合は27.9%と、グローバル化が進んでいる企業ほど、早い時期から検討を開始した割合が高くなっています(図3)。

ただし、海外売上高比率が40%以上の企業でも、37.7%は政権が発足してからその影響などの検討を開始しており、また31.1%は政権発足以降も検討を行っていません。トランプ政権の発足については、可能性が低いと見られていたことや、政権発足後も体制や出される政策の動きが不安定であったことなどが影響していると考えられます。

図3:トランプ政権の実現可能性や影響に対する検討を開始した時期
(海外売上高比率別)

図3:トランプ政権の実現可能性や影響に対する検討を開始した時期(海外売上高比率別)

4. トランプ政権発足を受けて、現地生産・現地調達を高める動きはあるもののグローバルな生産拠点の再配置まで踏み込む動きは起こっていない

一部企業ではすでに、トランプ政権による保護主義的な政策の導入を見据えたアクションがとられ始めています。「現地生産比率の改善」については、39.7%の企業が具体的な「行動に着手しているか、検討を進めている」と回答しており、「今後検討する予定」と回答した企業と合わせると、47.6%の企業が、何らかの施策を進める意向を示しています。「現地調達比率の改善」「販売品に占める米国産品の拡充」についても、同様の傾向が見られます。

一方、「事業拠点の米国外から米国内への移転」「米国人労働者の雇用比率の改善」については、多くの企業が「検討の予定はない」との意向を示しています(それぞれ、65.1%、49.2%)。この結果から、拠点再配置や雇用先の変更は施策にかかるコストや影響が大きく、不確実性が高いトランプ政権下では施策に踏み切りにくいことがうかがえます(図4)。

トランプ政権の保護主義的な政策をにらみ、米国内での生産や調達の比率は高めつつも、米国に生産拠点を集約するといった極端な施策には踏み出さず、中長期的な観点から最適なバランスを探ろうという企業の姿がうかがえます。

先行きの読みにくいトランプ政権ですが、各社の米国事業が自社の事業全体に占める重要度については、トランプ政権下であっても変化はないとする企業が多いという結果が得られました。米国事業の重要度合いを「現在と変わらない」とする企業の割合は、海外売上高比率の程度にかかわらず50.0%~57.4%と、半数以上の企業が、現状維持を想定しています(図5)。

図4:米国事業の拡大に向けた各取り組みの着手・検討状況

図4:米国事業の拡大に向けた各取り組みの着手・検討状況

(注)「トランプ政権の動向を受け、米国事業の拡大に着手しているか、検討を進めている」と回答した63社のみに対する設問

図5:自社事業全体における米国事業の重要度合いの変化
(海外売上高比率別)

図5:自社事業全体における米国事業の重要度合いの変化(海外売上高比率別)

5.米国内において、景気・経済成長を重視しつつも、紛争・テロを主要リスクとして強く認識する企業が半数超

米国内における各種リスク要因が自社に影響を与えるリスクの程度について聞いたところ、「景気や経済成長などの動向」がリスクとなる可能性が「高い」または「やや高い」と回答した企業は、83.1%に上りました。一方で、「政策・法令・規制の変化や政権の動向」「紛争やテロ攻撃、および付随する国際協力体制の変化」をリスクとして捉えている企業は、それぞれ72.8%、57.4%となりました(「やや高い」を含む。図6)。

さらに、それらのリスクが顕在化した場合に自社事業に与える影響について聞いたところ、最も多くの企業が「マイナスに影響する」と答えた項目は、「紛争やテロ攻撃、および付随する国際協力体制の変化」(47.8%)でした(図7)。

図6:米国内における各種のリスク要因の重視度合い

図6:米国内における各種のリスク要因の重視度合い

図7:米国内において各リスク要因が発生した場合の自社米国事業に対する影響

図7:米国内において各リスク要因が発生した場合の自社米国事業に対する影響

調査概要

  • 調査名
    米国トランプ政権が日本企業に及ぼす影響に関するアンケート調査
  • 対象および回収サンプル数
    「海外進出企業総覧」「会社四季報」等より抽出した米国に進出している日本企業 1,238社に対し実施(有効回答 136社、回収率11%)
  • 調査方法
    郵送によるアンケート調査
  • 実施時期
    2017年8月1日~9月30日
  • 主な調査項目
    米国事業の展開状況と今後の方向性
    トランプ政権が掲げる各種政策の実現可能性に対する評価
    トランプ政権が掲げる各種政策が実現された場合の自社事業への影響
    トランプ政権の実現可能性や影響に対する情報収集の状況

 

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ

株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 十河、坂

TEL:03-5877-7100
E-mail: kouhou@nri.co.jp

本調査の担当


株式会社野村総合研究所
未来創発センター 戦略企画室 中島

コーポレートイノベーションコンサルティング部 佐藤