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野村総合研究所グループ、障がい者雇用に関する5回目の実態調査を実施

〜自社への定着を前提とした採用企業が大半であるが、育成支援制度は未整備〜

2019/12/09

株式会社野村総合研究所
NRIみらい株式会社

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:此本臣吾、以下「NRI」)と、NRIみらい株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:足立興治、以下「NRIみらい」)は、2019年8月から9月にかけて、上場企業と特例子会社1を対象に「障害者雇用に関する実態調査」と「障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査」をそれぞれ実施しました。これらの調査は、2015年度から毎年実施しており、今回が5回目となります。

2018年4月に改正障害者雇用促進法が施行されて民間企業の法定雇用率2が2.2%に上昇し、障害者雇用率の算定基礎に精神障がい者が追加されました。今後も法定雇用率の上昇が見込まれることから、企業では自社で採用した障がい者の活躍や成長に対して、より戦略的な観点で取り組むと同時に、障がい者の活躍・成長に資する人材マネジメントを推進していく重要性がさらに高まると考えられます。
今回は、(1)採用時における障がい者社員の働き方の想定、(2)障がい者の育成に関する支援状況、(3)海外における障がい者の育成に関する状況、の3つのテーマを中心に調査を実施しました。
主な調査・分析結果は、以下のとおりです。図表および詳細は、【ご参考】を参照してください。

上場企業・特例子会社の90%以上が、継続的な雇用を想定して、障がい者を採用している

障がい者を雇用する上場企業や特例子会社の90%以上が、採用時に「会社を離職することなく安定的に働いてもらう(上場企業91.3%、特例子会社97.6%)」ことを想定しています(図1)。

育成支援制度の整備は、一部の企業でのみ進んでいる

障がい者の活躍・成長に関する状況に目を向けると、障がい者が業務面で成長していくための支援制度を整備している企業は、上場企業では20%以下に留まっており、特例子会社では50%程度となっています(図2)。

欧米では、支援組織により障がい者の就労前・就労後の育成制度が整備されており、仕事の変化にも柔軟に対応している

障がい者の育成に関する海外事例調査によれば、欧米では、支援組織や民間企業による障がい者の就労前・就労後の育成の仕組みが充実しています(図3)。また、継続的な育成により、AI等の技術革新による仕事の変化にも柔軟に対応することができます。

労働力人口の減少、人生100年時代の到来、AIをはじめとする技術革新等、労働市場を取り巻く環境が変化する中で、国内ではリカレント教育等の再教育が注目されていますが、障がい者雇用における教育も例外ではありません。むしろ、障がい者の高齢化に伴う運動機能・精神機能の低下等は、一般に障がいの無い者よりも早く始まり、かつ進行が早い場合がある、という問題があることを踏まえると、育成制度の整備は喫緊の課題と言えます。採用した障がい者が活躍・成長し続け、持続可能な障がい者雇用を実現していくために、日本においても、企業は障がい者の育成制度を整備していくことが求められます。

NRIとNRIみらいでは、これからも障がい者雇用の実態や課題とあるべき姿に関して、継続的な調査を実施し、結果の公表や提言を行っていきます。

  • 1  

    障がい者の雇用に特別な配慮をし、法律が定める一定の要件を満たした上で、障がい者雇用率の算定の際に、親会社の一事業所と見なされるような「特例」の認可を受けた子会社を指します。特例子会社は別法人のため、障がい者のニーズやスキルに応じた環境整備や制度設計が可能です。特例子会社は増加を続けており、2018年6月1日時点で486社となっています。2011年6月1日と比較すると、特例子会社は203社増加しました(厚生労働省「特例子会社一覧」、「「特例子会社」制度の概要」)。

  • 2  

    「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づいて、民間企業、国、地方公共団体は常用雇用者数に対して一定以上の割合で、障がい者を雇用することが義務付けられており、それぞれの事業主が、義務として障がい者を雇用する比率を法定雇用率といいます。2018年11月現在、一般の民間企業の法定雇用率が2.2%、都道府県等の教育委員会が2.4%、国および地方自治体、特殊法人等が2.5%となっています。法定雇用率を達成している企業の比率は、2013年以降上昇し続けており、2018年6月には一般の民間企業45.9%が法定雇用率を達成しています(内閣府「令和元年版 障害者白書」)。

【ご参考】

<調査の概要>

  A.上場企業向け調査 B.特例子会社向け調査
調査名 障害者雇用に関する実態調査 障害者雇用及び特例子会社の経営に関する実態調査
調査期間 2019年8月19日~9月20日 2019年8月2日~9月7日
調査方法 配布・回収とも郵送 配布・回収とも郵送
調査対象 上場企業 3,481社 特例子会社 464社
有効回答数(回答率) 159社(4.6%) 246社(43.1%)

<主な調査・分析結果>

上場企業・特例子会社の90%以上が、「会社を離職することなく安定的に働いてもらう」ことを想定して、障がい者を採用している

「障がい者社員の働き方に関する採用時の想定」について調査した結果、「上場企業向け調査」に回答した159社のうち、特例子会社を設置せずに自社で障がい者を雇用する上場企業103社(無回答2社を除く)では、「会社を離職することなく安定的に働いてもらう」との回答が91.3%でした。
「特例子会社向け調査」では、回答した246社のうち、97.6%が「会社を離職することなく安定的に働いてもらう」ことを採用時に想定しています。次いで、「将来的には貴社からグループ会社(親会社を含む)に移って活躍してもらう」が13.4%でした。
上場企業、特例子会社ともに、会社を離職することなく継続的・安定的に働いてもらうことを想定して、障がい者の採用を実施していることが明らかになりました(図1)。

図1:障がい者社員の働き方に関する採用時の想定(複数回答)

図1 障がい者社員の働き方に関する採用時の想定(複数回答)

出所)「障害者雇用に関する実態調査(「上場企業向け調査」)」、「障害者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」(NRI、NRIみらい実施、2019年)

障がい者の業務面での成長を支えるための支援制度は、上場企業の18%、特例子会社の54%で整備されているのが現状である

「障がい者の育成に関する支援状況」について調査した結果、特例子会社を設置せずに障がい者を雇用する上場企業の回答では、例えば、「業務の習熟度・専門性を高めてもらうため支援制度を整備している」は18.4%でした。同様に、特例子会社の回答では、「業務の習熟度・専門性を高めてもらうため支援制度を整備している」は54.1%でした(図2)。他の育成方針についても、同様に一部の企業での制度の整備に留まっているという結果でした。
その中で、「リーダー職や管理職になってもらう」ための育成について支援制度を整備している企業は、「業務の習熟度・専門性を高めてもらう」や「担える業務の幅を広げてもらう」に比べてやや少ないことが明らかになりました。

図2:障がい者社員の業務面での育成に関する支援制度の有無
(育成方針ごとに「あり」の回答比率)

図2 障がい者社員の業務面での育成に関する支援制度の有無

出所)「障害者雇用に関する実態調査(「上場企業向け調査」)」、「障害者雇用および特例子会社の経営に関する実態調査(「特例子会社向け調査」)」(NRI、NRIみらい実施、2019年)

欧米では、支援組織により障がい者の就労前・就労後の育成制度が充実している。これを活かして、仕事の変化にも対応している

欧米では、「障がい者も企業の『戦力』として活躍すべき」という発想のもと、障がい者の就労前あるいは就労後の育成制度が充実しています。例えば、アメリカ・ニューヨーク州の障がい者就労支援組織では、大手企業と連携して、実際の職場を再現した職業訓練施設を設立し、障がい者の就労前教育プログラムを推進しています(図3)。また、ドイツの大手製造企業などでは、障がい者の採用後の継続教育に力を入れており、資格取得などの支援を行っています。
就労前・就労後の育成の仕組みにより、障がい者が担う仕事の変化に柔軟に対応することもできます。前述のアメリカの支援組織は、将来的にITに関連する業種からの採用ニーズが増加することを見据えて、大手コンピュータ・通信機器企業と連携した職業訓練プログラムの開発を検討しています。

図3:アメリカの支援組織が設置している障がい者向け職業訓練施設の一例

図3  アメリカの支援組織が設置している障がい者向け職業訓練施設の一例

出所)アメリカの支援組織へのヒアリング結果よりNRI、NRIみらい作成

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TEL:03-5877-7100
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