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野村総合研究所、日本の金融機関向けに「顧客本位の業務運営」の測定指標と管理手法を開発

〜金融機関によるCX戦略の導入・実現を推進〜

2019/09/03

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:此本臣吾、以下「NRI」)は、一橋大学の一條和生教授(同大学 大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻長)とともに、顧客本位の業務運営に取り組む日本の金融機関で活用されることを目的に、CX(カスタマー・エクスペリエンス:顧客経験価値)指標とCX管理手法を開発し、このほど提供を開始しました。

開発の背景-顧客ロイヤルティ指標NPS®が抱える課題

顧客ロイヤルティを測定する指標の1つにNPS®1があります。NPS®の有効性は、国内外の様々な研究や事例が示してきましたが、日本の金融機関で活用する場合、以下の問題を内包していることが個人投資家を対象として行ったNRIの調査で分かりました(調査概要は図表1を参照)。

  • ノイズとなる考え方を持つ人の割合が高い
    ノイズとは、顧客ロイヤルティとは直接関係がない理由によって、顧客ロイヤルティの測定を妨げる「人の考え方」を指します。「人に勧める可能性」を11段階で聞くことで顧客ロイヤルティを測定しようとするNPS®においては、「そもそも金融機関は人に勧めるものではない」という考え方が、ノイズとなります。
    今回NRIが行った調査では、「金融機関は、人に勧めるものではない」と考えている人が全回答者2の約80%を占めました。また、20代の約70%から70以上の約90%へと、年齢層が高くなるほど、ノイズとなる「金融機関は、人に勧めるものではない」と考える回答者の割合が高くなることも分かりました(図表2参照)。この考え方が、NPS®の数値に影響がなければ問題となりませんが、調査結果では、「全回答者」と「ノイズとなる考え方を持つ人を除いた回答者」の間で、NPS®の値に大きな開きが出ました。
    具体的には、もっとも多くの金融資産を銀行に預けている人を対象にした場合では、「全回答者」のNPS®値が「-72.1%」であるのに対し、「ノイズとなる考え方を持つ人を除いた回答者」では「-37.8%」となり、もっとも多くの金融資産を証券会社に預けている人を対象にした場合では、「全回答者」が「-68.4%」であるのに対し、「ノイズとなる考え方を持つ人を除いた回答者」では「-30.4%」という結果になりました。
  • ビジネス指標との相関が弱い
    顧客本位の業務を実践しようとするCX先進企業が、顧客ロイヤルティ指標を経営指標や社員の業績評価に採用する理由は、社員が契約数や手数料収入といった目先の収益を高める行動だけに走ることを抑制し、顧客ロイヤルティ指標を高める行動へ向かわせる意図があります。それは、顧客ロイヤルティ指標を上げれば、収益も上がるという相関関係が成り立つことによってできることです。
    NRIでは、「対象金融機関への預入金額」「対象金融機関でのリスク性商品への投資金額」「ウォレットシェア(顧客の全金融資産に対する、対象金融機関への預入金額の割合)」などのビジネス指標と、「推奨意向(NPS®)」との相関関係を分析しました。その結果、ノイズとなる考え方を持つ回答者を除いてもNPS®との間に強い相関(相関係数0.7以上)が見られたビジネス指標は、もっとも多くの金融資産を銀行に預けている人の「対象金融機関への預入金額」「対象金融機関でのリスク性商品への投資金額」に限られました(図表4参照)。

CX戦略実現に向けた日本の金融機関にふさわしい指標と管理手法

  • ビジネス指標との相関が強いCX指標
    数多くある顧客ロイヤルティ指標の中で、一條教授とNRIが着目したのは、「推奨意向(NPS®)」と同じ行動的ロイヤルティ指標に分類される、「継続意向(この先、他社に乗り換えることなく、○○をメイン銀行またはメイン証券として利用し続ける可能性はどのくらいありますか。)」と「購入意向(今後も○○で、リスク性商品の売買・取引・運用をする可能性はどのくらいありますか。)」です。「推奨意向(NPS®)」とこれら2つは、ノイズなど日本の金融機関特有の問題をお互いが緩和しあう関係にあると考え、その3つを組み合わせた「CX指標」を定義しました(図表5参照)。
    今回の調査では、「CX指標は、多くのビジネス指標と強い相関が見られる」という結果が得られました(図表6参照)。金融機関が「CX指標」を高める方向の行動をとれば、顧客ロイヤルティを高め、結果として収益も上がるという健全な業務運営の確立が可能になると考えられます。
  • 顧客の受取価値と企業の収益、双方の向上を目指すCX管理手法
    顧客本位の業務運営では、顧客の受取価値3の持続的な向上と、企業としての収益向上の両立が求められます。NRIでは、その両立を可能にするCX管理手法(NRI CXMM:NRI CX Management Methodology)を開発しました。
    NRI CXMM では、まずCX指標(「継続意向」「購入意向」「推奨意向(NPS®)」)といった行動的ロイヤルティ指標に影響を与える感情的ロイヤルティを示す指標として、「信頼性」「利便性」「経済合理性」を取り上げました(図表7参照)。さらに、その感情的ロイヤルティを生み出す、現状の金融機関からの受取価値を、期待不確認理論(Expectation-Disconfirmation Theory)4で評価する方法を取り入れています。「期待」と「評価」の両方を数値化することで、顧客がその金融機関に期待することとその評価の度合いが分かり、金融機関側では他社と差別化すべきポイントや自社の弱点を特定することができます。また、期待と評価のギャップの数値「評価-期待」とCX指標との相関関係を分析することで、優先して取り組むべき課題を特定できます。

NRIでは、今回開発したCX指標とCX管理手法(NRI CXMM)を活用して、日本の金融機関が「顧客本位の業務運営」の推進・定着に向けた「顧客ロイヤルティ測定のためのアンケート設計」や、「CX指標を向上させるポイント」「他社との差別化ポイント」の分析と改善施策の立案、さらに「CX指標の反映に基づく業務改革」等のサービスを提供していきます。

  • 1  

    NPS®:ベイン&カンパニーが開発した顧客ロイヤルティを測定する指標で、「○○を親しい友人や同僚にお勧めする可能性はどのくらいありますか?」という質問に対し、10点(非常に可能性が高い)から0点(非常に可能性が低い)までの11段階で評価してもらい、10点と9点をつけた回答者を「推奨者」、8点と7点を「中立者」、6点以下を「批判者」と呼び、推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値をNPS®(Net Promoter Score:正味推奨者比率)と呼びます。

  • 2  

    アンケートでは、もっとも多くの金融資産を銀行に預けている人ともっとも多くの金融資産を証券会社に預けている人を分けて回答を収集していますが、大きな傾向に差が見られないことから、「全回答者」として単純に両者を足して集計した結果を記しています。

  • 3  

    顧客の受取価値:フィリップ・コトラーが定義した言葉。顧客の受取価値は、総顧客価値(製品価値、サービス価値、従業員価値、イメージ価値)から総顧客コスト(金銭的コスト、時間的コスト、労力的コスト、心理的コスト)を引いた価値を指します。

  • 4  

    期待不確認理論:米国の経済学者リチャード・オリバー(Richard L.Oliver)が提唱した「Expectation(事前期待)」と「Performance(結果の評価/効用)」を測定して比較する理論を指します。

ご参考

図表1 調査概要

図表1 調査概要

図表2 ノイズとなる考え方を持つ人の割合(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別、年齢別)

図表2 ノイズとなる考え方を持つ人の割合(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別、年齢別)

出所)NRI「金融機関の商品・サービスに関するアンケート調査」(2019年)

図表3 ノイズとなる考え方の有無による推奨意向(NPS®)への影響(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別)

図表3 ノイズとなる考え方の有無による推奨意向(NPS®)への影響(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別、年齢別)

出所)NRI「金融機関の商品・サービスに関するアンケート調査」(2019年)

図表4 推奨意向(NPS®)とビジネス指標の相関関係(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別)

図表4 推奨意向(NPS®)とビジネス指標の相関関係(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別、年齢別)

出所)NRI「金融機関の商品・サービスに関するアンケート調査」(2019年)

図表5 CX指標の定義

図表5 CX指標の定義

図表6 CX指標とビジネス指標の相関関係(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別)

図表6 CX指標とビジネス指標の相関関係(もっとも多くの金融資産を預けている金融機関別、年齢別)

出所)NRI「金融機関の商品・サービスに関するアンケート調査」(2019年)

図表7 NRI CXMMで管理する指標群

図表7 NRI CXMMで管理する指標群

 

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お問い合わせ

ニュースリリースに関するお問い合わせ

株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 坂、瀬戸

TEL:03-5877-7100
E-mail: kouhou@nri.co.jp

本件に関するお問い合わせ

株式会社野村総合研究所 金融DXビジネスデザイン部 田中

E-mail: cx-labs@nri.co.jp

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