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野村総合研究所、「ITロードマップ2020年版」をとりまとめ

~将来的に大きな進展が見込まれる「ブレインテック」~

2020/03/06

株式会社野村総合研究所

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株式会社野村総合研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役会長兼社長:此本 臣吾、以下「NRI」)は、これからのビジネスや社会に広く普及し、さまざまな影響を及ぼすと考えられる情報通信関連の重要技術が、2020年以降どのように進展し実用化されるかを予測した「IT(情報技術)ロードマップ12020年度版」を、このほどとりまとめました。 

今回、注目すべき技術として取り上げたテーマは、「Web3.0に向かうブロックチェーン」「5G(第5世代移動通信システム)」「フェデレーションラーニング」「シミュレーション2.0」「MLOps」「ブレインテック」「フリクションレス・リテール」「ピープル・アナリティクス」「情報銀行と信用スコア」の9つです。 さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展によって今後さらに必要になるセキュリティ対策の変化に着目し、「デジタルビジネスのリスク管理」「デジタルアイデンティティがもたらすデジタル変革」「Society5.0におけるサプライチェーンセキュリティ」「ゼロトラスト」などを「デジタル化時代のセキュリティ」としてまとめました。
これらのテーマのうち、近年の技術進化に伴い、将来的に大きな進展が見込まれているのが、人間の脳の活動を理解し、その知見をビジネスに活用する「ブレインテック(Brain Tech)」です。この分野では数年先までに、以下のような発展が見込まれます。

ブレインテックの発展

米国の電気自動車メーカー、テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、2017年にブレインテック企業「Neuralink」を立ち上げ、大きな話題となりました。2019年7月には、脳とコンピュータをダイレクトに接続するブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI:Brain Computer Interface)の開発に取り組むことを明らかにし、脳に損傷があるために自分の意思を言葉で伝えられない麻痺患者などを対象に、考えるだけで1分間に40文字程度を伝達可能なインターフェースの実現を目指す、と宣言しました。 

しかし、この分野の研究を進めているのはNeuralinkのようなベンチャー企業や大学などの研究機関だけではありません。ここ数年、さまざまな領域で人間の脳に関する技術のビジネス応用を目指す企業が登場してきており、「ブレインテック」と呼ばれる技術領域が形成されつつあります。特に、近年は最新の機器・端末、ソフトウェアによって医療以外の分野でも脳に関する情報を活用する取り組みが始まっています。

ブレインテックを構成する技術領域は、①脳の活動データの取得とその分析、②自分の脳の状態を確認・意識させて本人に行動変容を促すアプリケーション(ニューロフィードバック)、③脳とコンピュータを接続するインターフェース(BCI)、の3つに大別できます。中でも、ビジネスにおいて現実的な応用が進んでいるのは、脳の活動の分析データをマーケティングや製品開発、UI2・UX3の改善に活用する「脳の活動データの取得とその分析」の領域であり、「ニューロマーケティング」と呼ばれています。また、BCIに関する研究も以前から行われていますが、コンピュータチップの小型化やAIの進化など、近年の技術進化により、ここにきて実応用に向けた活動が盛んになっています。

ブレインテックのテーマについてのロードマップは、以下のとおりです。

【短期(1~3年):機器・端末の進化と共に脳活動の可視化が始まる】

脳の活動量計測のための機器・端末の小型化に伴い、脳の活動をデジタルデータとして読み取り、その活用を目指す企業が増加しています。国内でのニューロマーケティングの分野では、2018年ごろから実践事例が増えつつあり、マーケティングの高度化におけるデジタル施策としてさらなる拡大が見込まれます。ただし、マーケティング用途の場合、脳波を取得・分析する対象は、同意を得て実験に参加した被験者に限られます。

一方、一般消費者向けには、簡易型の脳波計測器が登場し、当初は、集中力や睡眠品質の向上を目的としたアプリケーションとセットで提供されると予想されます。ウェルネス(健康増進)サービスや、個人の能力拡張を支援するサービスの拡大が始まる時期でもあります。

図:「ブレインテック」に関するロードマップ

図:「ブレインテック」に関するロードマップ

出所:野村総合研究所

【中期(3~5年):脳波分析の拡大とニューロフィードバックのサービス化】

脳波分析の対象分野が、マーケティングからUI・UXの最適化へと拡大していきます。脳波分析への取り組みが増えていくにしたがって、限られた被験者から得られた脳波の分析結果が、どれだけ汎用性を持っているのかを予測する「ニューロフォーキャスティング」が必要になります。ニューロフォーキャスティングは、CMの効果予測や世論調査などで実験事例がありますが、現状では研究段階にとどまっています。今後、ニューロマーケティングの事例が蓄積されれば、少数の被験者を対象とした脳波解析の実験結果をもとにした予測と、実際のマーケティング成果との乖離がモデル化され、予測精度が向上することが期待できます。

一方、ニューロフィードバックを、ユーザーの行動変容に活用するサービスが本格化します。個人向けのサービスだけでなく、プロスポーツチームを対象にパフォーマンスの向上を目指すサービスや、企業の従業員向けの健康増進サービス、さらには組織の生産性向上を目的とするサービスなどが増加すると予測されます。

【長期(5~10年):BCI実現に向けた進化】

長期的には、脳とコンピュータをつなぐBCIの実現に向かって技術が発展していきます。ただし、この分野は医学的・脳神経科学的な研究や倫理面の合意が必須であり、人間への影響も大きいことから、実現には相当時間がかかると予想されます。 脳波の分析に基づくニューロフィードバックの活用事例が増加することで、データの蓄積が進み、脳の活動データが人間の理解を深めるための重要なデータソースとなり、人間行動のモデリングに活用されることが期待されます。

上記のような動向の詳細を含め、今回NRIがとりまとめた「ITロードマップ2020年度版」は、単行本『ITロードマップ2020年版~情報通信技術は5年後こう変わる!~』として、東洋経済新報社から2020年3月6日に発売されます。

  • 1  

    ロードマップ:特定のIT領域について、現在から5年程度先までの技術の進化や動向をNRIが予測したもの

  • 2  

    UI:ユーザーインターフェースの略

  • 3  

    UX:ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験)の略

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株式会社野村総合研究所 コーポレートコミュニケーション部 広瀬、松本
TEL:03-5877-7100
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株式会社野村総合研究所 IT基盤技術戦略室 城田
TEL:045-605-4878
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